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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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強大な敵

〈強大な敵〉

【大学図書館職員】

「――そろそろ、感想を聴こうかしら」

【カズ】

「……え?あぁ、すいません」

【カズ】

「勝負すらさせない。戦意を完全に失わせるところ」

【カズ】

「『対と三竦』に、所謂繋ぐ為の役割を担わせたのは正直驚きましたが……正真正銘、最低限以上の干渉を嫌うタマの持っていき方です」

【大学図書館職員】

「これほどレベルの高い間違い探しは他にないわよね?」

【カズ】

「とは思います」

【カズ】

「状況再現――いや、そもそもの対象物がないのにどうして創れるんだか」

【カズ】

「やはり未来を見渡せていたんだなと。乱数云々の話じゃなかった」

【カズ】

「あいつは今も、目の前にある無数のネタの中から自分が好きだと思う物を選んで生きる生き方はしてないってことですね」

【大学図書館職員】

「”好き”と”利用”はどう違うのかしら?」

【カズ】

「”言葉”という黒幕にハメられるだけですよ?」

【大学図書館職員】

「………」

【大学図書館職員】

「そうね。やめとくわ。切り口を変えましょう」

【大学図書館職員】

「一秒という時間だけで、一体どれほどのシナリオが存在するか。しかも同時よ?無数よ?」

【カズ】

「そりゃタマは確率で生きちゃいませんから♪」

【大学図書館職員】

「絶対的をやって魅せた。思い出すだけであの時の衝撃が蘇ってくる。パフォーマンスに見合ったスタンディングオベーションだったわ」

【カズ】

「ようやく安心できましたね。実は自分もなんです♪」

【大学図書館職員】

「……でもね、知っていつか忘れられる現実じゃないのよ」

【大学図書館職員】

「そこへあのブーイング、でしょ?」

【カズ】

「自分に対する期待を故意に遠ざけた……?嫌われ者になりかわった……?」

【カズ】

「陽動ですか」

【???】

「誰もが誰も敵とまでは言わないけど、大抵目の当たりにしてる。だから心のどこかで期待は眠ってるの」

【カズ】

「………」

【カズ】

「やっぱすげーや。あのツンデレ」

【カズ】

「期待が確立するギリギリ手前で自ら奈落の底に堕ちるとはなぁ……」

【大学図書館職員】

「もう、あなたたちだけの存在ではないのよ。気の毒だけど」

【カズ】

「……くっくっくっ、にゃろう立つ気満々じゃねぇか」

【大学図書館職員】

「え?」

【カズ】

「タマが決めることです。自分でもない」

【大学図書館職員】

「………」

【大学図書館職員】

「……あれ、神童くん?右の方の脇の下、ゴミついているわよ」

【カズ】

「二兎を追わせて二兎のどちらかを選ばせてあげるなんて寛大だとは思いません?」

【カズ】

「期待対象はタマではなく、あくまでタマを否定する自身に持ってもらいたいということですね」

【カズ】

「最も近い絶対的な答えがあって生きるのは、どんなに楽なことでどんなにつまらないことか……」

【カズ】

「絶対的な答えを知らずに生きるのは、どんなに辛いことでどんなに面白いことか……」

【カズ】

「答えは原点回帰をさせたがってる。ですよね春夏先生♪」

【大学図書館職員】

「恩師に贈るプレゼントとしてはピッタリね」

【カズ】

「さーせん。遅くなりやした♪」

【大学図書館職員】

「私は何を贈ろうかしら?」

【カズ】

「この大学の職員選考基準について」

【大学図書館職員】

「唐突ね。教授にでもなるつもり?」

【カズ】

「まさか。なれるとしたらタマぐらいですよ」

【大学図書館職員】

「………」

【大学図書館職員】

「まあいいわ。お返しに私も一つアドバイスを贈らせて」

【大学図書館職員】

「恐らく、この瞬間もどこかに連れていかれてると思うの」

【大学図書館職員】

「いいこと?死が存在しない分、神代では”けしかけ”にも気をつけなさい」

【大学図書館職員】

「気付いたら現代に……なんてオチはヤメてよ?」

【カズ】

「くッ!何だというんだ。このもどかしさは」

【カズ】

「けしかけ?そこはいざないでいいだろうがッ!」

【カズ】

「自分がしたいことをやって出た結果じゃないかッ!」

【カズ】

「なのに。求めていた現実を素直に喜べないのはどうしてなんだろう……」


【カズ】

「(自分はお前を直感で選んだ)」

【カズ】

「(……ああ、一目惚れともいう)」

【カズ】

「(でも好きとか嫌いとか、そういう理由で決めてない)」

【カズ】

「(比較意識を持たないで想い、気持ちを伝えるのがさ、本来のあるべき姿ではあるけど、そう現実は甘くなかったよ)」

【カズ】

「(努力はした。けれど……はは、どう例えればいいかな)」

【カズ】

「(生まれたての赤子同士が何も知らず一緒になるような馴れ初め?互いの存在しか知らないところから始めたかったというか……)」

【カズ】

「(じ、自分じゃうまく言えないけどッ!)」

【カズ】

「(主人公やくしゃだけが唯一逃れられるじゃんか)」

【カズ】

「(それってさ、それだけはさ、いくら求めてもナメられてないよな?)」

【カズ】

「(生きて……本当にいいんだよな?)」


【カズ】

「……くっくっくっ、にゃろう勝つ気満々じゃねぇか」

【カズ】

「同時に二兎を追わずして二兎とも獲てしまうこの感覚を今か今かと。ねぇ~」

【カズ】

「確かにこんな現実は自分に見合ってないな」

【カズ】

「自分じゃない」

【カズ】

「………」

【カズ】

「(……くるなぁ。それも想像してなかった強大な敵)」

【カズ】

「あいつらに逢いたい。今すぐ」

【タマ】

「……部長ももうじき来るぞ」

【カズ】

「タマ……?」

【タマ】

「………」

【カズ】

「サークル絡み……?」

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