第拾肆話 童子2
小説を見返すと、色々なところに粗が見つかりますよね。
昨夜、大騒ぎしつつも実際はやはり大の大人で男なのである。
それなりに威厳のある態度をとっていれば強面は強調され、市中の人間が恐れる江戸守護職、いろは47隊ということも頷けるようになる。
まぁ、何故今そんな話をいきなり冒頭にぶっ込んだかと言うと、齢12、3歳のまだ小せェ童子がそんな大人に囲まれ萎縮している様を想像して欲しかったからなのだが…軽く犯罪臭いだろう。
「で、彼か、伊上と百鬼が連れてきた子どもってのは。」
「まだ小さいね〜。今、何歳?」
「沖田くん、止めてあげなさい。怯えているじゃないか。」
上から、近藤、沖田、桂が竹田に話し掛ける。
人見知りの気があるのか、竹田は此方の一挙手一投足に挙動不審だ。
…因みに、今道場とその周囲にはこの幹部連中と俺しかいない。(それでも強面が多く、恐らく怖い。)
伊上は巡察に戻り、人払いが為されてこの道場には誰も近寄れないように一番隊の隊士が少し離れた所で見張りをしている。
理由は、言うまでもなく俺の竹田は人じゃないかもしれない発言である。
隊内において、俺が鬼だということは幹部連中しか知らない完全な機密になっている。
その理由も言うまでもないだろう。割愛する。
道場に入って来ると、土方は戸を完全に閉じた。
…それに気付き、沖田や近藤、桂は竹田から少し距離を取った。
近藤が一番上座。土方と桂がそれぞれ次席で俺と沖田が戸の前に座り込む。
「伊上くんから話は聞いている。竹田村の、菊人くんであってるかい?」
「は、はい!」
緊張した様子の菊人は名乗る前に何と無く目の前の人物の正体に気付いたらしい。
「私はいろは47隊、局長の近藤勇。こっちが副長の土方歳三と桂小五郎だ。」
近藤の紹介に竹田が呆け、土方が溜め息をついた。
「因みに、僕は一番組組長の沖田総司。」
「総司、お前も名乗らなくていい。」
えー。と、沖田は口をとがらせてつまらなさそうに目を逸らして悪戯に笑った。
「さて、菊人くん。いろは47隊の入隊試験は知っているね。…手順を飛ばして貰う形ですまないのだが、君には、此処にいる幹部の誰かと一試合して貰いたい。」
近藤が竹田にそう言うと、竹田は居住まいを整いなおし一言大きく返事を返した。
「で、誰とやるんだ。」
「え」
「え、じゃねぇよ。」
今日は土方の呆れ顔しか見ていない気がする。
あまり良くなかった土方の機嫌が更に悪くなる。
短気なのはよく知っているが、今日は普段にも増して機嫌が悪い。昨日の呼び出しで何か言われたかと当たりをつけ、変に干渉するより成り行きを見守ることにした。
「近藤さんが言ったでしょ?誰か一人と試合をして欲しくれって。」
沖田が横から笑いながら言うと、桂が咳払いをして付け足した。
「いろはでは、誰と試合をするかは入隊希望者に自ら選んで貰っている。」
自分で選ばせ、もし試験に落ちた場合は言い訳をさせない。そういう方針で決められている規則だ。
まぁ、基本的に、ある程度の力があれば落ちることは無い。
…沖田が受験者の心を折り、使い物にならなくなる時もあるが、あやつを選んだ方が悪い。
「えっと…」
「自分の勝てそうな相手でいい。さぁ、選びなさい。」
「…じゃ、じゃあ…」
竹田が指を指したのは、沖田の逆側の扉に胡座をかき、隊旗を抱えて座っている俺だった。
途端、沖田が大爆笑し、近藤と桂が「ほぉ」と呟いた。
俺はそんな気がしていた為、特に気にしていない。
「あははは!!君、やっぱり面白いね!想像通りの相手を選んだ。…まぁ、一応聞こうかな。またまた何で百鬼を選んだんだい?言っても不合格にはしないから言ってごらんよ。」
どんだけ楽しそうなんだ貴様は。
「…か、勝てそうだったから」
「だろうね。」
沖田が竹田に爆笑している間に、俺は準備をする。
「竹田さん…何、使いますか?」
「あ、これで…」
竹田が差し出したのは布に入った…恐らく刀だった。
…阿呆か。
「あっ、武器の持ち込みは禁止だよ?」
沖田の言葉に竹田が小さく驚きの声をもらす。
入隊試験で使用出来るのは道場にあるもので、此処にあるのは、木刀、木槍、竹刀、棒である。その他の物、持ち込みは基本的に禁止としている。正式に隊士になれば何を武器にしようと制限は無いが…
因みに、たまに、素手と言う奴がいるがそれも許可されている。(その場合、隊士側も素手になる。)
「木刀で」
恐る恐るといったふうな返答。
「竹田くん。」
完全に緊張してしまっている竹田がそう言って立ち上がると、沖田が声を掛ける。
「君が百鬼を選んだのは間違いじゃないよ。俺が君の立場でも同じく百鬼を選ぶからね。」
だから頑張れ。と笑う沖田は竹田にどう写っているのだろうか。
一瞬、呆れた視線を向けると、沖田は一度にっこりと笑い、手を軽く振ってきた。
竹田に木刀を渡し、事前運動がてら軽く垂直に数回跳ねて、目線を前に向けた。
「…始めましょうか。」
「百鬼が入隊試験を受け持つのは初めてだなぁ」
感慨深そうに近藤が呟いた言葉に私もそういえば入隊試験の相手が沖田くんや土方くんだったとは聞いたことがあったが、黒野くんだったという話は聞いたことが無いと思った。
「そういえば、そうでしたね。何故ですか?」
至極普通の疑問だった筈なのだが、近藤さんは頭をぽりぽりと掻き、言うべきか言わざるべきかといった顔をした。
「俺がいつも最初に試験の相手の候補から抜いてんだよ。」
「何故だい?」
解らない。といった風に見ると、土方くんは溜め息をついた。
「危ないからだ。」
「危ない?」
土方くんの素っ気ない返しに近藤さんが乾いた笑いを漏らした。
「まだ俺達が試衛館にいた頃、まだ始めたばかりの百鬼が力加減出来ず竹刀で相手を気絶させてしまったことがあってな…」
相手を気絶させるくらいならよくあることだろう。首を傾げる。
「ただ気絶させるくらいならまだ良いんだよ。」
そう呟いて今度は深い溜め息をついた土方くん。
いまいちどういう意味かわからずもっと首を傾げた私は、その後聞こえた黒野くんの言葉で視線を前へと移した。
「…始めましょうか。」
その後、土方くんの溜め息の意味を知ることになった。
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