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さらば魔界よ、俺は旅立とう!

主人公バロンの物語、魔界編の始まりです。




この世は、立体三角形でそれぞれ

【人界】【龍界】【魔界】【天界】

の4つの世界がある。

その世界をまとめて【イーリル】と呼ぶ。


海で繋がってる訳ではなく、その境界はこの世の【果て】いわゆる壁で行き来は出来ない。


世界毎の大きさは平等で大陸の形も同じで中心が海。その周りを逆クロワッサンの様に囲んでおり、先端の北に当たる部分は細々とした島がある。


イーリル全てが平等であったが、そこに住む者が歴史を作り少しずつそれを変えていった…






ーーーーイーリルを作りし創造神・ゼウス作【三角形と真理】より抜粋ーーーー







物語は、魔界のある人物から始まる〜



















「起きてください、バロン様。」



メイド服を着込んだ猫耳の女性が、毎朝の仕事をし始める。気怠そうなその声からは彼女も寝起きなのか、いや、いつもの事か。



「む、魔力が暴走しては…!!うむ。おはようシャリーゼ?」



寝ぼけ眼をこすりながら夢から覚めた、いや覚めさせられた俺は我が家のメイドへと声をかける。



俺の挨拶をうけた彼女は、トロンとした眼で俺を見てからそそくさと退室した。


まさか俺に気があるのか?


なんて展開がない事は百も承知。シャリーゼの普段の眼だし、どちらかと言うと彼女なりに冷めた目を向けてきているのは知っている。

彼女の後ろ姿をぼんやり眺めつつ、尻尾が垂れ下がっている事からもわかると言えよう。




俺は起き上がって右手に魔力を集中し、闇魔法で寝間着から普段着へと一瞬で着替える。

すぐ横にある鏡へと顔を向け…


「フッ、決まったぜ。」


寝癖は闇魔法では治せないが、元々俺に髪の毛はない。いや、2000年ぐらい前まではちゃんとあったんだが、貫禄が故である。うむ。



普段着といっても、上から下まで真っ黒いローブと真っ黒いブーツ。

これは仕事着でもある。



俺はそのまま家を出て、職場である魔族至極学園へと足を運ぶ。







職場に着きいつもの席に向かい、隣りに腰掛ける火魔術の先生ルルーシュ先生に声をかける。


「ルルーシュさん先生、今日も見目麗しい。朝食がまだでしたら同行しよう。」



眼が燃やし尽くされそうな真っ赤な髪の彼女に声をかけると、嫌そうな表情で全身燃やし尽くされそうな視線を俺へと向ける。


「結構です、暑苦しいのでもう少し離れて下さい。」



フッ、今日も彼女はツンデレのご様子だ。

因みに暑苦しいと言われたのは徒歩5分強も歩いて汗だくだからであり、ジッとしてればなんて事はない。


俺は彼女からの暖かな視線をゆっくりと頷き、左手に魔力を込めて異空間から闇魔法でフロストビーフを取り出して朝食を摂る。



全長12メートルの巨体から取れる肉はまた格別に美味い!左手は油だらけになってるが、元々汗でヌメッていたので大差はない。誤差の範囲内だ。



俺は朝食を摂り終えてから、徒歩1分ほどの教室へと向かう。教室といっても俺の授業は偉大であるから生徒数は200人は毎回居るため、この教壇はステージと言っても過言ではないだろう。



