情報収集をしてみる
次の朝、セニアは案外ケロッとして普通だった
「アレン、おはよう」
「あ、おはよう」
「朝ご飯食べにいこうか」
食堂で朝ご飯を頂く。
パン、ベーコンみたいなものを焼いた奴、サラダ、スープ。
至極、全うな洋食ご飯だ。
異世界なのに、元居た世界でよりまともな飯食えるのは凄いわ。
「まずは魔法具屋に行こうか、買えるものはあまりないだろうからどうせすぐ終わる」
「それなのに行くの?」
「顔を売っておきたいのと、掘り出し物があるかもしれないからね」
「分かった」
宿を出る際、しばらく泊まる旨を店員に告げた。
「連泊をお願いできますか?」
「部屋は今と同じでよいか」
「はい、お願いします」
「何日だ?5日からは前金で払えば割引が効くぞ」
「じゃあ、とりあえず5日で。前金でいくらですか?」
「二人で800フィルでいい」
400も浮くのか、意外とでかい。
「じゃあ、それで」
「はいよ、じゃあ、800フィルな、もちろん衣服の洗濯もOKだ」
支払いをし宿を出た。
「かなり安いな」
「10日とかの方が更に安いんじゃないかしら?」
「多分ね、でもイレインにいつまで居るか分からないしね」
そんなことを話ながら武器屋の横にある魔法具屋二人で歩いていった。
―――――魔法具屋―――――
魔法具屋は魔力の入ったアイテムを売っている。
アクセサリー類から魔法具、魔石まで。
ただし、品揃えは時によって異なり、欲しいものをゲットするには
それなりに上客にならないといけない。
多少ぼったくられても気に入ってもらえると予約したりが出来る。
特に魔石クラスのゲットは難しい。金額も張るがそもそもなかなか出ない。
ゲームでは乱数を調整するプレイをすれば魔石も狙えるが、今はそうもいかない。
「いらっしゃい・・・」
痩身の愛想の悪そうな男だ。
「最近こちらに来たんだが、品揃えを見せて欲しい」
「今だとこんなもんだ」
リストを渡される
・・・読めねえ!ヤパナ語か?
(フラウ、読めるか)
(任せて、アレンに見えるようにするわ、少し魔力借りるわよ?)
(あぁ)
リストの文字がぼんやり日本語に変換されていく。
リストを見ると、高っ!
各属性に対応した炎のバングルなどのアクセサリーで10000フィルだと?
流石に相場の3倍強はありえん。
しかし、気になるものもある。
魔石だ。まさか魔石に一発で当たるとは。
「魔石はなんの魔石だ?」
「さあ、詳しくは分からんな」
ゲームでもそう、買ってみるまではわからない。
店によって一律の値段ではあるが、当たりハズレはある。
ハズレでも効果は相当高いが。
「見ることは可能か?」
「いいが、触るのもケースから出すのも駄目だ」
透明なケースを渡される。
光輝く石が入っている、
やはり魔石だ、っと眺めてみると空間に文字が浮かんだ
綺麗な石☆2
うあ、偽物かよ、あぶねぇ。
この店、色々ありえんな、ギルドが取り締まる力がないということか。
「ありがとう。セニア、もう行こうか」
「う、うん」
店員には目もくれずに店から出た。
――――――――――
まさかと思ってやってみたら、
アイテムとかでも人と同じようにステータスみたいなのが見えるらしい。
装備した武器とかで武器名とレア度が見えるからやれるかと思ったら出来た。
手に取るなどの条件ありそうだが、なかなかに便利かもしれん。
「どうしたの、アレン?なんか機嫌悪い?」
「いや、大丈夫。ただ、あの店は駄目だ」
「そうなの?」
「バングル系、対応する属性の耐性や属性攻撃力があがるアクセサリーだが、かなり高い。」
「悪徳なんだね」
「まぁ、バングルはまだいいんだが、問題は魔石だよ」
「最後に見ていた石?」
「うん、魔石は幻獣の力が込めらていて、解放すれば幻獣を一度だけ、召還できる。種類によって効果はまちまちだが、どれも一発逆転出来るんだ」
「凄いね!でも高いんだ?」
「高いのは普通だよ、50万フィルはする」
「ご、ご、50万!?買うの?」
「いや、そもそもあれは偽物だった」
そもそも偽物の魔石ってなんだ?
魔石を偽造するなんて出来るのか?
