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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第三章 悪鬼
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第弍拾捌話 疑念

そのうち書き直さないとな…





自室でまで、こんな威圧的な視線を向けられたく無いものだ。

昨夜は結局、化け猫はきちんと処理し、黒野百鬼のことは議題にも上がらなかった筈だ。だから別にいいだろう。

そう思うが、俺は土方の顔を直視出来ない。しかし、黙っていても無駄に時間が過ぎるだけなので渋々とだが俺は口を開いた。

「……すまん。」

冷や汗が背中を流れ、体温が下がる。直接見えない為、推測だが、今鏡を見たら顔色は青くになっているだろう。

土方の視線が刺さって痛い。

「弁解はせん。が、あれは鬼の性でそれに流された俺の自業自得であることは一応伝えておく。」

己が悪いのはわかっているのだ。

いくら鬼が本能と欲に忠実だとは言え、理性も知性もあるのだ。実際、土方に説教を食らうことは目に見えていたし予期していた。

わかっていながら化けた俺はただの阿呆だ。

己の行動を一通り振り返り土方の言葉を待つが、ちらりと様子を伺った土方の顔は難しい顔で腕を組んでいる。

暫くすると、土方は溜め息をついた。

「…過ぎたことはどうにもなんねぇ。それに、俺が話しに来たのはこれからのことだ。」

土方の言葉に体をがちがちに固めて強ばらせていた何かがほぐれていく。とりあえず安心した。

「今朝、陰陽寮に呼ばれた。昨夜の件だろうと思ったら案の定で、他藩のお偉いさん方の前で、報告した後、会議になった結果いろはと陰陽寮の合流を早めることになった。」

「……早い反応だな。」

些か幕府方の反応が早過ぎる気がする。

化け猫が出たのも俺が鬼の姿を晒したのも、高杉共がその証言をしたのも昨夜が初めての筈だ。

「それだけ酒呑童子って“鬼”を恐れてんのか。」

「または、何か裏があるのか。」

2人揃って眉をひそめて唸る。

とりあえず今後、俺からしてみれば何とも奇っ怪な状態になるということだけはわかった。問題は無い為、今は置いておこう。

「それより合流は結局いつになったのだ?」

此方の方が場合によっては死活問題だろう。

「一週間後だ。」

一週間。少し早まった程度か。

あとは何人入るかで気をつける度合いを変えなければならない。

「何人来るんだ?」

10人か、20人か。もしかしたら一つ組が増える可能性がある。

そう思い、土方に尋ねたのだが

「2人だ。」

……2人?

首を傾げる。

聞き間違いか?

目を見開き呆然とする俺に土方は軽く笑う。

「合流ったって、取り込みじゃねぇからな。陰陽寮から入るのは力のある奴2、3人だけで、仕事も夜番が中心だ。」

何となくそうなった理由を察した。

陰陽寮の専門は妖怪退治や呪術全般で、公家や武家の二男以下や女性が多く席を置いている。

それに対し、いろはは実働的で力仕事が多く、その上、男しかいない。

土方はああ言っているが、普通入りたがらないだろうこんなとこ。

大方、長州や会津からの申し出をいろはと同じく断りきれなく渋々。といったところだ。

はぁ、と溜め息をつくと土方は俺の考えに気付いたのか苦笑いを返した。

「あんなに騒ぐ必要無かったではないか。」

呆れた。と言えば、土方の額に青筋がたったのが見えた。

「気を付けねぇとなんねェ原因作ったのはテメェだろうが。昨夜の酒呑童子騒ぎさえ起きなきゃ、そこそこの奴で済んだだろうによォ。」

ぐっ、と言葉が喉に詰まった。

その状態で暫く睨み合っていたが、互いに溜め息をつき、土方が立ち上がった。

「ボロは出さねぇようにな。」

「主こそ。」

互いにそう言い合い、少々乱暴に障子が閉められ、再び自室は静かになった。

昨夜の件の結論を急いで出した陰陽寮。

そして、早急に手を出してきたことに疑問はある。しかし、これはただの憶測で疑わないことは問題だが、疑いすぎることもまた問題だ。

今の俺はこれを機に目的を果たす為、暫くは多方面の様子を見て、冷静に対処しなければならない。

「面倒ごとは嫌いなのだがな……」

一人小さく呟いた。




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