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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第四章 屯所問題
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第参拾捌話 非番と幾松

あ、石投げないでっ

あっ、あっ、あー♂ Σ\(ーωー;)<ヤメイ




「おーい土方、吉原行こうぜ」

高杉はこう言い切る前に土方に殴り飛ばされました。




「あ、百鬼くん、百鬼くん。ちょっと良いかしら?」

月浪と相沢の世話で暫く非番の無かった俺に沖田が気を利かせて(んな訳ないし裏しかないだろうが)二人の世話役を1日だけ変わると言い出したのが今朝。近藤の許可もすぐに下りた為、今日の俺は非番だ。

しかし突然の非番というものは一見、得をした気分だが、ふたを開けて見るとただただ暇だった。

暇すぎて何処かに出掛けることも寝ることもしていなかったら、台場に近い庭先で呼び止められた。

振り向くと、身長の低い可愛らしい女性が駆けて来た。

「……幾松さん。」

いろは監察方所属の幾松だ。

新撰組が前身のいろはだが、実は新撰組が女人禁制だったのとは違い、別に女子の入隊を禁じてはいない。

実際いろはに名が変わった時、数人だが女子が入隊した。

幾松も再編成時に桂の紹介で入隊した女子だ。

因みに通称、いろは内最強。

理由は追々話すとする。

今は用件だ。

「何ですか。」

「土方さんがお部屋にいらっしゃると思うのだけれど、さっき高杉さんに様子を見に行って貰ったら高杉さん、帰っていらっしゃらないの。」

頬に手をあて、「どうかされたのかしら?」と困り顔で幾松が言う。

何か……

そういえば会議からここ数日土方の姿は朝と夜の一瞬しか見ていないと思い出す。

食堂にも来ておらんかったな。

「……あ。」

何となく察しがつき、思わず声を漏らすと、何か知っているのね!と幾松が食い付いて来た。

あ、やばい。

「丁度良かったわ!」

「え」

「土方さんにお持ちしようとお茶を沸かしたの!様子を見るついでに持って行って下さいな。」

「あの」

「あ、あとお茶菓子もあるのよ。取ってくるからちょっと待っててね!」

「え、ちょっ……と」

にこやかに台場の中へ駆けていった幾松。

俺は溜め息をついた。

普段幾松は監察方として出払っていることが多いが、非番の時は基本的に隊内の炊事や洗濯、掃除をしている。そんな時、暇そうにしている隊士を見つけると色々と理由を付けて遣いを頼むことが多々ある。

買い物だったり、手紙の配達だったり掃除、洗濯の手伝いだったりとそれは多種に渡り簡単そうに見えることが大概だが、いかんせんいろはは男だらけだ。女子もいるが、多くはないし入隊してもすぐに止めてしまうことが9割だ。(理由は恐らく想像できるだろう)家庭的な奴なら良いだろうが、そんな奴此処にはほぼいない。だから、簡単なことですら難しかったりする。それに幾松は結構細かい。

そのため貴重な非番を幾松の遣いで消滅させる者も多い。

他にも理由はあるが、幾松の頼みを断れない日本男子な隊士から「非番クラッシャー」と恐れられ、しかも場合によっては今のように幹部ですら使うため、いろは内最強と呼ばれているのだ。

……正直、いろは内最強とかいうのは大袈裟な気がする。

「はい、じゃぁ、お願いします。」

手に持たさせられたお盆に溜め息しか漏れないが、致し方ない。

俺は土方の部屋にむかって歩き出した。



声を掛けながら障子を開いて初めに俺を出迎えたのは高速で真っ直ぐ飛んでくる文鎮だった。

頭を傾けてそれをかわし、改めて部屋の中を見ると、書類や書物が散乱している中にあまり見てすがすがしくは無い物体が落ちている。

二、三秒それを眺めた後、肩をわななかせ、机にむかいながら手の中で筆をへし折った土方を見た。

「いきなり文鎮を投げるな、危ねェだろうが。」

溜め息混じりに呟くと、土方は深呼吸して息を整えた。

「……今何時だ、なんでてめぇがいる?」

「今は12時少し前だ。暫く月浪と相沢の世話で非番をとって無かったら、沖田が世話役を1日変わると言ってな。」

不機嫌なのが空気を伝ってひしひしと伝わって来る。

「悪ぃな、何日か寝てねぇんだ。」

こめかみをつまみながらそう呟く土方の目の下には確かに隈ができていた。

「大分、切羽詰まっておるようだな。」

運んで来た茶を差し出しながら畳に陣取り、膝に頬杖をついて土方を見る。

「あぁ、案の定、寺の坊主共が堅物でなかなか話が進まねぇ、それどころか、田舎侍風情が粋がるなだとか、この前の事件は本当に酒呑童子だったのか、だとしたら対応はどうするつもりだ。だとかとたらたらたらたら文句に質問に……」

「気持ちはわかるが、落ち着け。どうせ、長州や土佐、会津から圧力を掛けられればすぐに転がる者共だ。暫くは我慢して話だけしておけ。」

きゃんきゃんと吠える頭の固い(と、いうより阿呆)犬を思い浮かべてそれと話をする忠犬、土方。思わず笑いそうになると、土方からジト目をくらった。

「何だ。面倒事を押し付けやがって、てか。……どうせ主も桂も近藤も彼処は考えていたのだろう?」

「……まぁな。ただ、彼処はもめることがわかってたから他の件が一段落つかねぇ今、労力裂きたくなかったんだよ。」

確かにそれは俺も思っていた。

だが、移転するにも金がいる。回復する労力とただで回復しない金銭問題なら金の方を気にするべきだろう。

……これを言うと恐らく睨まれて硯を投げられるから言わんが。

「どうせ移転するのだ、動くなら動きやすい所へ移動すべきだろう。」

丸投げしたことはいた仕方ないことであるし、その後、周囲を固めることには協力する。

と、茶を飲みつつ言えば、当てにしといてやるとぶっきらぼうに返された。




「それより、アレは何だ。」

文句を言われる前に話を逸らそうと部屋の奥に転がる男を指差す。

「あ?……あぁ、ありゃ…何だっけ。」

「……主、重症だぞ。」

一段落ついたらすぐ寝ろ、と言ってまた溜め息をつき、アレ……高杉を回収した。



史実の幾松さんは桂さんの奥さんですね。

確か料亭だったか旅籠だったかの女将さんですが、この作品内での幾松さんはいろはの監察です。

身長低くて髪長くて黒髪で実年齢よりはるかに若く見られていたら良いな。


そういえばあんまり関係ないですが、家の近くにお登勢実家跡っていう石碑がたってます。

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