第捌話 暗い影
この話は違うアカウントで何年か前に投稿していたものの改変版です。
音が聞こえる。
上から聞こえる。
冷たくて、湿った所に
私は眠っている。
「よっと…あー、一通り終わったか。」
のっぺらぼうを呪符で焼いた後、高杉と乙夜が死体検分(?)をしているのを俺は後ろから興味なさげに見ていた。
盛大に焼いたせいで周囲にはタンパク質の匂いが漂っている。
「何だっけ、あれ。えっと…あ、上手に焼けましたぁってか。」
けらけらと笑う高杉を横目に乙夜は呆れた風に「ふざけないで下さい」といなして段々崩れ、炎をくすぶらせながら消えていっているのっぺらぼうに静かに手を合わせた。
「お前は律儀だな。一応、悪鬼だぜ?」
「悪鬼になる前はただの妖怪です。それにもとは墓場の肉塊でしょ。…それに、俺が恨んでいるのは酒呑童子だけです。」
商家の土塀のあたりに腰を下ろし、聞き耳をたてる程度で話を聞いていたが、思わず視線を乙夜に向けてしまう。
「お前、酒呑童子に何か因縁でもあんのか?」
「まぁ…はい。」
言いよどみつつ答える乙夜に高杉は興味を持った様子で聞く体制になった。
乙夜は少し嫌そうな顔をした後、溜め息をついた。
「…故郷が焼かれたんです。」
高杉が眼を細める。
何も言わずともわかったのだろう。
あまりにも有名な話だ。
今から十数年前、とある一帯の村が全て焼き落とされた。
惨殺された村人が多い中、僅かに生き残った者の証言と、その場にのこっていた妖気で陰陽寮は、悪鬼、酒呑童子の仕業だと判断した。
紅い髪に金色の瞳。…二本の角。
「笑いながらうちの村を焼き尽くしやがった。」
ぼそりと呟かれた言葉には激しい憎悪を孕み、ちりちりと身を焼く。
「あー…悪いな。」
「いえ、すっきりしました。」
「…。」
黙って成り行きを見た俺は視線を地面にうつす。
悪鬼、酒呑童子。この世に二人いるのはずはない。別の世界とはいえ、妖怪は霊山を境にして変わらない。簡単に言えば、人の世界は分かれていても、妖怪の世界は同一なのだ。
だから酒呑童子が二人存在することはおかしい。勿論俺には身に覚えがない。
昔からこの世界にあった違和感。何か暗く気分の悪い粘着質のものを感じつつ検分を終えた乙夜に呼ばれ、俺は一旦考えるのを止めてその場を立ち去った。




