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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
63/89

なされるならば

〈なされるならば〉6月3日木曜日

【コメンテーター】

「――ご理解頂けたのなら、強行調印の背景から語らせてもらう」

【キャスター】

「………」

【コメンテーター】

「両政府は、良心的にも耐え難いこの要求を受け入れるほどの弱みを握られた。同時にそれに取って代わる何らかの見返りがあった」

【コメンテーター】

「ただしそれは取引する上での条件の一部だった」

【キャスター】

「具体的にお願いします」

【コメンテーター】

「申し訳ないが、それは言えない。押し問答は相手の思うつぼになりますから」

【キャスター】

「………」

【キャスター】

「神現バランス崩壊の懸念は政府が公式に認める前から指摘されていましたが……?」

【コメンテーター】

「はっきりしてるのは、それだけではないと言うことです。たとえ、頼るしか道は残されていなくと――証神か」

【キャスター】

「い、今入ってきたニューズですッ!」

【キャスター】

「神代政府はつい先ほど、緊急会見を開き、調印のきっかけとなった証神を、明日釈放するという異例の声明発表を出しましたッ!」

【キャスター】

「繰り返します。神代政府はつい先ほど、緊急会見を開き、調印のきっかけとなった証神を、明日釈放するという異例の声明発表を出しましたッ!」

【コメンテーター】

「有権者が……」

【コメンテーター】

「無能な有権者がいくら全面的に支持した政府であったとしても、こうも好き勝手やらせていてはならないッ!」

【キャスター】

「………」

【コメンテーター】

「最期の足掻きでさえも……」

【コメンテーター】

「……心理状態が何とも気掛かりです」


【タマ】

「……はじめてみる専門家だな。妥協無きマスコミの情報網も存外侮れないじゃないか」

【カズ】

「………」

【タマ】

「……で、宿題はやってきたんだろうな?」


【タマ】

「……副部長が誰からも嫌われているせいで、サークル活動もままならない」

【タマ】

「……部長の言い付けは戻る前に解決しておいた方が身のためだろ」

【タマ】

「……どうするんだ?カズ」

【タマ】

「……以上お疲れ」



【カズ】

「……はは、昨日はお前に似合った仕切りぶりだったよ」

【タマ】

「……無駄が大嫌いなお前にぴったりだったろ」

【カズ】

「どっちが」

【タマ】

「……いま喜んでた」

【カズ】

「苦笑いだ」

【タマ】

「……それは知ってる」

【カズ】

「内心の否定も見抜いて欲しかったねぇ~」

【タマ】

「………」

【カズ】

「………」

【タマ】

「……まずまずだ。リズムもテンポも板に付き始めてる」

【カズ】

「何の話――だぁッ!?」

【タマ】

「……プッ。くっくっくっハハハハハッ!」

【カズ】

「……う~ん、いかん。またやっちまったくそっ……」

【タマ】

「……バーカ。調子に乗るな。お前みたいないつ地雷を踏むか予測できないド天然が、あたしやソラに近付くなんて永遠にあり得ないことだ」

【カズ】

「……まぁな。でももっと現実的な見方はできないのか?」

【カズ】

「明日になればみんな揃う」

【タマ】

「……プレゼントは用意しなくていいのかよ。期待してるんじゃないか」

【カズ】

「サプライズ返しはキザ過ぎる」

【タマ】

「……結果で正当化できない劣等がいつまでも偉そうな態度を取るなよな。虫唾が走る」

【カズ】

「嫌なこった。できねぇもんはできねぇ。勝手に走ってろツンデレ」

【タマ】

「……考えもしない。話題もこれといってない。結果、何もしない」

【タマ】

「……お前は待ってるだけのゴマすり野郎なのかよ」

【カズ】

「………」

【カズ】

「言ってくれんじゃん。効いたねぇ~、今のボディーブローは」

【タマ】

「……耐えられるのによく言うよ」

【カズ】

「もういいわかった。お前が食い付くような話題をフってやるよ」

【カズ】

「こんなにも世間を賑わせといて、どうしてお前らが退学にならねぇのか知りてぇ」

【タマ】

「……強がりめ。あたしにだって機嫌ってものがあるんだぞ」

【タマ】

「……いや、フったあたしが全部悪い。全部」

【タマ】

「………」

【カズ】

「な、何かお前、とんでもない勘違いを起こしてないかッ!?」

【カズ】

「自分はな、もっとこう他を思いやる優しい性の持ち主なんだぞ」

【タマ】

「……へぇ~、どこが?」

【カズ】

「自己中心に生きるってことは、一切の気を遣ってないってことだ」

【タマ】

「……あっ、それ使えるかも。あたしには酷だけど」

【カズ】

「あぁん?」

【タマ】

「……だって誰も取り合わないだろ。効率性を高められる」

【タマ】

「……色んなやり方があるんだなぁ。あたしが感心させられてる」

【カズ】

「た、タマ?お前いきなり何を言って……」

【タマ】

「……各々には必ず固有のリズムとテンポが備わっていてさ、それを狂わすのが創る側の仕事でもあるんだけど……」

【タマ】

「……中にはそれに気付いて、慌てて抵抗を試みる主人公。懸命に何かするその姿は醜くなんかない。愚かでもない。劣ってもない」

【タマ】

「……正直、響くよ。擽るよ。優れてるよ」

【タマ】

「……とは言っても、果たしてそれが自分に見合った現実なのか、最期まで曖昧のままだから、心のどこかで否定する気持ちがいつ出てきてもおかしくないと思うんだ」

【タマ】

「……結果、闇雲に罷り通ろうとするより、境界線上はいつだって安全確実に渡り終えるという結論に至る」

【タマ】

「……と、なされるならば……?」

【カズ】

「………」

【カズ】

「ッ!?ち、ちょっと待てッ!締め括りのオチだけはきちんと――」

【タマ】

「……政府の管理下に置かれる大学だから。そのくらい受験する前に把握しとけよな」

【タマ】

「……以上お疲れ」

【カズ】

「………」

【カズ】

「両手でバランス取れよ……タマ」

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