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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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いつものあたし

〈いつものあたし〉6月24日木曜日

【タマ】

「………」

【カズ】

「おッ!早いな。もう立ち直るとは。さすがはタマだ」

【タマ】

「……気持ちを確認したい」

【タマ】

「……無様なあたしをみて幻滅したか?嫌いになってくれたか?」

【カズ】

「まさか。永遠に嫌うことはないよ。自分はお前と出逢ったんだから」

【タマ】

「……出逢ってしまったな」

【カズ】

「ああ。出逢ってしまった」

【カズ】

「だからってストーカー呼ばわりするなよ。そんなんじゃねぇから」

【タマ】

「……その先手なら誰だって打てる」

【カズ】

「………」

【カズ】

「いいから話せっての。自分に話があって教室に一番乗りしたんだろ」

【タマ】

「……どうだろ。あたしもいつものあたしに戻れるかな」

【タマ】

「……大学にどれくらいいられるか不透明になった以上、あたしが後期にいなくなるという現実も自動的に無くなった。と同時にソラが予定していた後釜探しも消えたわけだ」

【カズ】

「……後釜、ねぇ~。へっ、契約社員を雇って得をするのは青空ぐらいだ。思いっきりナメてやがんな」

【タマ】

「……ソラは契約社員にお前のお守りを任せるつもりでいた」

【カズ】

「はは、まぁらしいっちゃらしいが。青空が別行動したい理由は?」

【タマ】

「……昨日の会見が物語ってるように、今年度の明けの明星コンクールは過去に例を見ない激戦が繰り広げられるのは当初から必至だったんだ」

【カズ】

「………」

【カズ】

「……はいはい。ご予定にはしっかり組み込まれていたわけね。でもその話はもうたくさん」

【カズ】

「最高責任者の座が空席になった今、自分を売り込んで一気にのし上がる絶好のチャンスだってんだろ。しかも裏神代が絡んで――」

【タマ】

「……そこをソラが今も狙ってる」

【カズ】

「え?」

【カズ】

「い、いやッ!待てよッ!待ってくれッ!」

【カズ】

「あの時コンクールを辞退するとか言ってたよな?負けを認めますって……どういうこったい?」

【タマ】

「……嘘っぱち」

【カズ】

「優勝宣言」

【タマ】

「……裏神代出身」

【カズ】

「あいつは甄別した」

【タマ】

「……ソラが昨日送ったあの言葉。あたしじゃなくて本当はお前宛てだったりして」

【カズ】

「相当の自信があるんだな」

【タマ】

「……相当キレてるな」

【カズ】

「どうでも」

【タマ】

「………」

【タマ】

「……カズ。いいか。信じたい気持ちだけで現実は創れないんだよ」

【カズ】

「いや創れるね」

【タマ】

「……はぁ~」

【タマ】

「……まったくもうあたしとしたことがなにやってんだか」

【タマ】

「……合格発表当日、掲示板に張り出された受験番号を何度も確認してる感覚だよ」

【カズ】

「お前がわざわざ?まだいつものタマじゃねぇな。テスト問題の答えを最初にするか後に出た答えにするか迷ってるようじゃ」

【タマ】

「……お前はどうする?あたしは識別番号を偽装できた経緯をより踏み込んで探ってみるけど」

【カズ】

「二兎を追いたいならそうすればいい」

【タマ】

「……それを言うなって。早いとこソラを手引きした神代政府職員の存在を暴かないと構想を立てられないんだから」

【タマ】

「……あたしは……伝えたぞ」

【カズ】

「はて、自分は何ができるかな」

【カズ】

「………」

【タマ】

「……今年度の明けの明星コンクールだけは無視できない」

【カズ】

「前年度優秀賞者が展望を語る――ありがとな。これで知る意欲が湧いてきた」

【タマ】

「……出逢わせてやったんだから知ってくれよ」

【カズ】

「わかんねぇかな?知りに行かないから神生おもしれぇんだ。知りたいことだけ求めればいい」

【カズ】

「”知識”なんて輩はな、遭遇した直後に相手するかどうか決めるんだよ」

【タマ】

「……どうでも。お前の屁理屈はいつものように絶句させた」

【タマ】

「……知れ。あたしが明けの明星を目指さざるおえない本当の現実を」

【タマ】

「……逃げるなよ?」

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