第拾陸話 鬼の犬神退治
皆様のご意見感想。どしどしお待ちしております。
……詰まるところ、ただ淡々と書いてることに疲れました(笑)
次話から暫く説明文になると思います。
「…犬神。」
やけに大きく響いた声は竹田の獣のような唸り声と共に重い空気をもたらした。
先程までと比べものにならない濃い獣臭が漂っており、思わず顔を歪めた。が、何故か楽しくなってきた。
心底楽しそうな歪んだ笑みを浮かべて犬神を見れば獣の妖気を撒き散らして威嚇している。
「あぁ、いいなぁ゛主は…なかなか最近退屈しとったのだ。」
相反する妖気が対立して家鳴りがすると、俺は興奮して自然な笑いをもらした。
唸り声を上げて襲いかかってくる獣。竹田の意識は無く、行動に理性の欠片もなかった。しかし、知性はあるのか危ない攻撃が多い。
体躯の小ささからは想像の出来ない重い蹴り、鋭く伸びた両腕の爪。
交わせば次から次へと飛んでくるそれに更に笑みが漏れる。
沖田や土方、近藤、桂がそれをどんな風に見ているのかなどもう気にもならない。
恐らくこの時、土方が止めに入ったとしても(入れるわけがないし彼奴は入らないが)俺はこの饗宴に邪魔な者として弾き飛ばして続行しただろう。
ただ、ただ久し振りのソレに俺は酔っていた。
振り下ろされた爪をかわし横に飛び退くと、予想していたのだろうか足が飛び退いた先から脇腹に入る。
みしりと骨が悲鳴を上げ、今度は俺が吹き飛ばされ砂埃を上げた。
今の衝撃で木刀は何処かへ弾き飛ばされたらしく身体一つでゆらりと立ち上がった…と、何かが飛んできた為、受け止める。
「ほぉ、噛みつきに来たか。犬神よ。」
俺に頭を掴まれ、ガゥルルルと唸る犬神。喉笛を噛みちぎりに来たのだろう。血走った金色の瞳と赤く発色する隈取りが目前に迫る。
「百鬼。」
口の中に溜まった血を吐き捨て、激しく抵抗している犬神をどう料理してやろうかと思案していた俺は土方の不機嫌げな声にびくりと身体を跳ねさせ、本来の目的を思い出した。
まだ酔っていたいと喚く本能に従いたい所だが、一度溜め息を吐き出すと、とりあえず本能を封じ込め、掴んだままの犬神の目を真っ直ぐと見つめた。
「主らには聞かねばならんことが山ほどあるのだが、主はあまりにも理性が無さ過ぎるなァ。」
グイッと引き寄せれば更に激しい抵抗をして腕に爪を立ててくる。
だが、離してやらず逆にそのまま身体を持ち上げる。
「話にならん。主は暫く寝とけ。」
そしてそのまま床に再び叩きつけ今度こそ本当に昏倒させた。
調子に乗り傷だらけになった俺はボロボロにした道場の件を含めて土方にこってりと絞られ、沖田にはその様子を爆笑された。
竹田は犬神の力の為か大きな怪我はなく。落ち着いてきたのか顔の隈取りも次第に消え、気配も人間そのものになったが一応念のためにと手当てをした後は手足を縛り、土方の部屋に転がした。
「お前なァ…限度ってもんがあんだろ普通。どう他の事情も知らねェ隊士共に弁解する気だ。」
さて、そして今俺は一通り手当てが終わり人間の身体の脆さを痛感した後、竹田の監視をしながら土方から更に説教を受けていた。
土方の形相は鬼より鬼のようだ。本物の鬼がいうのだから間違いない。
そういう俺は頬には大きめの布を当てられ、両腕は包帯でぐるぐる巻きに固定されている。服に隠れて見えないが腹部は打撲により痛々しく変色しておりそこもまた湿布と包帯が巻かれている。
まぁ、詰まるところ満身創痍である。
そんな様相の相手を目の前にいきなり始まった説教はかれこれ半刻程経過しており流石にもうかなりしんどい。
「しょうがあるまい。あのまま普通に続けておっても犬神は出てこんし、なら竹田を気絶させて理性を吹っ飛ばさせ無理矢理引き出す方が早ェだろ。…まず竹田が獣妖怪である時点で『あぁ』なるのは当たり前だ。獣妖怪は元来、力加減をせず怪力であることが多いのだ。」
「…てめぇわかっててやりやがったな。」
…土方に何も言っていなかったことを思い出し、俺は墓穴を掘った、と自覚した。
こうして、竹田が目覚めるまでの間土方に説教され続けることになった。




