第伍拾肆話 閑話休題
見回りの途中、俺と竹田は土方と沖田を見つけた。
「土方さん、沖田さん!」
竹田が駆け寄る。
先に沖田が振り向き、笑顔で手を振っているが、土方はゆっくりと振り向く。気配から、どうやら機嫌が悪いらしいと判断する。
竹田も気付いたのか、体を跳ねさせ歩調を緩めた。
「え、ど、え、?」
「あー、うん。色々あってね。」
何となく察しがつき、俺は土方を見た。
「仕事の鬼。」
ぎろりと睨まれた気配が降ってきた。
「……好きでこんな性格なんじゃねぇ。」
「知ってます。」
目を合わせず、互いに言い合う。
土方のことだから、きっと、徹夜にあの水谷という男の態度が加わって機嫌が悪いのだろう。
「雇ってるとはいえ、誠意の欠片も無いよね、あの狸。あれじゃ、狸鍋にしても脂身が多くてあんまり美味しくなさそうだなぁ」
「狸鍋!!」
「おい、反応するとこおかしいぞ、竹田。」
狸鍋にしても食いたくない。てか、まず、捌きたくない。
と、桂がやってくるのが見えた。
「4人揃って、何をしているんですか?」
「お疲れ様です、桂さん!」
桂が合流し、5人で並んで立った。
「ただの雑談です。」
深い溜め息をつく土方と、珍しいものを大量に前にして好奇心を刺激されている竹田の温度差が凄い。
桂も訝しげな表情を浮かべるが、
「色々、ありましてー。」
へらへらとしながら沖田が笑って言えば、桂も何となく察したのか小さく「あぁ」と呟いた。
「ご苦労様です。」
生真面目に桂は土方に言う。律儀だ。
「それにしても、異常が無さ過ぎて暇ですよね。」
本当に暇だ、といった風に沖田が言う。
「異常があると困るのですが…」
正論だ。
が、沖田だしなぁと思う。
「そいつ、総司ですよ。」
土方が代弁してくれ、竹田以外は桂も遅れて納得した。
「どういう意味ですか?」
「そのうちわかる。」
わからないという風に竹田は首を捻っている。
いろはにもう少し居れば、本当にその内わかることなので、説明をする気はない。
「土方さん、桂さん。あまり固まって喋っていると、また狸が来そうなので失礼します。」
長く雑談をする気が無いので、俺は流れるようにそう言った。
「そうだね。じゃぁ、僕ももうそろそろ、自分の隊に戻ろうかな。」
沖田も俺達に続く。
桂は俺の言った『狸』が誰か考えるように顎に手をあてていたが、やがて理解したのか手を叩いた。
「俺達も戻るかな。…あ、狸って本人の前で呼ぶんじゃねぇぞ。」
「勿論です。」
土方に釘を刺され、返事を返すと、隣を抜けて歩き出した。