魔石は太古の昔に幻魔たちの魔力を封じ込めたものだ。
偽造か、ゲーム中には偽物なんか無かったよな。
どうもきな臭い。
ひとまずこの問題はおいておこう。
次はギルドにいき、盗賊の情報集めだ。
―――ギルド―――
広場の一角にギルドがある。
マーレはハリボテと言ったが、
外観は立派な建物である。
「こんにちわ」
「何か用かね?」
「あ、最近こちらに来て旅をしているんでギルドがどういう感じか見ようと思って」
「今どきこんな田舎のギルドに来るって変わっとるね」
初老のじいさんが新聞から目を離さないで応答した。
「クエストボードはそっちだ、まぁ、ほとんど機能していない古新聞が多いがね」
うぁ、想像より駄目じゃん、マジで廃れてる。
これじゃあ、仲間は期待できないし、
魔法具屋を取り締まるのなんか無理だよな。
「なんか、廃れてますね」
「ふん、勇者が魔王を倒してからしばらくしたらこんなもんさね、
ただ、たまにあんたらみたいな旅人が来て情報屋がわりに使うでな、辞められん。少しはクエストも動くしな。」
情報屋がわりか、好都合かも知れないな。
「おじいさん、ここら辺で暴れてる盗賊のことは、わかりますか?」
「・・・」
「これで、教えてください」
500フィルを机に置く。
「ふん、あんたらでどうこう出来るとは思えんが、いいだろう、教えてやる」
・・・・
じいさんの話は長い。とても長い。
・・・・
まだ話をしている。
じいさんの息子がどうしただの、盗賊に関係ないやん
・・・・
流石に飽きた。
腹減ったなぁ、昼御飯にしたい。
・・・・
じいさん、まだ話をしている。
あ、セニアが立ったまま寝てる。
・・・・
「・・・というわけだ、わかったか?」
じいさんの話が死ぬほど長いのが分かった。
入ってから昼飯時間まで4時間くらいは話続けていた。
よほど寂しかったんだろうな
うん、悪かったよ、もう二度と来ねぇ。
「じいさん、ありがとう。もう行くわ」
二人ともクタクタになり、ギルドを出た。
「セニア、聞いてた?」
「もう途中から無理だった」
「だよな、器用に居眠りして居たもんな」
「ごめんね」
「いや、いいよ、ありゃ、じいさん長すぎだ。ただ、必要な内容もあったよ」
「アレン、全部聞いてたの、凄い!」
「いや、話聞きにきたんだろ?」
「確かに」
「まったく・・・。じいさんの話を軽くまとめると、
盗賊達は、活動が5年ほど前から始まったらしい。
アリアナとイレインなどを襲って金品や、食料を奪っていくみたいだ。
強奪するときは人が殺されることもあるようだ。
初めは女の人や子供がさらわれたりしたらしい。
しかし今は主になんかの密輸を行っているようだ。
なにを扱ってるかまではわからないようだ。
盗賊団の人数は30人ほどでボスはかなり腕が立つらしい。
帝都ウィリアムの兵士たちが返り討ちにされたこともあるそうだ。
アジトはイレインから東の森当たりらしいが、はっきりとはわからないらしい。」
まとめれば5分とかからない話を4時間話すって、はぁ、疲れるな。
「アレン、凄いね」
要約は得意だ。しかも一度言われたら覚える。
あたまにそのまま記憶し、必要な所をまとめて再編集する。
速読術をマスターしたときに身に付いた特技だ。
しかしだ、結構な情報が出ているように思う。
それなのに捕縛されていないのは何故だ?
大体のアジトの方向がわかるならローラー掛ければなんとかなりそうだが、
帝都ウィリアムの兵はしていない。
現状の被害が少なく、ほったらかしになっているのか。
他の案件で人が割けないのか。
ボスが強過ぎて手が出せないのか。
理由はそこらへんか。
あとは、考えたくないが、
帝都ウィリアムと盗賊団が実は繋がっており、
両者の間に何らかの共通利益があるのか。
最後だと嫌だな。
先に帝都ウィリアムにも行って情報集めたほうが良いかもしれない。
ぐぅぅぅ・・・
「アレン、お腹すいたぁ」
「俺も」
「とりあえず広場で買って食べようよ」
まずは腹ごしらえだな、腹が減っては戦は出来ぬ。
よし、飯だ、飯だ。




