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スペードとしての俺

「ウェエエエエエエン!!!」


「ママーーーーーーー!!!」


「…。」


「お腹すいたーーーー!!!」


「レイヤーーーーーー!!!」


今日も朝から毎日恒例のミルクタイム争奪戦が始まる。2歳になったサラはもうここ最近不戦敗であり、3歳になったマルタも不戦敗である。


俺のライバルとなりうるのは、1歳のララと最近入ってきた新米0歳のミラという女2人である。


「…降りなさい。」


レイヤは子供部屋に入りベビーベッドの上で暴れる俺に諭すように声をかける。


4歳になった俺にはミルクタイムへの参加をここ数年退場させている。なんと嘆かわしい事だ。


「レイヤ、愛してるよ。」


「どこで覚えたのそんな言葉?あーパパから聞いたのね。」


サイレスの真似をして乳をねだるが、これでも駄目か。


俺はムスッとしながらベビーベッドから降りる。


「クロム兄ちゃん、遊ぼー?」


元気に近寄って来るマルタは、おやつのビスケットを頬張りながらその汚い手で俺に触ろうとしてくる。


「お兄ちゃんは今忙しいだ。」


俺はそのままレイヤの下着を脇に挟んでベビーベッドによじ登る。


「その遊びやりたい!!」


「マルタにはまだ早い。」


「クロムも馬鹿やってないで、早く手を洗って下の食器を出してきてちょうだい。」


真っ先にミラにミルクタイムを与える彼女を眺めながら、俺は下着を使って擬似ミルクタイムを味わう。

匂いだけでもあの乳を見ていると幸せになれる。


たっぷりララにもミルクタイムをあげ終わった頃に、両手を広げてジェスチャーするが、レイヤは俺を素通りして服を整え始めてしまった。



やはり今日も放置プレイか。

仕方ない…



俺はスタスタと一階に降りて食器を闇魔法を使って並べる。


後から降りてきたレイヤが、その早技はなに?といつも聞いて来るが答えない。

奥の手は取っておくものだ!

























さて、今日は毒物の精製に取り掛かる為、いつもより気合いを入れている。


「これはなんですか?」


3歳になる鰐魔人のライムは俺によく懐いてる女の子である。彼女を500mlの容器をいくつも倉庫に置いてある場所に座ってもらって、説明をする。


「ここに元祖魔術を使って悪い栄養を沢山溜め込んでくれ。」


100近くある容器を見回して、全部?と聞いてきたので頷いて返す。



彼女は右手に魔力を集中させ、それを容器の1つずつに近付ける。


お願いした通りに悪い栄養素が満点そうな毒々しい紫色の液体が出てきて、グツグツと沸騰しているのを見て俺は蓋を閉める。


「本当に悪い栄養しか入れてないよ?」


心配そうにしながらも魔力を休めずポンポンと容器を満たしては次の容器に入れていく。


「栄養には、良い栄養以外の栄養も大いに役に立つ。これを全て完成させればここでの生活も楽になるんだ。」


坦々とした作業だが5分もしない内に全て終え、今は容器から解毒となる様に俺が基本魔術で容器の半分に治療魔術の上級をかける。


「なんで生活に繋がるんですか?」


俺は完成した半分の容器を異空間にしまいながら、残り半分の治療魔術を坦々とかけていく。


「ライムのこの魔法は人に取って需要がある。それを売って資金を得るからここの施設がより豊かになる。」



ここの館は色々改良して住みやすい施設にした。

狩りをしても獲物を調理しやすい環境も整え、座学も出来るし、世話係はヒマワリの魔物がいる。


あいつは見た目はグロテスクだが、俺の指示を聞くので重宝している。


「それに、みんな訓練を始めてるけどそれにも、資金はあるに越した事はない。」



1番下でも2歳児強といったところで、全員に魔術を使わせている。魔力総量は着実に増えてきている。

育児から教育を始めた事は無かったが、これはこれで新鮮である。



「ほら、完成だ!さっきの毒物を飲んでも、これを後から飲めば元通りになる。」


「…なんでそんな事する必要があるの?」


うむ、いい疑問だ。


「このイーリルは、力がなければ生きていけない。いずれこの施設を出た時に生きていく術を身に付けて欲しいのだ。」


俺の説明は難しくないように伝えたつもりだが、うぅ。と頭を捻って考えているようだ。

まぁこの施設とその周辺の結界の中しか知らないみんなにイーリルの話しは空想上でしかないだろうから仕方ないが…








そうそう、魔族のみんなには元祖魔術を使ってもらっているが、彼女の様に戦闘で使う元祖魔術だけではない。




赤髪が綺麗な鬼魔人のアサナは糸魔法を使い、俺に懐いてる少女の1人でライムと仲がいい。


鷹魔人のサンドは磁力魔法を使い、男の子らしく元気にはしゃぎ回っている。


狐魔人のムースは未来有望な少年で、召喚魔法を使う。まぁ闇魔法と被るのは否めないが、単体でも相当な力を発揮するだろう。



他にこの施設にいる魔族はおちゃらけたミンクが、砂魔法。俺の前世と同じデビルのラプラスは、木魔法である。



この施設には以前倉庫を作った時に頑張っていたお姉さん的存在の天使、ヤームは基本魔術を着々と伸ばしている。


他にも手先が繊細なドワーフの少年スイムは、土魔術を使いながらいつも何かを作っている。


髪の綺麗なエルフの少女セラフィーは、風魔術を使って施設に良い風をもたらしている。


龍人の少年ドランは龍人特有の火炎を吹く。これは魔族でいう元祖魔術みたいなもので、龍人は魔力要らずで特有の【ブレス】を使える。

それをしながら水魔術で消火も行って魔力もきちんと使っている。




この施設で元祖魔術が使えない4人の中ではドランだけ【ブレス】を使えるが、他のみんなも特徴がある。


ドワーフは繊細な手先と怪力、エルフは風から色んな情報を集め、天使は素早い動きが出来る。




みんなの世話係である闇ヒマワリに、これからの指示を出して今日はこのままロールズへと戻る。

さて、商売の時間だ!






































