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(割引!何割引なのかしら、まさか5割ってことないわよね。まあ、できて3割ってところかしら)
3割ほど安くなってやっと村での物価と同じくらいだろうか、いやもしかしたらまだ高いかもしれない。
この街に来て何が驚いたかといえば野菜の高さだ。
野菜を作っている農家がこの近くに無く、運搬料などがかかってしまうため必然的に高くなってしまうのだが、ルキア達田舎の人からすればあの高さは異常に見えた。
(だって、ただ同然なんだもん)
ほしいものがあれば物々交換できたし、服なんかは行商人が安いものを持って来てくれた。
「よお。大丈夫だったか?」
「問題なくもらえたけど?」
ひらひら~と入学許可書を見せ付けるとアルバはにや~と意地悪そうな笑みを浮かべ
「いや?重みで椅子が折れなかったかな~っとね」
「阿呆め」
べしっとルキアは後ろ頭を叩いた。
「ふふっ二人は相変わらず」
「相変わらずなのはこいつよ」
ふん、と両腕を組んで肩でどんとアルバの肩をどつく。
それにふらつきながら「何だよ」と睨みつけてくるがルキアは動じない。
「どっちもだろうが、昔っから変わんねえ体系しやがって、妹を見習え」
「余計なお世話ですぅー!」
「いいの!お姉ちゃんはこれでかわいいんだから」
ぎゅ~と抱きついてくる妹を受け止めながら微妙な気分になる。
「お前達も相変わらずだな、その姉馬鹿妹馬鹿め」
「馬鹿で結構!」
「馬鹿でけっこう!」
見事な馬鹿姉妹である。
「ああ!君たち!いたいた」
突然話しかけられて振り向くと手を小走りになりながらシェスカがこちらへやってくる。
何か受け付けで忘れたことでもあるのだろうかと小首を傾げていると
「君たち今日泊まるホテルか宿って決めてある?」
「え?ないですけど。ね?」
「入ってすぐこっちへ来たから」
「なら良かった・・・実はね、学院が貸しきっているホテルがあるからそっちに泊まってって言おうとしたの。一応みんなに案内してあるんだけど忘れてて」
「か、かかかか」
「・・・この子どうしたの?」
突然かを連発し始めたルキアを見てシェスカはアルバに聞く。
「あれじゃないですか。貸切の言葉に驚いてる」
「お姉ちゃん・・・治れ!」
ぺしん!と額を叩かれてようやく収まったルキアは「ごめんなさい」とちょっと息切れしながら胸を押さえた。
「ホテルを貸切なんて凄まじすぎてちょっと壊れてました・・・」
「ああ・・・うん。いいわよ、普通しないもんね」
ホテルを一つ貸切にするなんて、さすが国家機関、やることの規模が違いすぎる。
「入学許可書の裏面にこっからの地図が描いてあるから、わかんなくなったら人にテルズホテルはどこですか?って聞けばわかるわ」
「はい、ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げて受付へ戻っていくシェスカを見送った。
そして入学許可書の後ろを見るとここからそう遠くない場所にそのホテルがあることが書き記されている。
「・・・高いのかな」
「お前そればっかだな」
「だって、できるだけお金を節約したいじゃない?そっちと違ってこっちは二人なのよ?全て二人分かかんのよ?これって倍よ?倍、倍かかるのよ!?」
「わあったから力説すんな!悲しくなる!」
同じく田舎生まれのアルバは節約がどれほど大切か知っている。知ってはいるが、こんな大通りでそこまで力説されるとなんだか物悲しいものが沸きあがってくる。
「荷物をとりあえずそのホテルに置いてからか」
「あたし疲れたから部屋で休んでたい~」
「アリア、違うわ。まずは値段を聞いてから休むのよ」
「お前、もういいよそれ・・・」
どこまでも値段にこだわろうとするルキアにアルバは脱力を覚えた。