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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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マスコミの醍醐味と心理学+巫女ちゃん

〈マスコミの醍醐味と心理学+巫女ちゃん〉6月4日金曜日

【カズ】

「にしてもおせぇな。青空のヤツ」

【タマ】

「……勘弁してくれよな。待つのは嫌いだって知ってるだろ?読み間違いならあたしは帰――」

【カズ】

「いやいや、一瞬も待ったつもりはないから。わかりやすいヤツだなぁお前も」

【カズ】

「先にお邪魔すんだよ」

【タマ】

「………」


【タマ】

「……はじめてだな、ソラの家は」

【カズ】

「お前が第一声に畏まりを選ぶって……緊張でもしてんのか」

【カズ】

「まぁいいや。適当に寛いでくれ。今チェックしてくるから」

【タマ】

「……おい」

【カズ】

「見て見ぬふりするから物色してもいいぞ。青空の裏を知る唯一のチャンスかもしれないし」

【タマ】

「……何の話だよチェックって?」

【カズ】

「あぁん?決まってんだろ。いちいち訊くな」

【タマ】

「……だから、な、何だよ?」

【カズ】

「自分らがここに来ることは判ってたはず。ってことは、持て成す準備がされていて当然」

【カズ】

「お前だって本当はそうなんだろ?だったら見え透いたボケはやめろっての」


【カズ】

「ったく何もありゃしねぇ。こんなに散らかってるってのに」

【タマ】

「……私物が多いだけだろうが。お前と違って綺麗に整頓されてる」

【カズ】

「そういう用意しかしてねぇところが何とも憎たらしいっていうかぁ」

【カズ】

「もう自分が用意するわ。何がいい?」

【タマ】

「……なぁ、カズ」

【カズ】

「ん~?コーヒーじゃ不満け?愛好家なんだろ」

【タマ】

「……あたしは”女”寄りなのかな?」

【カズ】

「………」

【タマ】

「まぁ……その、なんだ」

【カズ】

「比較すれば解決できる悩みをわざわざ訊くってことは、自分の真剣な答えを求めてるんだな。ほらっコーヒー」

【タマ】

「……あたしはいつだって真剣だ」

【カズ】

「いいかタマッ!」

【タマ】

「……とりあえずイスにつけって。それとバイオリズムを大至急整えろ」

【カズ】

「青空の挑発ごときに惑わされてんじゃねぇッ!」

【タマ】

「……聞こえてないか。それとも――」

【カズ】

「バイオリズムは常時安定なんだからさ」

【タマ】

「……それをお前が言うか」

【カズ】

「そうそれ。それなんだよタマ。特別意識はないんだろうが、そういう返しが青空にイジラれる口実を与えてる」

【タマ】

「……どうして演技だとは考えない?」

【タマ】

「……気があると思わせればあたしは意のままに操れるんだぞ」

【カズ】

「させられてないから調子付かせんだよ」

【カズ】

「……しかも青空は人間物語を経験してる。熟知してるんだ」

【カズ】

「はっきり言って今のところ、お前が自分や青空に気があるとは到底思えないし、お前が誰かに心を許すなんて誰も思ってないだろう」

【カズ】

「それでもいずれは心を許すことになる」

【カズ】

「青空がいないとダメって言わせてやる」

【タマ】

「……またその下りか。もう聞き飽きた」

【カズ】

「まだまだ足りねぇぐらいだよ」

【カズ】

「自分は他と違って、叶いもしない目標を掲げた哀れな生き方はしないし、夢を語るのはできるって本当に信じてるからだ」

【カズ】

「よーく、よく覚えておけ。全てを上書きしてでも」

【タマ】

「……いーや、お前こそ覚えておくんだな。自分を後悔させる前に」

【タマ】

「……あれ?そういえばタマに昔言われたっけ。永遠に信じられると自分に言い聞かせてるだけだって」

【タマ】

「……いい加減話の場だけでも設けてやれよ。それだけで――」

