第参拾陸話 月浪と百鬼
眠いテンションで書いたので誤字脱字意味不明多いかもしれないです。
日が暮れるのは意外と早かった。
は組の方々は噂と違いとても気さくなかたがたばかりで、まだあまり詳しくないいろはの巡回地域について色々と教えてくださった。世話役だといった黒野さんは、私と恭次郎さんの後ろにずっと付いて歩いているだけだったが、何だか見張られている気分だった。
そして、夜。
涼しい風が頬を撫で、私は大きく息を吸い込んだ。
昨晩より欠けた月はそれでも変わらない暖かな光を地面に注いでくれている。
それを見上げていると、ふと横に違和感。
「……。」
「うぇ!?く、黒野さんっ?」
黒野さんがいつの間にか立っていた。
私と同じように月を見上げている黒野さんは、細く息を吐き出すと目線だけ此方を見た。
私より高い位置にある目が器用に此方を向き、頭を少しかしげてくる。
「……綺麗ですね。」
「へっ?」
「月。」
「あ、は、はい。」
唐突に現れ、唐突に話が始まった為思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、顔が軽く赤くなる。
それっきり黙ってしまった黒野さんの顔を見上げていると、少ししてまた突然黒野さんが動き出した。
「あ、あの……黒野さん、何処に行かれるんですか?」
「……夜番。」
「夜番…」
確か、いろはの夜の巡回の事。…だったはず。
「百鬼。」
「え?」
付いて行こうと追うと、足を止めることも振り向くことも無く黒野さんが突然、自分の名前を言った。
「姓で呼ばれるのは慣れてないんです。」
無表情なまま淡々と言われ、少し怖い。
「で、でも、殿方を呼び捨てだなんて……。」
できないと正直に言うと、変わらない表情のまま暫く見つめられた。
そして少し考えるように首を傾げるともう一度此方を見た。
「相沢さんは?」
「きょ、恭次郎さんは、幼なじみで……昔から名前で呼んでいましたから…」
苦笑してそう言う。
「……暫くは黒野でいいです。ただし、他人行儀な敬語はやめてください。」
苦手なのだと言う黒野さんに私はほっとしてそれくらいならと返事を返す。
「あ、でしたら、私に対する敬語も結構です。」
と、言えば良かったと後悔したのは再び歩き出して少しして、機会を完全に失ってからだった。
屯所門前に月浪を連れて来てすぐ、俺は月浪に気付いて寄って来た男共に弾き飛ばされた。
「好きなものは何ですか!」
「ご趣味は!」
「生年月日教えてください!」
「相沢様とどういったご関係なのかしら?」
(一部何か違うが)むさい男に囲まれ、涙目の月浪を俺は少し離れて見る。
目をぎらぎらと輝かせた野郎ほど気持ち悪いものもねぇな。と、考えつつ、しかし面白いので観察していると、横に今晩の夜番である藤堂と永倉がやってきた。
「くっそ、やっぱ先越された……」
「遅いです。」
「悪いなぁ、藤堂待ってたら遅くなっちまった。」
悔しそうに奥噛みする藤堂の後ろからやってきた永倉がたははと笑笑っている。
「ひっでぇ!新八さんの厠が長ェのが悪いんじゃん!」
どうでもいい言い合いが始まり、また長くなりそうなので無視する。
視線を再び戻して、月浪を見ると、本格的に泣きそうになっている。
もうそろそろ助けに入ることにし、輪に向かって歩いた。
とは言え、鬼の俺ならまだしも、今の俺はニンゲンの男。こんな目立つ所で見た目に合わない怪力を出すわけにはいかないし、そんなことで相沢や月浪に身元を疑われたくないので、俺は穏便に事を済ますことにした。
輪の手前まで来ると一瞬で月浪を自由にする魔法の呪文をぼそりと呟く。
「土方さん。」
小さな声で呟いたそれ。しかし、効果は覿面で、その場にいた月浪以外の隊士は全員固まる。
その隙に月浪の腕を引き、助け出した。
「さすが土方さんの弟。」
「扱いなれてんな……」
月浪ともといた所まで来ると小さくそんな台詞が聞こえたが、無視だ。
「行きましょう、藤堂さん、永倉さん。」
この後、俺は月浪の腕を後から来た相沢に指摘されるまで握っていた。
次の日、何故か月浪は目を合わせるどころか俯き続けていることに百鬼は首を傾げることになった。




