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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第三章 悪鬼
25/60

第弍拾弍話 朝靄

あと数話で書きたかったところまで行ける・・・

ちなみに皆さん、コレ読めますか?

コレ→【旅籠屋】

答えはWebで(笑)






目が覚めた。

珍しく寝起きが良く、しかもまだ夜が明け切っていない。

暫く天井をぼぉっと見ていたが、気紛れに起き出すことにした。

「…。」

着替えて旗を担ぐと静かに部屋を出て目を完全に覚ます為、井戸へと向かう。

今の時間なら誰もいないだろう。

朝靄に霞む庭を横目に歩けば、夜が明けていないからか屯所の鴨居や敷居から家鳴りが顔を出した。ギシギシと身体を軋ませて此方を見てくる黒い奴らに小さく「おはよう」と言えばミシミシと返され、俺の機嫌は昨日より格段に良くなる。

井戸に投げ入れた桶を引き上げて顔を洗っていると、誰かが近付いて来る気配がした。

「百鬼。」

「何だ、土方。」

振り向けば、着流し姿の土方で、普段の俺より仏頂面でこちらを見ている。

「…槍でも降るのか?」

「…家鳴りなら降るかもしれねェな。」

驚いたのか訳の分からない比喩を使われたので、とりあえずまだ顔を出していた家鳴りをちらりと見て言ってやる。

「何か嫌だな、ソレ…」

土方が此方に来たため、俺は桶の水を捨て、渡した。

「で、何だ土方。」

「あ?」

「急に名を呼んで。俺が早く起き出した感想以外にも何か用があるのだろう。早く、用件を言え。」

桶を引き上げている土方の後ろで腕を組んでそう言う。

居たことには驚いたのだろうが、あの呼び方はそれだけでは無い声だった。

「……お前、今日から総司と竹田の目付きだろ。総司にも後で言うが、暫くあいつを守れ。」

此方を見ずに土方がそう伝えてきた。

意味を理解した時、思わず俺は顔をしかめた。

「昨日、あんなことを言った者の台詞とは思えんな。…近藤か?」

「あと、桂さんだ。」

土方が顔を洗いながら呆れた口調で言う。

…あのお人好し二人か。

「てめぇが出て行った後、言われたんだよ。せめて総司と百鬼が付く一週間は、研修期間として守ってやれってな。」

納得はした。

が、面倒だと思う。近藤と桂の意見で尚且つ土方を黙らせたのなら仕方無しに従うが、せめて竹田が突っ走る奴じゃ無いことを祈るばかりだ。

「……了解した。で、それだけか?」

「察しがよくて助かる。」

何年、共にいると思っている。

「竹田に妖封じの術を試すんだとよ。」

妖封じ。

印を込めた呪具や紋様を身体の何処かに常時身に付け、妖力を抑える術のことで、実は俺も付けている。

俺の場合は首に二重にして掛けられている朱色の細紐がそれで、陰陽呪術に興味を持ち始めた頃の近藤が掛けたものだ。

初期に付けた為、不完全で妖気を抑える程度の弱い物だが、人に混じっている身としては何かと便利だ。

副作用で眠くなることがあるが。

「まだ、やっとったのか、近藤。」

独学で奴が陰陽呪術を学び出して早何年だろうか、長続きしていることに意外さを感じる。

「封じ込める術だけだがな。お前んとこの狐にも色々と教えるもらってるみたいだぜ。」

「余計なことしおって…」

ここ最近振り回されっぱなしの昔馴染みの狐を思い出し、苦言をもらしながら奥歯を強く噛んだ。

だが、言ったところで何か変わる訳ではないので諦めて一度息を吐き、土方を見直した。

「……竹田のことは一任する。責任は基本的にとってやるから、一週間は色々教えつつ守ってやれ。」

「了解。」

「あと、まだ長州に返事を返してねぇからわからねぇが、恐らく陰陽寮との合流は1ヶ月後だ。」

1ヶ月。それ以内に何もなければ良いのだが…

土方は用件は以上だと一度俺の肩を叩くと、背を向けて去っていく。

俺は姿が見えなくなるまでその姿を見送った。

朝靄は既に晴れ、清々しくも憎らしい光が庭に差し込み1日の始まりを告げた。





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