引退
中年の無資格な私を雇ってくれた器の広い飲食店の厨房で皿洗いに精を出していた私に客と言う言葉がかけられたので、間違いじゃないですか?
そう聞き返した。
違うみたいよ。ちょっと来てと女将に言われてしまったので表に出る
そこには年老いてなお美しい顔のもと夫と血の繋がりのない息子がいた。厨房から出てきた私のみすぼらしい姿を見て驚いているようだが一般市民ならこの程度の服だ。
今までは家に恥をさらさない程度の服をきて外交とか実務をしていたが離婚したのだから関係ないと身の丈に合った服を着て生活している
「な。こんなところで何をしている。帰るぞ」
「そうですよ。帰りましょう」と帰るように促してくる
「帰るとは?未だ仕事中ですので。それに離婚したのだから私とあなた達は無関係な人間ですよね」そう言って置くに引っ込んだ
仕事を終えて帰り支度をしていると女将に声をかけられた。
昼間のことが気になるらしい
「簡単な話ですよ。政略結婚をしたしてね。夫は好きな女性を愛人として囲って私には外交とか家の仕事ばかり押し付けてきたんですよ。で、結婚当初に跡継ぎが出来たら出ていけと言われていたんですよ。で、愛人の息子が跡を継ぐと言うことだったんて離婚届を置いて家を出て今に至るんですよ」
「苦労したんだね」そう言われたが別に気にしていない
「いや、仕事だと思っていたから苦にならなかったですよ。ちゃんと報酬もと言うか、私の采配で出来ることで資金もためいたし。何で今さら?って感じがつよいですよ」笑いながら店を出る
遅い時間と言うわけではないが薄暗い時間帯。人気のない道を歩くのは危険であるがまあ。私的には気にならないのである
結婚生活で培った気配察知と護身術があるし何せ私が気に入らないと愛人さんやら使用人から攻撃されたりしたからな。月の出ている時間帯は私に危害を加えることは不可能何故か知らないが。
ゆっくりした足取りで月見しつつ新しい家に帰る。
店から出たときには尾行がいたが、まいたと言うか勝手に見失ってくれたので新しい家に押し掛けてくることはないだろう。
にしても灯台もと暗しという言葉通りに市内の彼らが来ない場所で人の出入りが激しい場所に就職したのになぜ見つかった。
実家とは交流していないというか絶縁状態だし。嫁ぎ先では親しい人などいなく私の居場所などわからないはず。そもそも足取りを追われるなんて思っていなかったし。
何かの理由で追われてもわからないようにきれいさっぱり痕跡を始末してきたのに何故だ?
考えていても頭が悪いので理解できないと放棄して睡眠を取ることにした。
その後は元旦那も来ることがなく穏やかに1年が経過した春
お気に入りの花見スポットで昔の事を思い出しながら花を愛でていたら元旦那が現れた
何故か後継者もまた連れてきて。
目の前に立ちこちらを見ている目には昔と違って寂しさが見え隠れしているがそんな目を向けられる理由が分からない
「なぜ帰ってこない。こんな書類を残していなくなる」
そう言われたので約束を守っただけだと伝えると驚いているが何故だ?
「飾りの妻でしょ私は。外交とか家の仕事はしましたがあなた達は家族ではない。仕事の引退の時期になったので契約結婚を破棄して約束通りに出ていったのに何が不満なのですか?ちゃんと引き継ぎもして業務に問題はないので、貴方は大切な愛人さんと余生を楽しめばいいでしょ」
「あれとはかなり前に別れている」
「そんなこと言われても関係無いですよね。プライベートは一切干渉せず仕事だけしてれば言いと契約しましたし。そもそも興味がないでしょ?私には。結婚式にそう言っていたし、その後もそういう風に接していましたよね?私たち」戸籍上旦那にそう伝え
「それに私は1従業員とさた立場でしか貴方と接していないし。私が抜けても業務に支障はないでしょ?なんのようですか」と跡継ぎに視線を動かし聞いてみる。
「お母様」と言われた
「残念だが私は子をなしてないから君の母親ではない。君の父親とは結婚していたが白い婚姻だがらある意味離婚しても問題はないし君の家には打撃はないだろ。なんのようだい?」
その言葉に驚愕の表情をしている2人を置いて場所を移動する
そのあとも度々出掛け先に押し掛けてくるが仕事はどうした?と思いつつ無視している。仕事場周辺の名物となりつつあるのが面倒だ
「あんたも凄いよね。あんないい男に求愛されているのに無視とか。ときめかないのかい?」女将に聞かれたので
「今更ながらに愛しているだの何だの囁かれても今までが今までですのでこれっぽっちもトキめかないですね。むしろ邪魔。仕事してんのか?と周りの人間の方を心配してますよ」
「はい?」
「そもそも跡継ぎが出来たからといっても移行している状態です。割合的には元旦那の方の仕事が重要なはずなのにぶらぶらしていて大丈夫か?見たいな。以前はあのダメ人間が開けた穴を私が仕事としてフォローしていましたがね。今はそれもない状態であれですよ。そろそろ信用問題とか出てきますから」
手を引くべき所だろう。まあ、嫁ぎ先の利権関係は持ち出していないし。自分の財源もある程度の金額になったら利用していた権利を他人に売買していたから問題ない
しかし邪魔だなと思いながら仕事にはいる
昼休みに奮発しようと安くて美味しい定食屋にはいる。昼は賄いがない場合があるからどこに行こうが文句はない
一人用の席に座り注文を待っていると元旦那が相席してきた。なんのようかと思ったが面倒なので放置。あちらもご飯を注文してから私を見て
「こうやって食事するのも久しぶりだな。あれと別れからお前との食事が楽しみになっていたから嬉しい」と言いやがったが私的にはいい迷惑だったのには気づかなかったのか?
結婚して5年ほどたったある日いきなり食事をともにとり始めた旦那と後継者。食べているものは私が自炊の適当料理で彼らはシェフがつくった料理だった。そもそも私の領域である私専用スペースになんのようだと思いつつ時間を変えたり場所を変えたりしたがしつこく居座ったので最後には存在を無視していたのだが。
「勝手に居なくなったから心配した。家に帰ってこい」と熱い目線で言われた
「無理です。今更貴女方とは生活したくないしやっと好きなことを誰に邪魔されずに出来るようになったのですから邪魔しないでください」そう伝えて昼御飯を食べた日からぱったり来なくなった
本当に何がしたかったのやら