見渡すと貴族やら魔族親衛隊やら、魔王様の側近、各地の魔王様が数名チラホラ…



「では、授業を開始する!」



俺はそう言いつつ闇魔法で幾つもの人数分ぐらいにプリントしてある用紙を取り出して、近くのヤツにテキトーに渡す。


描いてある内容は本日のメインとなる魔法陣である。



「ふぅ…はあ!…ふぅ。」



本日3度目の魔法により、魔力滑稽状態となりつつある俺は全身の気怠さを感じている。


闇魔法は魔力を多く使う訳ではない。他の魔法と大差ないし、むしろ元々用意してある異空間から物を取り出したりしてるだけだから低燃費と言える。



ではなぜか。


それは俺の魔力総量が他者と比べ物にならない位低いからである。これは俺自身舌打ちが何度もでる話しではあるのだが…



「イーリルにおける魔力とは産まれた際に…」



紙が配られるのもお構いなく、俺はマイクを握って授業を始める。ボソボソ喋ってもよく響き渡るこの魔道具は俺の発明品の1つでもある。











俺の授業が何故凄いか、何故俺が偉大なのか。

長寿かと言われればデビル族である俺はやや長寿な方かも知れない。

魔力総量が多い訳でもなく体力もなければもちろん戦闘も出来ない。

確かに凄いと言われる闇魔法を扱える点に関しては名誉な事だが、そんなのは魔王の中には何人かいるし、俺は闇魔法以外は使えない。



なら、何故俺が偉大であるのか。



それは長年の知識、常に探究心を持っていたからこそである。

誰よりも博識で、他者の知らない知識を俺は持っている。魔王様だって俺を抱え込もうと魔王様同士戦争があった程に。



俺はタダで教えてやる気はないし、努力せずに知識を得ようってヤツは例え魔王様でも嫌いになる。


だが、ここの学園はとにかく金で物を言わせた。

俺は金に屈したとも言えるが考えて欲しい。



こんな戦争が起きやすい魔界で、魔物がはびこり、生きる術は即ち力とも言えるここイーリルで。



俺の様な者が生き延びる方法は他にないし、まずこの教師という仕事以外は何1つ出来ないのだ。



仕方なかったと言えよう。



だが、嫌な思いばかりではなかった。



莫大な資金を得る事で、誰も成し得ない様な研究がどんどん出来るのだ!!


こんな嬉しい事は他になかろう。



欲を言えば、この莫大な資金を使って少しはモテたいとも考えたが、俺の魅力に気付かないヤツなんかに興味はない。

いや、目を付けてる女性は数十人はいるが、それはそれだ。









知識というものは時に強力な武器となるが、使わなければ薄れていくのもまた知識である。


よって、少し簡単な知識だけ頭から引き出して違う事を考えながら授業を行うとしよう。














そもそも魔術とは何か。

それは質量保存の法則や、エネルギー保存の法則なんかをガン無視した魔力によって起こされる超常現象の事である。



魔術は【火】【水】【風】【土】【治療】の5つの基本魔術がある。これは後天的に学んで得る事も可能だが、その為の魔法陣を描き、そこに推奨を加えて発動させ、慣れてきたら魔法陣を使わず、いずれ無推奨となる。


が、それに伴い多くの魔力を消費するのである。



因みに魔力総量は産まれてから10年程の間に使い続ける事でその量が爆発的に増え、その後は殆ど変化しなくなる。



基本魔術は応用が利き、例えば水魔術と土魔術によって泥沼を作る混合魔術。

例えば水魔術で雲を作り雷雲から雷を発生させる上位魔術。

この上位魔術は

【初級】【中級】【上級】【王級】【神級】

の5段階に分かれており、雷は王級になる。

こちらも上位魔術になればなるほど魔力を消費する。



また、古時代の魔神様が扱っていたと言われる24つの魔術、元祖魔術が存在する。


これは先天的なもので産まれた時に決まっており、俺の元祖魔術は闇魔法である。


元祖魔術は産まれた魔族全てに1つ宿っているが、産まれてから約10年の間に取得しなければ使えない。

産まれてから24魔術のどの魔術を使えるか親が子育ての中探っていき、その魔術を何度も反復的に練習させるのが一般常識であるが、例外もある。



その1つに、子が自ら使い出す場合。感覚的に扱ってしまう猛者もいると言う訳だ、末恐ろしい。

もう1つは、闇魔法で内なる力を異空間に入れ、その元祖魔術を確かめる方法。

これに関しては俺も出来るが、子供がいないため割愛しよう。



また、元祖魔術は【魔術】と呼ばれるが、確立されたものではない。

例えば、前例をあげた水魔術と王級、雷を扱った場合は規模の大きさは多少魔力で変えられるが、自由自在に指先から出す。という訳にはいかない。


その点元祖魔術は、自らの手足の様に扱える点が大きく、術式に則っていると言うよりは魔法に近い為【〜魔法】と呼ぶ。



よって、基本魔術より元祖魔術の方が戦闘において重宝しているのは事実で、基本魔術はその元祖魔術を補う5つの魔術としてみんな習得していく。



元祖魔術は24つの魔術があり、それぞれ

【闇】【光】【氷】【砂】【磁力】【結晶】【銀】【鏡】【木】【召喚】【誘惑】【毒】【幻視】【変化】【影】【巨大化】【縮小化】【未来予知】【遠視】【糸】【煙】【念話】【栄養】【透明】

の全24種がある。


最も珍しいのは断トツで闇魔法だが、俺はそんなものより誘惑魔法か変化魔法、遠視魔法や透明魔法の方が欲しかった!


