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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第一章 黒野百鬼
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第玖話 不穏

進展目覚ましく、まぁいいかと・・・




夜番の次の日くらいは寝させてくれてもいいと思う。しかし、現実はそう甘くは無く今日も朝8時に叩き起こされた。

「俺と桂さんと近藤さんは長州藩邸に呼ばれてるから1日いねぇが、おめぇら気を抜くんじゃねぇぞ。」

朝礼会議で土方がそう言うと、威勢の良い返事(どこぞのヤクザ映画並み)とともに解散となった。

「後1日だな。明日も遅刻しろよ?」

くくくっと喉で笑い、高杉が土方に殴られ、たんこぶの出来た頭を乱暴にかき混ぜてきた。

痛い。地味に痛い。

「懲りねぇな。」

横にいた乙夜にも笑われ、俺はじくじくと痛む頭を撫でて首を傾げた。

「夜番は非番の前の日がいい。」

「お前は基本何時もサボリだろ。」

「そうそう。折角の非番もペナルティー食ったり、誰かと変わったりしてお釈迦にしてっしよ」

高杉と乙夜に挟まれ、両側から的あたりなことを言われ、変に納得する。

「本当、何でお前が未だに切腹せずに済んでるのか謎だよな。あの人、たとえ組長格でも隊規違反には切腹言い渡すって豪語してるし。…弟でも切腹しろって言いそうなものなのに。」

訝しげな視線を向けられ、少し考えてみる。

隊規違反は幹部であろうと即切腹。これを徹底している為、新撰組時代から隊の不祥事はあまり起こらないで済んでいる。確かに隊規のどれかに引っかかりそうなものだが…

「…夜番は仕事してる」

「あぁ、そういうこと…」

昼はともかく夜の妖怪を対処出来る程の実力がある者は少ないというのが本音だろう。

人も疎らになってきた広間で話し込んでいた俺達は乙夜と高杉がそれぞれ呼ばれたことにより解散となった。

副長補佐兼、旗持ちというあやふやな立ち位置の俺はとりあえず長州藩邸に呼ばれていると言っていた土方の部屋に行くことにした。

ギシギシと床鳴りを響かせる縁側を歩き、昨夜の乙夜の話を思い返す。

乙夜のことは大分前に聞いていた為、知っていたが改めて聞くと不思議な話だ。

村が焼かれたのは今から13年前。俺はその時、この世界に落ちたばかりで、しかも妖力も殆ど失って死にかけの子どもの身体に乗り移っていた。

昨夜も言ったが、俺には身に覚えが無い。

この世は俺の元居た世界と霊山を境に繋がっている為、酒呑童子という鬼が二匹存在することは有り得ない。

じゃぁ、乙夜の村を焼いたのは一体…

「あれ?百鬼じゃないか。」

前から声を掛けられ顔を上げた。

一番組組長、沖田総司だ。鉢巻を首に巻き、ニコニコと笑って手を振っている。

「相変わらず無愛想だね〜。長州藩邸に行くって土方さんが言ってたし、今から行くのは土方さんの部屋だね。」

いってらっしゃーいと笑いながら言う沖田にそう言えばまだ大江山にいた頃、こんな感じでずっと眼だけ笑っている昔馴染みの鬼がいたな、などと見当違いのことを考えてみる。

「…沖田さんは、見回りですか。」

「ははは、誰もいないんだし何時も通り話そうよ。あ、見回りってのはあたり。」

ずっと笑っているのは疲れないのだろうか。

「沖田は、さっさと行かんとまた土方に怒られるのではないか?」

隊士を待たせているのだろう?と続けると沖田は先程より大きく笑い出した。

「あっははは!やっぱり素はすっごい変わるね、印象。あと、君は今日すでに殴られた後だよね。…僕はちょっと近藤さんと土方さんと桂さんに用があったんだ。もう行くよ。」

沖田はそう言うと俺の横を通り過ぎる前に一度横に並んできた。

「気を付けなよ。陰陽寮が動いてるらしい。」

「?」

「最近、妖怪が活発に動いているらしいよ。悪鬼も増えたし強くなってるから、何かあるんじゃないかって。」

何故、沖田はそんなことを知っているのだろうか。

「君の友達の狐くんが主様に伝えておいてって教えてくれた情報なんだけどね。」

「あいつか…」

昨日の妖狐を思い出す。あの野郎…

「じゃ、バイバーイ」

今度こそ去って行く沖田を見送り、俺も土方の部屋へと歩き出す。


もう一匹いる酒呑童子。

凶暴化する悪鬼。

普段団体行動をしない妖怪の活発な動き。


考えるときりがないと、俺はまた一旦考えることを放棄した。





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