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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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情報屋サークル

〈情報屋サークル〉

【???】

「ちょっといいか」

”瞬間”とは何とも便利な能力だ。

しかも青空の心の”カギ”を預かってるから、どこにいても一瞬で到着できる。

【???】

「こ、こほんッ!な、何かな」

偶然にも見られたくない時だったことはどうでもいい。

カギを掛けていなかったコイツが悪いのだから。

【???】

「物語を創るって、楽しくないことだと思うか?」

真面目な話をすれば、真面目な答えが返ってくる。

【???】

「わからないねぇ。ってか、だからいるんじゃん」

【???】

「確かにそうだな……」

青空と自分を繋ぐモノ。

それは、お互いが同等の距離間にいれてることだ。

どちらかが一歩先をいけば、自分も行ける。

正しくは、待ってくれてる。

そうやって、バランスのとれた距離間を、駆け引きで維持してきた。

【???】

「そんなことより、学――つばめちゃんになに言われたの?そっちの方が気になるぜよ」

【???】

「……それがな、聴いてくれ。一緒にいようと言われた」

予想どおりの展開に、ちょっくらからってみる。

【???】

「や、やっぱりッ!?試験の時から怪しかったんだよね~」

【???】

「んで、何て答えたん?」

【???】

「うん、まぁ。自分がこの大学に入学できたのは学長のおかげだし、前向きに考えさせて下さいと」

【???】

「ま、待てッ!早まるんじゃないッ!」

【???】

「た、確かに、神代でも”パートナー”を見つける重要性は無視できないよ。しかもだよ。私という存在がありながら、その結果には納得できないよぉ~」

パートナー――人間物語では物語の進行上、男と女に該当する。要は、永遠を誓う相手のことだ。

神代も現代同様、法律が定められていて、何かと縛られる。

【???】

「なぜ?でもってお前が?」

【???】

「うえ~んッ!巫女ちゃんがいじめる~ッ!」

【???】

「んなことより知ってるか?自分らのゼミの先生と学長はパートナーだってこと」

手ぶらでは帰らない。得られた唯一のお土産だ。

【???】

「もっち」

【???】

「さすがだ。『明け』の明星を断念して情報屋になれば?」

本当は仕入れているだけで、情報屋は裏にいるんだろうが。

【???】

「仕入れてない。全部自分仕込みだよッ!がってんッ!」

【???】

「……がってんの意味はいまいちよくわからんが、そうだとしたら才能あるって」

このぐらいのさきどりならコイツにも予測はつくというわけか。

【???】

「(……案外、筒抜けかもな)」

急にテンションが下がる。

【???】

「上げてみせようホトトギス。誠に勝手ながら、情報屋サークルに決めちった♪」

【???】

「は?いきなりサークルの話?」

【???】

「……でもって、『誠に勝手ながら』という言葉がやけに引っかかるんだが、それは自分の取り越し苦労だろうか」

【???】

「ご察しのとおり。私は部長で、巫女ちゃんが部員。ってなわけで、これから部長と呼んでくれたまえ」

【???】

「お前が部長……だと?」

【???】

「なんだい?部員♪」

【???】

「……その呼び方ヤメろ。そして勝手にキメるな」

コイツの悪い癖でもある。

相手の承諾無しにとんとんと話を進めていく、いつもの流れ。

そしてそれは、有無を言わせない。

【???】

「断固拒否する。自分は自分の選んだサークルでやりたい」

【???】

「どこなの?」

【???】

「………」

【???】

「あ、青空同好会ッ!で、でいいんじゃねぇッ!?はは」

【???】

「ありゃ、ダメだ。青空を完全にナメてる。入部しても何も得りゃしない」

完全に自分の落ち度である。

咄嗟の思いつきは悪い流れに向かい、返って説得力を増大させた。

【???】

「第二希望は?」

【???】

「………」

【???】

「……な、ないかなッ!にゃは♪」

【???】

「んじゃ決まりで♪」

【???】

「ヤダ」

【???】

「……おいおい。何も考えなしに情報屋サークルに勧誘してるわけではないのだよ。それなりの意味があって言ってるわけ。わかる?」

【???】

「それにね、巫女ちゃんは演芸部に入ってくれなかったから一緒にできなかったし」

急にふてくされた態度を取り始めた。

この追い撃ちは、ますます自分を窮地に追いやった。

【???】

「……なに言ってんだ。クリクリだけで十二分だったろ?自分が入り込む余地なんてどこにもなかった」

『現代篇:新馬 紅里子 役(青空の妹的存在)』

入学試験の中で、自分らが通ってた桜麗学園の演芸部に所属していた。

『コンビ名:おてんば姉妹』として漫才や悪事(イタズラ程度)が主な活動内容だった。

クリクリが今やどうなったかなんてどうでもいい。

【???】

「……つかぬことをお尋ねしますが、いつからクリクリと呼ぶようになったの?」

【???】

「ノーコメントで。それより、考えを聴かせてもらおう」

どうせ入部することになるんだ。

この話を持ち掛けられた瞬間、自分の敗北は決まっていたのだから。

【???】

「端的にいえば、表向きは大学やサークルの紹介。取材して得た情報を内外問わず、いけるところまで垂れ流す」

【???】

「うんうん。続けて」

【???】

「しかし裏では、得たい情報をさりげなくゲッチュ♪様々なサークルを間近で見物できるから、あたかも部員のような錯覚に陥ること間違いなしッ!」

【???】

「オォッ!」

【???】

「こりゃお客さん。見逃せませんでッ!しかも一回限りのオファーッ!早速お買い求めを」

【???】

「買ったッ!」

【???】

「……いやはや、悔しいが確かに盲点をついてる。取材という名目で、いても違和感無いし」

【???】

「お前が部長と言ったな?ってことは、新しく作る気か」

新入生用の資料にじっくり目を通すほどの集中力はなくても、その情報だけで大抵は飲み込める。

【???】

「とりあえず、お前が部長でいいぞ。異議はない」

【???】

「よろしゅうござんすね。よろしゅうござんすね。それでは、」

【???】

「明日早速、学長に直談判だッ!」

【???】

「……明日もまた会うんかい。何か気が引ける」

【???】

「善は急げ。急がないと『明け』の明星行きの列車に乗り遅れちゃうぞ♪」

【???】

「へいへい、りょーかいしやした」

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