【カズ】

「……しつけぇなぁ。説教してぇんならずっとそばにいればいいだろ」

【カズ】

「その代わり嫌でもニンジンを食わすけどな♪」


【タマ】

「……いいよ」

【カズ】

「え?」

【タマ】

「……ソラがいようがいまいが、あたしはずっとお前のそばにいてやる」


【タマ】

「(……この現実を選択すれば終わりを迎えられるのに迎えようとしないわがままな自分がいて)」

【タマ】

「(……あたしのどこかで拒んでる。蝕んでる)」

【タマ】

「(……終わりを迎えたくないなら)」

【タマ】

「(……終わりを迎えるようにすればいい)」

【タマ】

「(……くっくっくっ)」

【タマ】

「(……この難問。当分解けそうにないかな)」

【タマ】

「(……そう……だよな?自分)」

【タマ】

「……いいよ」

【カズ】

「え?」

【???】

「……タマがいなくなったとしても、私は巫女ちゃんのそばを一生離れない」

【ソラ】

「どう当たった?」

【タマ】

「……お互いにな」

【ソラ】

「景気はどうよ?」

【タマ】

「……ぼちぼちだ」

【カズ】

「あ、青空ッ!」

【ソラ】

「ちょい待ちッ!」

【ソラ】

「……タマきいてよ~。不覚にも私が先を越されちゃった」

【タマ】

「……再利用といっても、そこに立ち寄る必要なんて今更皆無だろ。あたしはノータッチだ」

【ソラ】

「話せば長くなるよ……」

【タマ】

「……なら聴こう。最低限でも重要ならばいくらでも時間を割く」

【ソラ】

「それは私が決めることなんだけど」

【タマ】

「………」

【ソラ】

「……”なりそこない”だって、なりそこないなりの保険は掛けておくものだよ」

【カズ】

「お前より先に裏神代に行ったヤツがいたってのかッ!?」

【タマ】

「……カズ」

【ソラ】

「情報源は私。待ち合わせ場所に向かう途中、偶然目撃した」

【タマ】

「……ソラ」

【タマ】

「……さっきも言ったけど、監査委員長の正体を暴いて何になる。理解できないよ。お前が一番判ってるはずだろ」

【タマ】

「……あたしなら花を咲かせて枯れるのを待つ。中途半端に腐敗の根を断ち切るより」

【カズ】

「お、おいちょっと待てってッ!お前らさっきから一体何の話をしてる……」

【ソラ】

「……手短に話すね。私達がこれから為すべきことを」

【ソラ】

「以前私が言った何たら会。正式には常会って呼ばれてるんだけど、予定通り6月15日に開催される」

【ソラ】

「簡単に言えば、私達は日頃こんな活動してますよって、紹介する場だね」

【カズ】

「それがどう関係してんだよ。何がしたいんだ?」

【ソラ】

「純粋にサークルを楽しみたいッ!」

【ソラ】

「青空報道同好会の諸君、今一度考えてみたまえ。副部長がやらかしたおかげでろくに活動できないじゃないか」

【ソラ】

「退学はイヤだ。誰が何と言おうとイヤだ。駄々っ子は巫女ちゃんだけじゃない」

【タマ】

「………」

【ソラ】

「何がしたいって?私達青空報道同好会が、どうすれば取材できるようになるのか」

【カズ】

「……はは、いきなし結論言っちゃおうじゃない。弱みを握って脅せばいい」

【タマ】

「……早速やる気満々だし。はぁ~」

【ソラ】

「もう一押し足りないね」

【タマ】

「……吐かれたら終わりだからな」

【カズ】

「んじゃお前らのどっちかが一工夫加えてくれや」

【ソラ】

「こういう時はね、マスコミの醍醐味と心理学+巫女ちゃんを使う」

【ソラ】

「とくりゃ前者は特ダネでしょ~♪」

【カズ】

「なるほど……特ダネを掴んだ上で心理学を応用するってわけだ」

【ソラ】

「じわじわ追い込むから手間は取らせない」

【タマ】

「……あっけなく終わりそう」

【ソラ】

「つまんないよねぇ~」

【カズ】

「くっくっくっ、お前らとなら何やってもおもしれぇよ」

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