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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第三章 悪鬼
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第弍拾話 制札=回想3=

制札であってましたっけ?

まぁ、いいか。


次回続きます。






俺が土方に拾われ、幾月が過ぎた。

俺の容姿は人の子でいうと大体8歳くらいで、まだ土方の腰のあたり位の身長しかなく。大江山に住んでいた頃が懐かしい程、小さかった。

右も左も分からない人の村は、山暮らしと都くらしを繰り返していた俺としては物珍しく。また、とても退屈していた為、俺は土方が何処に行くもまるで小姓か付き人のように置いて行かれないよう必死に付いて回っていた。

その姿を土方の姉様に「本当に兄弟みたいね」と言われたのは記憶に新しい。


そんなある日。





先に土方邸を出た土方を後ろから追いかける。体躯の違いからか中々追いつけず何とか追いついた時、土方は既に土手にまで来ていた。

土方に声をかけようとして意識が逸れた為か、自分の足に躓き土方の背負っていた薬箱の角に額を強打した。痛い。

「てめぇ、付いて来たのか。」

痛みにうずくまっていると、頭上から降って来たのはまたかといった呆れ声で、それどころではないがゆっくりと顔を上げて土方を見た。

「土方邸におっても暇だからな。あと、この状態だが一応言っておくと、体が小さい分、受ける痛みが主らの倍になっておるだけだ。」

自分の足に躓いて額を打ったことに対する言い訳ではない。本当のことだ。

「…大丈夫か。」

「心配するな。すぐおさまる。」

土方が心配げに覗き込んでくる。半分涙目状態だったが、着物の端でグイッと少々乱暴に拭い、俺は立ち上がった。

「今日は何処まで行くのだ?」

「…あー、今日は向こう街の四辻の地蔵のあたりまでだ。帰りはかっちゃんのとこに寄るつもりだから早めに切り上げる。」

「…だから、防具と竹刀も担いでいるのか。」

薬箱の俺がぶつかったのとは逆側に無理矢理くくりつけられた大きな袋と土方が手に持つ竹刀袋を見て納得した。

かっちゃんというのは土方いわく近藤のことらしい。何故、かっちゃんかは前に聞いたことがあったような気がするが忘れた。

「だから、お前付いて来ても暇なだけだぞ。」

土方が近藤の道場にいる間、俺は見ているだけだ。竹刀のぶつかる音や掛け声などは聞いて見ているだけの俺としては眠気を誘うだけで、ついこの前は稽古の間中、道場の端で寝転けてしまっていた。

そう考えれば確かに暇なのだが、土方邸にいるよりは土方に付いていた方が楽しいのだ。

「主が沖田にこてんぱんにやられる様を見るのは楽しそうなのでな。」

「…何で知ってやがる。」

「さぁ。」

この前、近藤邸に土方と寄った時沖田に教えられたことだ。

土方に睨まれつつ首を傾げてしらを切ると、大体想像がついているのか土方が小さく「総司の野郎…」と苦虫をかみ殺したような顔で呟き、一度大きく溜め息をつくと歩き出した。


道中は何時もと変わりなく。長閑な田んぼ道だったり街だったり。

ただ何時もと違うのは、橋の前の制札に人だかりが出来、口々に何か噂話しをしていた。

俺は商談をしている土方から少し離れ、人だかりの出来ている制札を見に行った。

こういう時小さな体は便利である。

人混みをぬって制札の前までたどり着けば、後は、人と人の間からちらちらと見える字を読めばいい。

…のだが。

「……読めない。」

そう言えば、もうだいぶん土方に世話になっているが、前に俺が文を読んだのはこの世の時間で考えれば約400年前だった。そりゃ、文の構成も変われば用語も変わる。

完全に読めない訳ではないが要点が読めなければ雰囲気で読むもへったくれも無い。

てか、よくよく考えれば文字を読む行為自体400年とかいうどころではなかった。久々で漢字すら幾つか忘れている。

変な所でいらない問題が発覚し、呆然とする。さて、どうしたものか。

と、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきて、人混みを掻き分け土方がやってきた。

「居た…てめぇ、勝手にどっか行くんじゃねぇよ。面倒臭ぇ。」

本日二回目の溜め息と共にそんなことを言われ、俺は遥か上にある土方の顔を見た。

薬箱と防具一式が周りに邪魔そうだと見当違いのことを気にかけて土方を見ていると、土方は制札を見た。

「珍しいな、号外じゃねぇか。…『酒呑童子現る』?」

「読めるのか?」

「文字の読み書きは姉さんから教わったからな。…て、読めねぇのか?」

じとっと土方を見てやれば、土方は先程のことを根に持っていたのか俺が押し黙ると軽く笑いやがった。

蹴ってやりたかったが土方が読んだ制札の冒頭のせいでそっちのが気になる。

早く読め、と睨み上げながら視線で催促すると土方は笑いながら視線を制札に戻した。


土方の読んだ制札の内容は長ったらしい為、要約すると、こうだ。『西の村で、村人が惨殺され、村が焼かれた。生き残った者の話によると村を襲ったのは額から二本の角が生えた紅髪の鬼で、陰陽寮の見解によると京の鬼の大将、酒呑童子の行である。』


あ?

…この一言が俺の正直な反応だった。


俺、まだ何もしてないのだが……



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