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沼のダンジョン

「へぇ、ここが沼のダンジョンか。」


思い立ったが吉日。帰ってレイヤに買いたい物があるから明日は朝から出かけると伝えてある。

その際にサイレスがお金を渡そうとして来たが、銀貨1枚というので調子狂ったが、そもそも銀貨1枚で1日生活出来る様な額だ。


100倍の金貨しか扱って来なかった俺からすると金銭感覚の違いを感じて有り難みがなかったが、しっかり受け取った。



そして昨夜の内にここ沼のダンジョンまでクロムeyeで様子見を済ませ、早朝に転移した。


家族に怪しまれる事はないだろうが、帰りになんか買って帰らなければな。









そしてここ、【沼のダンジョン】は全4フロアの大人の足で丸2日はかかりそうな入り組んだダンジョンで、地形が少し湿っており歩く度に体力が削られそうだ。


また、ここの魔物はCランク〜Aランクの魔物までいる。

目安として冒険者Cクラスの者は、Cランクの魔物なら闘っても勝てる。


ならAクラスの冒険者一人でこのダンジョンを突破出来るかと言うと、それは違う。


ダンジョンには罠や魔物の数が違う。

体力を削るトラップの後で闘うのはしんどいし、A同士の闘いでも数が違えばそれは負ける。




まぁ見立て通り問題はなさそうだが、今日はこのダンジョンを完全攻略に来ている。




ダンジョンには【ダンジョンコア】と呼ばれる魔石があり、それがダンジョンを支えている。

心臓の様であり、魔物を増殖させたり魔物をダンジョンに誘い込んだり強くしたりと、様々な重要部分である。


しかし、ダンジョンコアが破壊されるとダンジョンは機能しなくなる。


その為に魔物を増やしてダンジョンコアを守らせる。


魔物はダンジョンコアとなる魔石の近くにいると食事を食べる必要がなくなり、ずっと活動出来る為ダンジョンには魔物が棲みつく。



いわばダンジョンコアと魔物は持ちつ持たれつの関係なのである。


そしてダンジョンには特有の【ボス】がいる。


ダンジョンコアを守らせる為の特別な力を得た魔物。これは普通の魔物と違って段違いに強い為危険であり、ダンジョンの基本ルールとして、ボスは倒さず雑魚だけ倒していく。

そうする事でダンジョンから外に出てくる魔物の確率が減るということである。




だか、今日は完全攻略。である。












「もう一度確認する。

まずは4人全員で入り魔物は殺さずに適度に異空間に入れる。

転移を使いながら最下層の4フロア目までいく。

そこでボスを瀕死状態にしてから異空間に入れる。

そしてダンジョンコアに魔石を足して魔物を強化させる。

これを3回は繰り返す。」



俺は周りの3人を見回す。

俺と歳が変わらない女性が3人。


虎魔人で結晶魔法のココア。

狼魔人で銀魔法のレム。

鮫魔人で氷魔法のカイン。


そう、特殊訓練を受けてきた3名である。



3人とも内容を噛み締めて小さく頷く。

さて、ダンジョン完全攻略の始まりだ!






























「ここら辺はまだまだCランクって感じなんだな…この魔物は数が少ないから変異種かな。」


成人男性サイズのコウモリは見てて気持ち悪かったが、あれは数が少なく、他のコウモリはせいぜい50㎝程度。

まぁやはり魔物だから気持ち悪いが…



それより気になったのは、特殊訓練を受けてきた彼女らがどんな反応をするかだ。


ひたすら強くする修行をしてもらったが、魔物相手の実戦は初めてである。




ココアは面倒くさそうに結晶を作って壁を作っており、魔物がある程度近付かない様にしている。


レムは自分に銀のコーティングをして何も気にせず歩いている。コウモリにたかられても鉄壁の防御で呑気なものだ。


カインはコウモリの羽根を凍らせて地面に落としているが、ずっと前を向いて歩いている。こいつら本当に3歳か?





