いつもの私
〈いつもの私〉6月9日水曜日
月に一度、各々の部長が集う定例会。
本来なら副部長であるタマが、部長の青空と同行するのが筋である。
【文化団体連盟長】
「いいかお前らッ!夏期休業が終わったら、あっという間に学祭の日を迎えるぞッ!」
【文化団体連盟長】
「出店希望サークルは専用用紙に記入し、来月の定例会までに提出するように」
【カズ】
「………」
【カズ】
「(……よしッ!時間差でもなさそうだ)」
・
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【カズ】
「仕返しのつもりなのかッ!?留守番係は何か用意しておくのが筋だろうがッ!」
【タマ】
「……バーカ、ソラをよく見てみろ。とても祝う雰囲気じゃないだろ」
【カズ】
「……はぁ~。そこは汲んで乗れよ。乗ってくれよ。乗るものなの」
【タマ】
「……振る相手を間違えてるんだよ、カズ」
【カズ】
「………」
【カズ】
「……やれやれ。自分だけ悪者にする気かよ」
【カズ】
「あ~あッ!何かよ~、青空の小話でも聴きてぇ気分だ」
【ソラ】
「『あっ、ちょっとすいませんッ!』」
【ソラ】
「『道をお尋ねしたいのですが……少しよろしいですか?』」
【ソラ】
「『いやぁ~、不慣れな土地はやはり迷子になりますね。これも方向音痴って言うんでしょうか、はは……』」
【ソラ】
「『……ねぇ、答えて。あなたは神代出身なのに、どうして裏神代の地を踏むことができたのかを』」
【???】
「『………』」
【ソラ】
「『………』」
【ソラ】
「監査委員長はハメる相手を間違えたよね。どうして、どうして私なんだか」
【カズ】
「興味本位で呼び止めたから」
【カズ】
「でもそれはもういい。済んだことだ。その現実を否定することはない。今はしっかり受け止めてだな――」
【タマ】
「……見破られてプライドはズタズタ。致命的だよ、ソラ。率直に言ってな」
【ソラ】
「ふむ」
【タマ】
「……あたしのみならず、カズまで危険に晒した。お前の”自覚”は、どこに置いてきた?」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「それがそうじゃないんだなぁ~」
【タマ】
「……なにぃ?」
【ソラ】
「望んで自身を厳しい環境に置く」
【ソラ】
「その勇気が、奥底に眠っていた潜在能力を覚醒させる働きをして、栄光を手にする主人公も大勢いる」
【ソラ】
「なりそこないも可能性を夢見るルートがお好みなのかなぁ」
【ソラ】
「タマの考えが聴きたいねぇ」
【カズ】
「ッ!?た、タマッ!」
【カズ】
「こ、これ以上青空を刺激させるなッ!ここは抑えろッ!」
【タマ】
「……いつから、指図できる立場になったんだ。ソラはあたしも同類と言ったんだぞ」
【カズ】
「だからって、酔ってる相手にそこまでムキになることはねぇ。一線だってまだ越えてない」
【タマ】
「……ガキをよーく見てみろ。いつだってこんな気分を振り撒いてる」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「もういいんだよ。もう、巫女ちゃんにもタマにも迷惑をかけない」
【ソラ】
「くっくっくっ、この感覚。何だか、久しぶりかも。負けないと知ってるのに、勝負は避けられない現実は」
【ソラ】
「常会でメッセージを送る」
【ソラ】
「そしたらいつもの私に戻れる。約束する」
【タマ】
「………」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「点と点が在ればいつかは線で結ばれるんだよ?早いか遅いかだけのこと」
【ソラ】
「イヤなことは早く済ませた方がいいでしょ?」




