縁の下の力持ちが尊い
7.縁の下の力持ちが尊い
さて、防具が揃うといよいよポジションを決めることになった。
鬼塚先生から、1年7組の教室に集まるようにいわれ、放課後全員がぞろぞろと集まってきた。
司令塔となるクォーターバックは、高貴と和田、その女房役のセンターは丸山に決定していた。足の速い速水と、体の小さい小池がランニングバック、背が高くスマートな山中がスプリットエンド、バレーボールをやっていて、球の扱いがうまく体も大きい広山と、細田がエンドになった。そして、体の大きい大石がタックル、残ったポジションのガードに赤木と川島がなった。
ポジションが決まったところで、鬼塚先生が連中を前にしていった。
「今度は、キャプテンを決める。立候補するやつはおらんか」
鬼塚先生はしばらく様子を見ていたが、誰も手をあげる者はいなかった。
「誰もおらんのか、情けない。ほな、選挙やな。今から、投票用紙を配るから、これにキャプテンの名前を書け。ええな」
選挙ときいて赤木はなぜかほっとした。
鬼塚先生は、すぐに自分の持っていたノートをビリビリと荒っぽく手で破いて、連中に配った。
紙が配られると、赤木の後ろでみんながこそこそと相談を始めた。
(こいつら、何かたくらんどるな)
赤木はそう思った。
連中は配られた紙にキャプテンの名前を書いて、鬼塚先生のところへ持っていった。その紙を受け取って、順番に見ていった鬼塚先生は
「キャプテンはうしや。ほな、たのむで」
いとも簡単にそういった。
それから
「大学では、だいたいキャプテンはラインの連中がなっとる。なんでやわかるか」
鬼塚先生は連中に問いかけた。
「フットボールをやったことがないお前らにはわからんわな」
鬼塚先生は独り言のようにつぶやいた。
そして、一気にまくしたてた。
「フットボールで目立つのはクオーターバックとランニングバック、それにボールを受けるレシーバーや。そやからこいつらが主役やと思うやろ。これが、違うんやな。フットボールで一番大事なポジションはどこか知っとるか。
知らんはな。それはラインや。ラインが弱かったら、なんぼええランニングバックがおっても走られへんのや。ラインがランニングバックの走る道を作ったっとんのやからな。
ラインが強かったら、へなちょこのランニングバックでもタッチダウンが取れるんや。
ええか。ラインは目立たんけど、縁の下の力持ちなんや。そやからラインがリーダーシップをとるチームは強い。
目立つ花形がリーダーシップを取ったら、ラインの影の苦労がわからんから、うまくいかんのや。
あいつばかり目立ちやがって。そんなことを思うやつがおったらあかんのや。お前らは人間ができてへんから、間違いなくそう思うやろな」
鬼塚先生もラインだったので、ことのほかラインに思い入れがある。
赤木はキャプテンになった。
(なんで俺やねん)
最初赤木は少し憂鬱な気分になった。
が、鬼塚先生の話を聞いて、まあ、やれるだけやるか、そう思い直した。




