第肆話 夢覚めて
スパンっと切り替わりますよ
どんっと自分の寝ていた地面が揺れる感覚に俺は驚いて跳ね起きた。明るい光がまぶしいということといきなり上体を起こしたことと、落ちかけた隊旗を慌てて掴み直したことが原因で、俺は木の上から落ちかけて冷やりと背筋に冷たいモノが走り、冷や汗をかく。
危なかった、落ちるところだったと自分がそうなった原因があるであろう木の根元を見ると、朝見た薄茶色の短髪が見えた。
「やっと見つけた・・・」
(普段の土方程ではない)鬼の形相ではあったが、それはやはり乙夜だった。
「お前のせいで、俺は土方さんから直々に命令されて京の街を走り回るはめになったんだからな!」
気付けば辺りは日が山に落ちかけており、一番太陽が眩しい時間帯になっていた。
乙夜の言葉から大体を把握して、ほんの少しだけ申し訳なくなり、木の枝から飛び降りて乙夜に並ぶ。乙夜は怒りつつも、俺を見つけたことへの達成感から少し嬉しそうにしていて、屯所までの帰り道の間今日会ったことをずっと話し続けていた。
次々と乙夜から話される内容を聞き流しながら、俺はあまり覚えていない夢の内容を思い返した。
夢を思い返した結論からすると、確かにあの頃の土方はよくわからない人物だったなと思う。今は鬼のようだといわれるが、あの頃はなんだかんだ言いつつ世話焼きで酔狂な奴だった。ただ、少年の頃はバラガキと呼ばれていただとか、奉公に出た先で色々――土方は何があったか教えてくれなかった――あってブチきれて村に帰ったとか(土方の姉さんから)聞いた時には益々土方が分からなくなった覚えがある。
近づき過ぎず、遠く離れずの距離を保って接していたという覚えもある為、恐らく俺の言っている『よくわからない』というのは『解ろうとしなかった』の間違いなのだろうがあまり過去を気にしない都合のいい性格からか、俺はそれ以上深く夢について考えることはしなかった。・・・乙夜はずっと話し続けていた。




