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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第六章 水神の巫女 
51/60

第肆拾玖話 過去の日

ついに超える五十話。

長過ぎるので途中で分けても良いかと考え中。


もう片方の小説も話さっさと考えないとなぁ。








懐かしい三味線の音が聞こえる。

やがて、段々騒がしくなって、俺は煩わしくて目を覚ました。

『煩い、何だ。』

眉間に皺を寄せて呟く。

『おぉ。お館様、おはよう御座います。』

すると、俺が寄りかかっていた顔面樹が穏やかな顔で声をかけてきた。

それに気付いたらしい周りの妖共も口々に挨拶文句を口にする。

それを片手を上げてあしらうと、騒がしい方向から木霊が駆けてきて、俺の着物の裾をひいた。

『おやかたさま、おやかたさま。』

『何だ。』

『また茨木童子と玉が喧嘩してるの。』

精一杯、見上げて言ってくる小さな木霊を抱え上げ、膝に乗せてやり、俺は側にあった瓢箪を煽った。

『心配せんでも、すぐにおさまる。』

少し零れた酒を拭い、適当に答えると、向かいにあった襖を開けて玉が飛び込んできた。

『酒呑、おはようっ、匿ってェッ』

『逃げんな、玉ッ』

後を追って来た茨木が間髪入れず得物の大太刀鋏を右腕で勢いよく振った。すると、部屋の中で物凄い突風が吹き、周囲の小物、中級の妖を根刮ぎ吹き飛ばされる。

俺は飛ばされそうになっている木霊の襟首を掴んだまま瓢箪を傾け、飛んできた玉が俺の背後に転がり込むのを見届ける。

『卑怯だぞ、玉!お館様を盾にしやがってっ』

『だって、こうでもしないと、茨木はずっと怒ったままだろう?』

『当たり前だ!』

『ひっ、酒呑〜』

『テメェなァ……』

夫婦漫才のように繰り返される言い合いを俺は茨木と玉を交互に見た。

膝に乗っていた木霊がのそのそと玉の方へと移動した。

『玉ぅ』

『やー、木霊。酒呑に遊んで貰ってたのかい?』

『話を逸らすな!』

茨木が怒鳴るものの、玉が気にせず木霊を抱き上げたことで呆れた溜め息をついた。

いつも通りの幕切れだ。

『玉。僕、玉の三味線聞きたいの。』

元々、子ども好きの玉はそんなことを言う小さな木霊を抱きかかえたまま笑う。

『いいよ。』

今は夜叉だが、玉は茨木と同じ、人間下りだ。

人から妖になった玉は武術はそれ程だが、芸に秀、特に三味線が上手かった。

長唄の類ではなく、ただ流れるからからとした音は聞く者を魅了するだけの才がある。

夜叉は人を誘惑し食らう鬼だからだろうか。

いや、違う。

玉だからこそ出せる音なのだろう。

俺は再び人面樹に背を預け、からからと流れはじめた音に耳を澄ませて目を閉じた。

悲しみと、情を感じる音。

俺は何故か、これは今はもう遠い、取り戻すことなど出来ない昔の夢で、もう目覚めても、あの頃と同じく光景を見ることは無い。と何となく感じつつ静かに眠りについた。





「おい、また寝てんのかよ百鬼。」

文句を言われ、目を開けると目の前には人の顔があった。

一瞬、誰だったかと考えてすぐに乙夜だと判断がついた。

「……何でいる?」

「お前が一向に戻って来ねぇから土方さんに探して来いって言われたんだよ。何で毎回、俺がお前探しに出ねぇといけねぇんだよ。しかも、お前いつもと全く違うとこに居やがるし、俺まで連帯責任で処罰とか言われたら、絶対ェお前恨むからなっ!」

一気にまくしたててきた乙夜に、寝起きで半分も頭の働かない俺は取り敢えず怒っているらしいとだけ理解して、状況を確認する。

周りを見渡すと、どうやら外れの神社の境内で眠っていたらしいと理解した。

辺りはもう薄暗く、風も少し冷たい。体も冷えてどうやら長く眠っていたらしい。

改めてあれが夢であったと理解した。

「おい、さっさとしろよ百鬼。早く帰らないと土方さんにまた説教食らうぞ。」

先に帰りはじめていた乙夜が振り向いて言う。

俺はまだ半分寝ている頭を振り、壁にたてかけていた旗を担いで後を追った。

夢を見れば専ら、過去の夢だが、土方に拾われるよりもっと前の夢を見るのは珍しく、少し感慨深いものがあった。

昔の夢を見た理由は美術館裏で見たあの展示品に影響されたせいだろう。

寝起きは悪くも無く、良くも無く。

夢だと理解して一瞬感じた、虚無のような何か。

あの頃に戻りたいのか、また会いたいのか。

ただ、今いるこの世界が嫌いな訳ではないと早足で帰路につく道すがら思う。





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