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酒呑童子奇譚  作者: みたらし団子
第一章 黒野百鬼
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第漆話 夜番2

口調あやふややふーう





夜の闇は心の闇

心の闇は世界の闇

真の闇は妖怪か、人間か

光と闇は表裏一体だと忘れてはいけない。






身体が宙を舞い、血も飛ぶ。

勢いよく投げ飛ばされた

「大丈夫か、百鬼ッ」

旗を棍棒がわりにし妖怪に殴りかかるが、跳ね返されて百鬼が旗の柄を構えたまま乙夜のすぐ横まで飛び退く。

「問題ない。」

短い言葉を返答として返し、百鬼は妖怪をじっと見据えた。

「チッ・・・雑魚の癖に、面倒な奴が出たもんだ。こちとら、さっさと屯所の自室戻って寝たいのによー……いっそのこと火で焼くか。」

高杉が眠気もあいまって苛立たしげに呟き、懐からマッチと何故持っているのか火薬玉を取り出す。

「ゲッ、……やめてくださいよ、相手、屍の妖怪ですよ。」

必死に乙夜が高杉を止める。理由は……

「…絶対、臭い」

顔を青くしている乙夜の近くで百鬼が呟く。

腐った死体を焼く臭いというのは臭いらしい。

「肉の塊焼くようなもんだから、良いじゃねェか。」

「確かに、油の塊みたいなものだし、ガスとかも出てると思いますけど……」

「全然違う。」

上から高杉、乙夜、百鬼と順番に言いながら絶えず動き回り、のっぺらぼうの攻撃をかわす。

「……と、いうか。確か死体って糞便と土と一緒に放置しとくと火薬になりませんでしたっけ。」

周囲にふと火薬の鉄くさいような匂いがして、サッと二人の顔から血の気が引く。

「どうすりゃいいんだよぉぉぉぉ」

苛立ちから高杉が叫び声を上げている。

「気持ち悪いのも早く帰って寝たいのもわかりますけど、とりあえず落ち着きましょうよ、高杉さんっ」

確かにのっぺらぼうというのは気持ち悪い。肉塊で、もともとは墓場に出る妖怪だ。

それも悪鬼になったことで腐敗が進みドロドロのぐちゃぐちゃ。

素手でも武器で間接的にも触りたくはない。

……それなら、素手で触らなければいいんじゃないか?

「……高杉さん、呪符。」

のっぺらぼうの攻撃をかわしつつ後退し、ぼそりと呟くと高杉がピタリと動きを止める。

「あ、なるほどな」

さも名案とばかりに手を叩いた高杉は懐から文字の書かれた紙を引っ張り出した。

「た、高杉さんどうしたんですか、それ……」

手に持っているのは所謂、お札とかそういった類の物。……呪符と呼ばれる物だ。

「賭博場に殴り込みに行った時巻き上げて忘れてたんだよ。」

持ってることは知ってたが…持ってるなら忘れんなよ。

「賭博場……て、それ隊規いはn

「桂さんや土方さんが知らないわけない。」

ですよね。と呆れた風体の乙夜を尻目に高杉は札を全て出す。

陰陽師が主に使う呪符。書かれた文字自体に力と意味があり、これは先ほども高杉が言ったが、先日の非番に高杉が賭博場で大勝ちして巻き上げた物だ。

もちろん本物で札にはきちんと一つずつ文字が書かれており、その上周到な事に使い方も聞いてきたらしい。

そのことを誇らしげに周りの隊士に言いふらし、その後それがバレて土方と桂から大目玉を食らっていたのをよく覚えている。

「こんなとこで役にたつとはな」

ふっと笑う高杉に呆れの溜息をもらしつつ俺は完全に後方に下がる。

「だが、これもまた運命だ!高い飯だ、たーんと食いな。人なる物よ塵となり消え去れ、呪符六符」

口説を高らかと叫びそれと同時に呪符を投げる。呪符は紙とは思えない早さで飛んで行き、のっぺらぼうに張り付くと途端に周りを淡く青い炎で囲み、なんとも言えない状態を生み出す。

のっぺらぼうは確かに燃えているのだが、同時に投げた呪符に結界を張るものもあったのか臭気はなく、その完成度の高さに思わず、ほぅと感嘆の息が漏れ、俺は燃え切るまでその様子を見続けていた。














===アリガ・・・・・トウ・・・===







耳が聞こえるはずの無い声を拾った気がして揺れる。

「…あぁ、終わったんか。」

屋根の狐はそう言って月夜の道を見下ろした。

「なぁ、聞こえたか、お館様。これが人間じゃ。お館様が嫌った者達と変わらんこやつ等に価値なぞあるかいな。」

誰に言うでもなく道にいる三人を見下ろし、狐は呟いた。

その目は、紺色の髪をした青年に向けられているように見え、しかし視線はすぐにそらされる。

「まぁ…今回は人間にしては、えぇ、働きしてくれたようやし、アイツにも何も言いませんがね。でも、いずれは……」



紺色の青年が屋根を見たが、そこには何もいない。

ただ、風が通り抜けるのみ。

「……。」

「あ?どうした、百鬼。」

同僚の声で、俺は視線を屋根から戻した。

訝しげな視線をよこす乙夜を見返し、俺は何でもないように呟いた。

「…眠い。」

「は?」

「寝る。帰る時起こして。」

そのままスタスタと民家の土塀に身を預け、旗を抱えると寝る体制に入った。

とたん聞こえるのは、慌てた声。しかし、俺は完全に無視を決め込んだ。

「え、あ、ちょっと待て!!」

「やめとけ、もう寝てる。」

先にのっぺらぼうの検分に入っていた高杉が、こちらのやりとりを横から聞いていたのか制す。

乙夜は諦めきれないようにこちらを見ていたが、やがて諦めてくれた。


……主らの事情は知らんと言わんが、外から客観的に物事を見ることも大事だとおもうのだがな。


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