第弍拾伍話 化け猫と鬼
眠いです。
文がぐちゃぐちゃかもしれないです。
「百鬼っ!」
「なっ」
道にいた猫を見て固まっていた百鬼が吹っ飛ばされた。
突然過ぎて反応が止まった俺達は次の瞬間咄嗟の回避行動として両端に飛ぶ事になった。
視界の端では猫が段々と肥大化し、変化しており。放たれる禍々しい妖気は、悪鬼と化した化け猫のものだった。
「一晩で二匹も同じ場所に悪鬼が出るなんてっ」
「おい、おい。どうなってんだ。」
悪鬼とは言え、妖怪にはそれぞれ領分がある。だから、同じ場所に一日に二回連続で悪鬼が出ることはまず無いはずなのだが。
「チッ、噂に聞く悪鬼の凶暴化って奴の影響か。」
俺は舌打ちするとかわした時に咄嗟に引き寄せた竹田を抱え、左に飛んだ。途端、先程まで自分達のいた地面が化け猫の爪で抉られる。
「大丈夫ですか、高杉さん!」
「おー、俺はな。」
「竹田も大丈夫か?」
乙夜と原田の隠れていた商家の門の影まで走り、竹田を下ろす。
化け猫の尾や爪が時々飛んでくる。此処も長くは無いだろう。
「原田さん、高杉さん。早くしないとこの騒ぎですし、結界で防音してるとは言え、人が起き出してくるかもしれません。」
心配事は絶えない。乙夜が抑えた声で訴えてくる。
蜘蛛を追っていた時、相手の機動範囲が広かった為、被害と音を防ぐ為、結界を張ったのだが、百鬼が吹っ飛ばされたのを見るとそれも何時まで保つかわからない。早急に決着をてけないといけない。が、裏通りとは言え、見通しの良い袋小路で両側は商家。回り込もうにも化け猫の背後は壁だ。
追い詰めたなら良いのだが、そういう訳ではない今の現状はなかなか辛いものがある。
しかも、見たところ先程まで相対していた蜘蛛より機動性が高そうだ。
さて、どうするか。黙り込み、俺は手を顎に当てた。
「……百鬼さん。」
考え込んでいると、不意に竹田の声が聞こえる。
「百鬼さん…助けないとっ」
門の間から竹田が飛び出そうとして、原田が慌てて止める。
「何処行くんだ、竹田っ」
「っ、百鬼さん。俺のこと、二回も助けてくれた。さっきだって、俺のこと止めて助けてくれたのに……あんな飛ばされて、絶対、大怪我してる。」
今にも飛び出そうとする犬のように低姿勢でそう呟く竹田。原田が止めようと色々と言っているが、竹田の目は化け猫の真っ正面にある百鬼が吹っ飛ばされて開いた穴から外れない。
しかも竹田の力が強いらしく、驚くことに原田が引きずられ始める。
乙夜も加勢し、抑えつけるが、竹田はそれを振り切り、駆けだした。
「竹田っ」
竹田が飛び出してすぐ、それに気付いた化け猫の前足が伸ばされる。
先程飛ばされた百鬼と重なって見える竹田に乙夜が手を伸ばし、駆けだそうとする。
「(無理だ、間に合わねぇっ)」
全ての動きが緩やかに見える中、竹田に爪が触れる寸前。
化け猫が唐突に吹っ飛び、ひしゃげた声を上げて地面に叩きつけられた。
「え?」
飛び出した二人も俺達も思わず止まる突然さで、起きた一瞬の出来事。
「よっと……あ゛ー、ちぃとばかり威力が強すぎたか。」
心地よい重低音に袋小路の土塀の上を見ると、化け猫を飛ばした張本人であろうか、軽い音を立て長身の影が丁度降り立った。
月明かりの下、写し出される赤い髪に金色の瞳、頬を這うような紋様。
一見、青年のようにも見えるが、にぃっと笑った時に見える牙と額から生える二本角は明らかに人のものではない。
「鬼…」
原田が、俺の前で呆然と呟いた。
満月を背後に赤い女物の着流しを着て朱色の槍を片口に担いでいる。
額から生える右側の角には紅い宝石のついた金色のリングが嵌められてはおり、気配はただの妖怪とは思えない。
「猫、猫、子猫。そんな程度では無いのだろう?早くじゃれてくればいい」
くいっと首を傾げながら悪戯な笑みを浮かべる鬼は、何とか立ち上がった化け猫を煽るようにそう話し掛けたのだった。