「これが毒物で、栄養素に直接悪影響を及ぼす。ワクチンとして治す方法はこれを売り付ければ高値で売れるだろう。」


俺はウォックとあの会議室で2人で今後について話し合う。受け取ったウォックは手下に大量の薬物を押し付けて嬉しそうにニヤリと笑う。

相変わらず気持ち悪い笑みだ。



「おう、確かに受け取った。この間持ってきた快楽の葉っぱは馬鹿売れしてるよ!製造方法教えてくれりゃ傭兵の手をこっちに回す事も出来るが、どうよ?」


俺が独自で栽培して作った魔界の大ヒット商品、魔薬を大量に渡した結果ガルまでもがこっちに来てたいそう俺を褒めちぎって帰っていった。

人界は知恵が進んでいると思ったが、やはり魔素の扱いが不得手な分遅れを取っているようだ。




「…冗談はよしてくれ。それより本題に入ろう。ダンジョンについてだ。」


俺は魔薬の追加報酬と毒物及びワクチンの報酬を受け取り、脇に置いておく。

金貨の数はざっと200枚ってところか、見込み通りで少しネコババはされてる様だが仕方ない。



「このイーリルでの冒険者、及びにギルド員のトップの戦闘力と魔物の戦闘力の相場を知りたい。ダンジョンは完成しているが、用意する魔物をどれぐらいにするかも兼ねて調査したい。」


それを聞いたウォックは、おいおい、と呟きながら笑っている。



「ダンジョンなんて人に作れんのかって思ってたけど、スペードは何でも有りだな。

まぁ、調査に関してはギルドへの潜入と他のダンジョンへ行く方法が良いと思うが、その前に魔物って手懐けられんのか?」


ダンジョンにおける重要な要素として、魔物を扱う以上会話の成り立たない魔物をどうやって?と疑問に思っているようだ。


まぁギルド潜入に関してはする必要がなく、俺はクロムeyeで実力はある程度把握している。


Dから始まり実力が着く事にC・B・A・Sとなっており、Bクラスになってからは基本魔術が中級程度使えるか、身体強化でどれだけ強いかってレベル。

Aクラスになると基本魔術が上級クラスだが、別に全魔術が上級という訳ではなく、1個でも上級と成り得るようだ。

Sクラスは王級の基本魔術を使える者や、上級と身体強化の合わせ技だったりと多岐に渡るが、1つ気付いた事がある。


龍族の【ブレス】

天族の【高速移動】

魔族の【元祖魔術】

を使っている者が皆無といえる。


人界のレベルが低いのは予想出来たが、流石にこれでは笑ってしまう。


しかし、魔界と違って魔力の扱いが不得手な分、人間は【剣技】たるものが得意のようで、サイレスの剣技を思い出した。


確かにあれだけの実力があれば何とかなってしまうやも知れんが、俺が作ってる魔物は少なくともAクラス以上じゃないと太刀打ち出来ないレベルだ。


そこらへんの昆虫や獣、植物を片っ端からクロムeyeを使って異空間に送り込み、闇魔法で魔物化させている。


ストックを作るのが最近の俺の魔力消費方法ではあるが、少し強くし過ぎたのかも知れない。


誰1人一階のフロアすら突破出来ない地獄のダンジョンとなってしまうだろう。

これでは客が入ってこない。



「まぁ魔物は何とでもなる。ただダンジョンの実力と剣技について知識を深めておきたいが、ダンジョンがこの辺で何処にあるのかわからん。」


俺の言葉を聞いて、ウォックは酒を傾ける。

美味そうに飲むが安酒とは情けない。もちろん俺は飲めないが。



「ダンジョンならここから北に200㎞ぐれぇ行けば【沼のダンジョン】がある。まぁここはAクラスの冒険者が5人ぐらいのパーティーを組めば突破出来る。人なら集められるぞ?」


Aクラスが5人で突破出来る貧弱なダンジョンは、流石に作りたくないが、フロアを下がるに連れて強くする作りにすれば最初はそれぐらいでいいか。


「いや、地図だけくれ。」



俺はこのイーリル全ての地図を見た事なかったが、ウォックはすんなりとそれを渡してくれた。


「これはやる。だいたいこの辺だ。危ねぇから行く時は声かけてくれよ?」


俺を心配そうに話しているのか、それとも魔物を手懐けるであろう所を見たいのか。

どちらにしろ一緒に来てもらう気はないが…




「いや、一人で行く。今度ダンジョンの手土産でも持って帰るよ。」


俺は話しを切り上げ、金貨の枚数を異空間内で数える。


まだ300枚にも満たないが、これだけあれば色々と出来そうだ。


そして、ダンジョンに行ってやりたい事もある。

近い内に1日予定を空けれる様にしておきたいが、レイヤとサイレスをどうするかだよな…












俺は翌日、作戦を決行する。

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