まぁ実戦的で物怖じしないのは良かったが、何ともシュールだ。



かく言う俺もクロムworldで重力を操作し、何者も寄せ付けない。

ついでに何匹か異空間に入れておく。




ある程度歩いたら転移で下の階に行く。

相変わらず足元がべちゃべちゃで気持ち悪いな。



「お、今度はケルベロスか。あっちに見えるのはオーガだな!」


俺は何匹か異空間に入れながら隊列を確認する為振り向く。

さっきから余裕だなこの3人。









そんなこんなの繰り返しで最下層の4フロア目に来た。




3フロア目はレッドコブラとアースドラゴンの収獲があった。


4フロア目は、ボスしか居ない。

そしてダンジョンコアである。





「ほう、アイスドラゴンか。」


全長10m程のドラゴンにしては少し小さいサイズ。

だが実力は折り紙の全身凍ってるドラゴンで、おそらくアースドラゴンをダンジョンコアが吞み込み、氷化したのであろう。



ボスにとって不足は無し。

これなら俺の必殺技を見せてもいいだろう…



そう思いこの日の為に編み出した必殺技を使うべく、右手に闇魔法を集中させていた時だ。


「私は氷を操る。相性が悪かったな…」


後ろから囁く声が聞こえたと同時に、そのドラゴンは凄まじい雄叫びと共に血を吐いて地面に倒れた。




「…よくやった。」



俺は見せ場を取られた気分だったが、そのままアイスドラゴンを異空間へと送り込んで代わりに魔石を鷲掴みにして5個ぐらい取り出す。



「よく見ててくれ?これがダンジョン操作だ。」




俺はダンジョンコアとなる魔石の置かれた場所に魔石を放り込み、やみまで魔石同士を融合させる。


それと同士に身体強化の魔術を魔石にかける。

その後基本魔術の治療魔術の王級をかけていく。







こうする事で魔石の増えたダンジョンコアは強化され、身体強化魔術によりより強力な存在にし、治療魔術でダンジョンを回復させる。


要は強くなった状態にしているのである。



「…これが一連の流れ、どんなダンジョンにしたいかは元々魔物がいるから後は魔石に魔法陣を加えて作ってもいい。そうすると思い通りにする事が出来る。」





そう言って俺は4人を転移させ最初のフロアに戻る。


するとそこには、火炎で燃えながら空を飛ぶ50㎝程のコウモリの群れが…


「…うざいなぁ。」


先ほど手柄を上げたカインだったが、熱さは苦手で苛立っているが、彼女の氷は魔力量が違う分溶けたりはしない。

しかし、凍らせて地面に落としたコウモリも、熱気が残っているのか忌々しそうに蹴飛ばしていた。



火と毒と風と水と鉄


この5つを魔法陣で練り込んだ魔石を放ったから、多分今回は面倒なのばっかだと思うけど…


俺のせいか。




その後も毒ケルベロスやら鉄コブラやら火炎オーガやらウィングドラゴンやらを適当に異空間に放り込みつつボスフロアへ…





「なんか気持ち悪ぃなぁ。」


おそらく鉄であろう硬そうな皮膚、表面にはヌメヌメと気持ち悪そうな液体が毒々しく沸騰している。


そんなドラゴンいてたまるか!!








かなり強そうだが、気持ち悪い。


さて、こんな魔物はイーリル初だろうから俺が命名してやらねば…


「きっしょ…」



そう言って地面から銀色の物体がせり上がり、真ん中が折れてドラゴンが銀と銀に挟まれて気絶する。




あ、俺の出番がまた…


俺は異空間へと送り込み、閉じていた眼を開く。



「…きしょドラゴン。いや気色ドラゴンだ。」









命名が終わり、少し満足気にダンジョンコアへと魔石を放り込む。



「さ、後はやってごらん?」


俺が闇魔法でダンジョンコアを融合させてから、後ろの3人に声をかける。


まだやるの?と空気が語ってくるが、こればっかりは仕方ない。限界ギリギリまでやらねば修行にならないのだから…































その後も転移して降り出しからボス戦、ダンジョンコア強化を繰り返す。

8回目のボス戦にて…











「ココア、レム、カイン。ご苦労様。あとは俺に任せておけ!」



疲れ果てた顔の3人に振り返り、異空間へと送りこむ。心なしかホッとした顔をしていた様だが、まぁよくやってくれた。






俺は改めてボスに向き直す。


全長20m程の首が8つあるドラゴンで、緑色に輝く鱗は基本魔術を跳ね返す鏡のようでとても綺麗だ。

こいつも捕獲して異空間に入れておきたい。





ここまででボス戦は何度やっても禍々しく、強力なボスばかりであった。

まぁベースがドラゴンなのは変わらないのだが、毎回違う力を付けて現れるボスに段々苦戦し始めて、ついに俺の出番がやってきた。


いや、というか今まで俺は活躍していない。



だからこそ!ここで必殺技を使ってかっこよく生け捕りにする!!




俺は右手に闇魔法を溜めて、ドラゴンと向き合い、突撃していく。


身体強化で3歳児とは思えない速度で肉薄する。俺の方を睨み他方向の口から様々なブレスがチラついて見える。


躱せる程のスピードは俺にはない。この必殺技で一撃で殺さなくては…!!!





「…あ!」





























殺しちゃ駄目じゃん。


俺はクロムworldを使い重力でドラゴンを地面に沈めて気を失わせた。











「…要するに、必殺技はどっちみち使えなかったって事か。」




俺は諦めてダンジョンコアを引っこ抜き、ダンジョンとしての機能を停止させた。




長い闘いは終わった。


転移でロールズに戻った頃には陽が沈む頃で、意外と時間が経ってなかったんだと気付き転移がいかに便利かを再認識したのだった。

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