第弍拾玖話 憧れ
添削してないので変なところが多々あるかもしれません
昨夜、百鬼さんに付いて行こうとした時。あの時、もし百鬼さんがいち早く猫の正体に気付いていなければ、俺は百鬼さんと化け猫に吹っ飛ばされていただろう。
百鬼さんはあの一瞬で受け身を取った為、無事で、その上ほぼ無傷だったらしいが、俺だったらただじゃ済まなかっただろう。
俺は百鬼さんに助けられたんだ。
そう考えたら俺の百鬼さんへの尊敬度が一気に上がり、初めて会った時、膝蹴りをしてしまったことを酷く後悔した。
前に謝った時は別に良いですと言われたが、今度はお礼も兼ねて土下座しようかと考えている。
百鬼さんは凄い人だ。
いつか俺もあんな風になりたい。
以上、ある日の竹田日記より。
「竹田くん。ちょっと来てくれないか。」
何時ものように一番隊の隊士と巡察に出ようとした時、桂さんが俺を呼んだ。
「何ですか?」
小走りで縁側に立っている桂さんのもとに向かった。
「明日からの配属の件なんだが、希望を聞こうと思ってな。」
配属と聞いて、どきりと胸がはねた。
「自分で決めていいんですかっ?」
少し声が裏返りつつ興奮を抑ようと踏ん張る。が、やっと試行期間が終わり正式に採用されると思うと止まらない。
ついつい背伸びをして桂さんに詰め寄るような行動をとってしまい、桂さんに咳払いをさせてしまった。
「一応聞くだけで正式決定は全組長含む幹部会議で決めることになる。だから、絶対に叶えられるとはかぎらない。」
聞いてもらえるだけでも嬉しくて満面の笑みを浮かべる。
「もう決まっているみたいだね。」
「はい!」
俺の返事に軽く微笑みかけてくる桂さんに、俺は嬉々としてその答えを返した。
夕刻前に百鬼と巡察当番の隊の組長を除いた、幹部連中が召集され、会議が開かれた。議題は流れるように進み、昨夜の後処理の最終報告後、竹田の配属を決めるため全員で唸り声を上げていた。
「本人の希望は一番隊だそうです。」
桂が横を見て近藤に昼間に聞いた希望を伝えると、やはりかと呟きが帰ってきた。
「まぁ、そうだろうな。この一週間、一番長く接してた隊は一番隊だったしそんな気はしてたぜ。」
原田が苦笑いしながら言えば他の隊士も頷く。
竹田が此処最近ずっと一番隊と行動し、本人が犬のように活発に動き回ったり、まるで弟のように可愛がられていたのを見ていたからだ。
「しかしなぁ……一番隊に竹田を入れるのは些か…問題が…」
「ですね。」
近藤が苦悶をもらし、桂が同意をもらす。
2人が渋っているのは、実は、陰陽寮と合流の際、陰陽寮の連中が入るのが一番隊だから、という理由と、一番隊は何か事件があると真っ先に駆けつけ戦いに参加する所謂、特攻部隊でそれ故、それなりの腕っ節と度胸が必要になり、時には死を覚悟しなければならない。と言った事情の為だ。
まぁ、一番隊以下の人物達は一番目の理由は何が問題なのか知らない為、後述の内容で悩んでいると思っているのだが…。
「昨夜の様子だと度胸はあるみてぇだが…」
「周りを見ずに突っ走っちまうのは痛いよなぁ」
原田と藤堂がこそこそと小声で話す。竹田が静止を聞かずに百鬼のもとに向かおうとしたという話は報告してあり、昨夜のうちに竹田は土方から少々きつめの注意を受けていた。
「陰陽寮の受け入れも一番隊なんですよね。人手不足は一番隊だけじゃないのですが。」
誰かが発言すると、その周りから同意の言葉が飛ぶ。
いくら大所帯になりつつあるとは言え、それでも人手は万年不足しているのだ。
危険が付きまとい、常に負傷者や重傷者。時には殉死者が出たりする。
だからと言って、むやみやたらと入隊を許可しても使い物にならなかったり、隊規違反により粛清したりもよくある。
「うむ……」
完全に行き止まり。
近藤は腕を組み、頭を捻るが何も案は出ない。
先ほどまで手際よく進んでいた会議は完全に停止してしまった。
「やはり人手不足は深刻か…また大々的に人員募集をかけねばなりませんね。」
「そうだな……」
桂と土方が溜め息混じりに呟く。
今まで先延ばしにしてきたことのツケが回ってきたことを苦々しく思いながら土方は部屋の中を見回す。
どこも怪我人の報告が多数来ているが、均等に振り分けるにはばらつきがありすぎる。じゃぁ、素直に竹田の希望を聞いてやるか。というと、いきなり一番隊に、ということは犬神憑き云々を抜きにしても流石に出来ない。
試行期間の間、仮で一番隊に入れたのは先程も述べた通り、腕っ節の求められる一番隊で一週間のみ竹田のある程度の身の安全を図る為だ。
だから土方は危険と判断されそうな任務には竹田を同行させず、百鬼に付いて廻らせていた。
「えー、僕、別に構いませんよ?竹田くんが増えても。その分、僕の取り分が増えるだけですし。」
けらけらと乾いた笑みを浮かべて笑う沖田が楽しげに言う。
「物騒なことを言うな、総司。いろはは出来る限り捕縛するのが基本だ。」
「ははは、そうでしたね。でも、竹田くんも希望しているんでしょう?あの子、行動力も度胸もあるし。駄目ですか?」
「……陰陽寮の連中も入って、竹田も入っちまったら他の隊とのバランス最悪だろうが。」
土方にも頭の痛い問題なのだろう。少し考えたが、やはり却下した。
沖田は口先を尖らせ、大して気にした様子は無いが、拗ねたような仕草をして口を閉ざす。
また、ざわざわとして話が滞る。
「あーっ、もう止めだ止め!もう埒あかねェ…土方、竹田一旦うちに寄越せ。」
様々な声が飛び交っていた部屋で最初に業を煮やしたのは高杉だった。
上体を前屈みにさせながら、組んだ足を立てて喧嘩腰の態度をとり、不適な笑みを浮かべた。
額に軽く青筋を立てた桂(別称・オカン)が止めさせる為に口を開こうとしたが、それを土方が手で制す。
「何でてめぇん隊に竹田をぶっ込まねぇとなんねぇんだ。」
ドスの聞いた低い声で唸るように言葉を発し、睨むような視線を高杉むけるh
「……人ってェのは、よくわかんねぇもんを怖がるもんだ。霊や妖怪はよくわかんねぇから怖ェって思うんだよ。竹田は化け猫が出た時それを気味悪がりはしたが怖がりはしなかった。それどころか、百鬼を助けに走ろうとしやがった。」
「……」
土方が無言で睨むように見続けると、ニィと高杉が笑う。
「話長引いても良いことねぇだろ。だから、今この場は俺の隊に竹田寄越せ。もし合わなけりゃ変えりゃいい。」
つまり、度胸が気に入ったから、今この場は取り敢えず預かる。ということだ。
その場にいた全員が固唾を飲んで見守る中、暫く見合っていた土方と高杉だったが、先に土方が静かに息を吐き出し動いた。
「……いいか、近藤さん。」
「あぁ。」
近藤が深く頷き、後半長引いた会議はやっと終わったのだった。




