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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第三章 悪鬼
24/60

第弍拾壱話 因縁=回想4=

細かくわかりにくいところがあるかもしれない。

まぁ、軽い読み物として、どうぞ。





制札を見た後、土方と俺は昼にしようと一軒のうどん屋に入った。

昼飯とはいえ、俺は先程見た制札に釈然としなかった。何故か本人の知らぬ間に訳の分からない汚名を着せられていたのだ。機嫌が悪くなっても仕方ないだろう。

「で、酒呑童子の百鬼。てめぇはあの制札をどう思う?」

「不愉快。あり得ん。」

「即答かよ」

本音だ。

運ばれてきたうどんを啜りながら、土方を見て言う。

字が読めないのは先程知ったが、実は箸の持ち方も忘れてしまっているようで、俺は箸を持つ時何故か箸を握ってしまう。

思い出そうとしてもいまいちわからない為、今回も上手く麺を掬うようにして口に運ぶ。すると土方が箸の持ち方を正してきた。

どうやら土方は俺の妥協した持ち方が気に入らないらしく、何時も飯の度にきちんと持ち方になおしてくる。その度、俺は俺で、妥協はしつつも土方に同意しているので黙って従っている。

今回も少し練習し、うどんに向かう。

「あの話、一体何なんだろうな。」

「さぁな。」

食べながら土方が話の続きを促してくるが、俺はそれより、力の入れ方がわからずうどんが掴めないことの方が問題だった。

「お前、兄弟か親戚いねぇのか」

「兄弟どころか親もおらん。」

やっと掴んだと思ったらするりと落ちる。先程の制札の件もあり機嫌が悪くなっていき、「だよなぁ」と呟く土方にすら機嫌が急落する。

「土方よ。」

「なんだよ。」

機嫌の悪さに拍車がかかる前にと土方を呼び、目を合わせる。

「…俺は身に覚えの無いことで五月蝿く言われることが嫌いなのだ。」

「…。」

「我が名を語り、あまつさえ不逞を働いた輩。何があっても消し炭にする。」

じっと土方の目を見つめると、小さく喉が動くのがわかった。

何処の誰かは知らないが、報いを受けさせるつもりであるのは本当だ。人の世がどうなろうと知ったことではないが、実際問題、俺に弊害と実害を伴っているのだからそうそう軽いものを受けさせる気は無い。

ようは自尊心の問題なのだ。

相手を後悔させてやると笑みを浮かべて宣言すれば、土方は頬杖をつきつつ視線を逸らし、軽く頷いた。

「……まぁ、格好付けてるとこ悪いが、うどん。掴めてねぇぞ。」

つるつると滑る白い麺が金色のダシを跳ね上げる。……いい加減にしてくれ。

「…土方。」

「いいよ、さっきの持ち方で…俺も今回は妥協してやる。」

名を呼べば意味を理解し、溜め息と共に許可された。

やっと口に運んだ麺は多少柔らかくなり冷め始めていたが、時間のあまりない牛の刻前には丁度いいかと割り切った。


数年後、橋の制札には『増えだした悪鬼に対抗する為、勅令で主要な諸藩が協力体制となったが人手不足である。その為、浪士組を募集する。』といった内容のお触れが出され、それが土方達と俺の転機となった。





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