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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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常会

〈常会〉6月15日火曜日

【ソラ】

「『皆さんこんにちは。青空報道同好会部長を務めますソラです』」

【ソラ】

「『私は今、つい先ほど会見を終えたばかりのタマさんの部屋の前にいます』」

【ソラ】

「『はいそうです。独占インタビューに成功したのですッ!』」

【ソラ】

「『そして前もってお伝えしときますが、禁止事項等も一切御座いません。本音をぶつけることを皆さんにお約束致します』」

【ソラ】

「『では早速、中に入ってみましょうッ!』」


【ソラ】

「『えー、まずはインタビューに応じて頂き、ありがとうございます』」

【タマ】

「『……あたしが力になれるのならば』」

【ソラ】

「『いやぁ~、さすが世渡り上手。メディア慣れしてらっしゃる。やることも尋常じゃない』」

【ソラ】

「『私も他のことを言えませんが、あなたが神代に入れてること自体不思議でなりません』」

【タマ】

「『……というと?』」

【ソラ】

「『神代政府を弱体化させたあなたの意図がどこにあるのかぜひお聞かせ下さい』」

【タマ】

「『……政府という存在は、自分を否定されても舞台を護る愛国心の集まりで成り立つと思ってる』」

【タマ】

「『……それがどうだ。果然裏切ったあたしを逆恨みして自分のプライドを護ろうとしてるんだ』」

【タマ】

「『……寿命を縮めて正解だったよ。未練があっても延命治療なんて受けさせやしない』」

【ソラ】

「『相変わらずキツイお言葉……を選ぶのはお察し致しますが、それでは答えとして不十分ですね』」

【タマ】

「『……フッ。何が言いたい?』」

【ソラ】

「『ズレは早めることで修正できたのか。つまりは骨の髄まで痛めつけ、すぐにでも自分がのし上がろうとしてるのか』」

【ソラ】

「『はたまた、裏神代に向かって餌をぶらさげ、食いついたら最後、あなたが一網打尽に喰らう両政府の末路を心待ちにしてるのか。どうです?』」

【タマ】

「『……あたしは両政府に脅しをかけた。どちらの味方でもないってことだ』」

【タマ】

「『……あたしは三代三竦作品を完成できればそれでいい。国宝級の犯罪者にだってなれる。カズやお前を裏切ることだってできる』」

【ソラ】

「『………』」

【タマ】

「『……質問の答えに相違があったか?』」

【ソラ】

「『いえいえ、駆け引きをどうかお許し下さりたく――なにぶん今の立場も果たしたい一心でありまして……』」

【タマ】

「『………お前が我慢できないって?冗談だろ』」

【ソラ】

「『……今この場でコンセプトを語って頂けないのなら、ベールを脱がして差し上げますが?』」

【タマ】

「『……神代から現代。現代から新代という三代に渡る現実作品を指す』」

【ソラ】

「『知ってますとも。だからこそお尋ねします。時期尚早では?現代の主人公が親になるなんて発想はとてもとても……』」

【タマ】

「『……わざとらしいぞ。それは主人公の責任じゃないし、創る側の問題。あたしが決めること』」

【タマ】

「『……迷いもない。神を存在させなければ現代も新代も成り立ってくれるんだからな』」

【ソラ】

「『………』」

【タマ】

「『……悪い。補足しよう』」

【タマ】

「『……さも自分の意志であるかのように生かす』」

【タマ】

「『……創る側がネタを作り、生かされる側がシナリオを作る。今も昔もこれからもそれは変わりはしない』」

【ソラ】

「『”3”という数字にそこまで拘る理由は?逃げてないでさっさと説明責任を果たして下さいな』」

【タマ】

「『……悲しいだろ?選択の余地が無いのは』」

【ソラ】

「『裏を返せば正三角形は描きつつあるんですね?』」

【タマ】

「『……ん~、どうだろうな。絶対的優劣を組み込むのは無謀で勇気がいることだから』」

【ソラ】

「『す、すいませんッ!ここで改めて整理させて頂きたい』」

【ソラ】

「『まだシミュレーションの段階で、タマさん自身に完成という認識はないということですか?』」

【タマ】

「『……そうだ。ジャンケンは無視できない』」

【ソラ】

「『じゃんけん?』」

【タマ】

「『……組み合わせは何でもいいが、今回はグーを挟み撃ちにしようと、チョキとパーが手を組んだとする』」

【ソラ】

「『は?』」

【ソラ】

「『……いきなりやる気になったと思えばジャンケンだぁ?馬鹿馬鹿しい。全ては複雑でややこしく、曖昧で成り立ってるというのに』」

【タマ】

「『……お前が思ってる以上に案外単純なのかもしれないぞ』」

【ソラ】

「『……私は面倒みきれない。気が済むまで続ければ?』」

【タマ】

「『……それぞれの思惑は安易ながらもこう読み取れる』」

【タマ】

「『……グーはパーに勝てない。チョキに倒してもらう必要がある。よってグーはチョキと手を組みたい』」

【タマ】

「『……パーはチョキに勝てない。グーに倒してもらう必要がある。よってチョキを裏切る可能性は否定できない』」

【タマ】

「『……チョキは既にパーと組んでる。よってパーにグーを倒してもらえば……』」

【ソラ】

「『……甘い。甘過ぎる。そんなのグーもパーも許さないっての』」

【タマ】

「『……頼りにしてる。だが、もう一つ付け加えることで盤石の基盤を築ける』」

【ソラ】

「『それはズバリ何ですか?』」

【タマ】

「『……他ができるのに自分はできない。自分ができるのに他はできない』」

【タマ】

「『……言わなくても解るだろ?あたしもまた劣等。劣等なんだ』」

【ソラ】

「『………』」

【タマ】

「『………』」

【ソラ】

「『……タマさんすいません。どうやらお時間がきたみたいで』」

【ソラ】

「『今回は独占インタビューに応じて頂き、ありがとうございます』」

【タマ】

「『……ギャラはいつもの口座に頼む』」

【ソラ】

「『はは。まだ回ってるんですけどね……』」

【ソラ】

「以上。青空報道同好会活動報告を終了します」

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