第拾捌話 合流
ややこしい。
書いててしょっちゅうわけわからなくなって困りました。
「…これで、先日の長州からの要請の件。真剣に考えることになりそうですね。」
本格的に放心した竹田を一番隊の隊士に引き取りに来させ、一旦、一息ついた部屋の中で、今まで黙っていた桂がぼそりと呟いた。
「そうだな。」
「何のことですか、近藤さん。」
腕を組み、唸る近藤に沖田が尋ねる。
「…昨日の長州からの呼び出しで、凶暴化する悪鬼に対抗すべくこれから陰陽寮と本格的に合流することになってね。」
桂が淡々と答え、溜め息をついた。
そんな話を聞いたら俺も溜め息がつきたい。
「そこで、この屯所じゃ少し狭すぎるのでは無いかと言うことになったんだ。先方は陰陽寮と合流すれば新しい屯所を提供すると言って下さったのだが…」
「…成る程。俺が見事に足手まといになったという訳だな。」
俺がそう呟くと、近藤が咳払いをして視線を逸らした。
「これからのこともありますし、やはり合流して屯所を広くした方がいいでしょう。」
ちらりと桂が此方を見た。
「そうだな。合流する時屯所も広くなるなら何とか百鬼や竹田の件も隠せるだろう。」
二人の言葉に納得はする。しかし、もっと大事な問題がある。
「…だが、さっきの様子だと竹田は犬神が表に出ることをわかっていないようであったな。」
俺の呟きに、全員口をつぐんだ。
竹田は恐らく、犬神が表に出てくることがあることを知らない。
今まで静かにしていたのか、知らぬ間に出ていたから記憶に無いのかはわからないが、現に竹田の話の中に犬神が出てきて人を襲ったという話がなかった。ということは今まで存在は感じていても現実味が無かったのだと考えるのが妥当だ。
「先程も俺が主は犬神憑きか。と聞いたから話しただけで、本人は俺に昏倒されたと思っとるだけで俺が怪我しとる理由はわかっとらんだろうな。」
面倒だと言い切り、溜め息を吐くと他にも複数息の吐き出される音が聞こえてきた。
「……百鬼だけでなく、竹田の方も問題あり、か。」
「土方。人を問題児のような言い方をするな。」
むっとして、俺は土方を見た。
土方は腕を組み、考え込んでいる。
「やはり、長州には申し訳ないが何か理由を考えて合流は伸ばした方が良いか…」
近藤は合流に不安が残る現状に渋い顔をしている。見回せば、沖田以外全員そんな雰囲気だ。
「えー、合流しましょうよ。秘密知っちゃったんなら僕が全員斬りますよ?」
「沖田くん…あんまり物騒なことは言うものじゃない。」
個人的には沖田の意見に賛成だ。確かに合流すれば陰陽寮の者が出入りし危険度は上がる。だが、広くなれば隠せる所も多くなり、知られる可能性は減る。それに俺には隠し通せる自信がある。
ただし、これは俺一人の場合で竹田は含んでいない。
犬神の存在をきちんと認識出来ておらず、制御もできない竹田では、自然には振る舞えるだろうがすぐにばれるだろう。憑き物とはいえ、陰陽寮にそんなモノ関係ない。害は成さずとも人以外は悪。そういう認識の者が多いのだ。
「本当に面倒だな。…いっそのこと、陰陽寮潰すか。」
「…黒野くんまで物騒なことを言わないでくれ。」
冗談だ。
だが、半分以上本音だ。
ふと視線を感じ、ちらりと土方を見れば、土方は俺をじっと見ている。
一度俺と目が合う。がすぐに目を閉じる。その行動の真意をはかれず首を傾げると土方は目を開いた。
「……近藤さん。桂さん。陰陽寮と合流しよう。」
「土方くん?」
「トシ…」
「竹田の入隊を許可したのは、犬神が外で暴れるのを防ぐ為だ。外で暴れて斬られるか、屯所で暴れて斬られるか。…もしくは殉職か。陰陽寮にばれるばれないはあいつ次第だ。俺達が気にしてちゃきりがねぇ。百鬼も同じだ。」
説得力のある声で土方が自分の案を述べる。
「俺達が一番に考えるべきは隊のことだ。悪鬼が凶暴化している今、隊の為になることなら…陰陽寮と合流しよう。」
部屋に土方の声が響いた後、暫く沈黙が降り、土方と近藤が見合っていた。
重い空気の中、沈黙を破ったのは誰でも無く、俺だった。
「いいと思うがな、土方よ。俺も乗った。」
驚きの表情を近藤が向けてくるが、俺はそれに意地悪い笑みを返した。
「土方の言うとおり、たった二人の為に何悩んでおるのだ。隊を考えればここで長州に無駄に楯突くよりは、折角、屯所も提供すると言ってきているのだし有り難く受けるべきだ。」
ニィと笑ってやれば近藤は唸り声を出し少し思案した後、膝をたたいた。
「わかった。陰陽寮と合流しよう。桂さんもそれで宜しいな。」
「えぇ。」
考えが纏まり、多くの問題はあるが陰陽寮との合流が決まった。