何故なら、モテる必勝パターンとも言える魔法や覗きが堂々と出来る魔法だからだ。もちろん悔やんでも悔やみきれない所は多々あるが…


この元祖魔術全てが使えたという魔神はチートでハーレム野郎であっただろうと俺の出した書籍には書いてある。



話しは逸れたが、元祖魔術も基本魔術も魔力を消費する。

それ以外に魔力を消費する魔法があり、誰もが使える【身体強化】魔法である。


これは、込めた魔力と己の肉体の身体能力によって上下し、込められる魔力量には限りがある。


要は、日頃身体を鍛えていないとあまり意味がなかったりする魔法で俺とは無縁な為ここも割愛しよう。



その他で魔力を使うのは、魔道具の使用、並びに作成である。


魔道具は物質に魔法陣を予め組み込んであり、そこに魔力を通すと発動するものである。


魔道具は数多く存在するが、戦闘以外の魔道具は数が少なく、俺が提案する度に大ヒットとなるからイーリルの魔族は馬鹿ばかりである。




そんな俺は研究家としても名を轟かせており、今もある研究に組んでおり魔法陣を使った【転移】である。


俺の推測では転移とは召喚魔法よりも闇魔法に近いと推測しており、この研究は3000年前からコツコツとやってきている。


ある程度転移に関しては論文もまとまっているが、こちらは秘密裏でやっている為自分用である。


転移自体はやろうと思えば魔力さえあれば今でも出来る。


この俺が何故そんなに時間がかかっているのか、それには大きな理由があり、魔力総量が足りな過ぎた為だ。



そして研究の成果は上々で、もはや完成とも言える。


その成果が、【異世界転生】である。



これはもう今すぐにでも試せる状態で、3度恐らく成功している。


恐らくというのは、異世界に行ったかどうかがこちらからでは確認出来ない為である。




何故こんな研究を続けてきたかというと深い理由があふのだが、ここも割愛しよう。














何にせよ、魔法陣への魔力は行き届けば一度発動可能であるが、魔法陣のみでは魔道具とは呼べない。


また、魔道具は平面だけでなく幾つもの魔法陣を重ねる立体魔法陣を活用するのが効率的だが、イーリルの魔族は平面以外思い浮かばない者たちだったので、今はその授業を行っている訳だ。




「立体魔法陣にする際の魔法陣同士の組み合わせ方は以上である。今配ったプリントの上に己でまずは魔法陣を描いて10枚を超える事をまずは目指すのだぞ。。。これにて今日は終了とする。」




約3時間。


授業が終わり、俺はいそいそと自宅へと帰った。



「ふぅ、やっと終わったか。」


毎日3時間程度の授業は難なくこなす俺だが、今日は予定があって少し焦っていた。自宅の地下におり、そこの中心に輝いている魔法陣に対し俺は。頼むぞ。と呟き、近くの椅子に腰掛ける。



直径15メートル程の魔法陣は円状に上に行くほどに回転しており、高さ3メートルはあろう魔法陣の上には不備がない様にアーチ状の魔法陣が幾つものある。


資金を使って魔石と呼ばれる魔力の入った電池の様な役割の石をこれでもかと買い揃え、ここ10年程はこの研究室には誰も立ち寄らせていない。



いや、メイドのシャリーゼだけは例外だろうが…



「やっとだ…」



俺は、螺旋状の階段を登りながら額の大粒の汗を拭う。

やっと、やっと…!



俺は魔法陣の上に立ち光り輝く中、泣き崩れそうになるのを必死に堪える。



俺の人生は出だしでミスった。

闇魔法が使えると周囲にチヤホヤされ、両親が書籍を幾つも俺に与えて基本魔術を完璧にして魔力総量を上げ、幾らでも闇魔法が使える様にしようとした。


が、俺は書籍を見る度に他の知識欲が溢れていき魔力を使わなかった。


その結果魔力総量は最弱とでも言える程に低い状態から上がる事はなくなり、本ばかり読んでいたせいで体力もなくお世辞にも逞しい身体にはならなかった…



結果的に見れば博識であるバロン様とまで言われるかなり大物ではあるだろうが、戦闘力皆無の俺は俺自身が嫌いだった。


もちろん体力作りとしてダイエットもしようとしたが、そもそも魔力ほぼ皆無では外に出ると危ないし、家の中にいたら本を読んでしまう。


無理だったのだ!!


そこで俺は、【異世界転生】を考える。

もちろん誰もやった事はないが、俺の知識力ならと。




俺の周りが輝かしかった色から普段見慣れた闇の色へと変わっていく。


この魔力は便利だったが、やはり誘惑とかの方が欲しかったな。






最後にそんな気持ちが湧き上がって来た所で、俺の意識は途切れた。






















光を失った魔法陣のある地下に、シャリーゼが降りてきて、溜め息だけが響き渡ったのであった…

魔界編は、終了となります。

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