大学生活を楽しもう
〈大学生活を楽しもう〉6月2日水曜日
『独裁者、神代に現るッ!!その脅威の現実に我々は何を問われ、どんな答えを出すべきなのかッ!?』
【タマ】
「……ありがたい。あたしは優等だと、勝手に植え付けさせてくれるんだからな」
【カズ】
「………」
【カズ】
「お前が次にすべき最優先事項は出来る限り早く青空を連れ戻してくることだッ!」
【タマ】
「……乱れまくりだな。まずはそのブレを直せ。すでに手は打ってあるから」
【カズ】
「法律は無視できねぇと思うが?」
【タマ】
「……お前には話しておこう。変化後に蟠りが残っていては困る」
【カズ】
「いつもと感じが違うのは気のせいか……」
【タマ】
「……両政府とも、ソラが引き金になったと認めてる。接触を引き起こしたのは紛れもない事実だったわけだから」
【カズ】
「お前も……認めるだな」
【タマ】
「……何があってもすっきりさせたい両政府のトップは、やれるところまでソラを検査漬けにした」
【カズ】
「青空は夢遊病だと?」
【タマ】
「……お前でもわかるだろ」
【カズ】
「けれど突き止められなかった」
【タマ】
「……ソラは”曖昧”を利用し、それに転嫁したんだ」
【タマ】
「……全ての現象には全て理由があるように、何らかのやり方で向こうの地を踏んだ」
【タマ】
「……優等社会では常識だ。今日までの神代と自分の秘めるアビリティを照らし合わすことは」
【カズ】
「優等社会って……」
【カズ】
「……つまりこういうことだろ?時代にそぐわない現実ほど曖昧なものはない。対応しきれないから利用した」
【タマ】
「……ああ。ぬるま湯にどっぷり浸かって生きてきた連中によく効く入浴剤だよ」
【カズ】
「しかし、額面通りには受け取れないなぁ。そこまでの差が生じてるなら今頃神代は安泰だったはずだろ?」
【タマ】
「………」
【タマ】
「……ブレたのかと思えば、きっちり修正してくる点。どんな現実を突き付けられても平然と次を求める点」
【タマ】
「……滅多に出逢えないよ。お前みたいなやつ」
【カズ】
「褒める暇があるならさっさと教えてくれや」
【タマ】
「……神情と法律の鬩ぎ合いは見るに耐えないなぁ」
【タマ】
「……なぁカズ。あたしがこの前言ったことを覚えてるか?」
【タマ】
「……知る――その魅力を知って、手に入れてしまって、最後は支配されてしまうのが大抵のオチなんだ」
【タマ】
「……仮に免れても、遅かれ早かれ手を出してしまう。利用してしまう。それが主人公の性というもの」
【タマ】
「……どこに使うと思う?」
【タマ】
「……良心の呵責に悩まされはしない。そこまでの影響力を手にするとな」
【カズ】
「………」
【カズ】
「青空は神現の平和を目的としてないって?明けを……心から望んでいない?それがお前の出した確信的解釈か」
【タマ】
「……有権者」
【カズ】
「え?」
【タマ】
「……よく持ち堪えてる。現代ならとっくに大噴火だろうに」
【タマ】
「……でもようやく峠は越えた。実が生って安心した。蔓だけ育てても何の役にも立ってくれないから」
【カズ】
「………」
【タマ】
「……ソラは明後日戻ってくるよ。どこかで」
【カズ】
「贖罪なら素直に受け取れるんだがな……」
【カズ】
「……どんな方法でだ?」
【タマ】
「……あながち間違ってはないな。保釈という形で釈放される」
【カズ】
「くっくっくっ。さすがの青空も全面免責とはいかなかったか」
【タマ】
「……な、なに喜んでんだよ?」
【カズ】
「争点は青空が裏神代に情報を提供したこと。有罪の判決を受けるまでは無罪の推定が働くってわけだ」
【カズ】
「そもそも有罪かどうかも不確か。証拠隠滅の惧れも限りなく薄い。とはいえ今以上の厳重な監視下に置かれるのは必至」
【カズ】
「いずれは審議会に呼び出され、是非を問われる。その審判は今後の神代と裏神代の関係次第」
【カズ】
「という解釈でいいか?」
【タマ】
「……カズにしては上出来過ぎるくらいよくまとまってる」
【カズ】
「だがお前は違う」
【カズ】
「誰がどうみても脅迫じゃねぇかあのオチは。お前は許されない現実を創ってしまった」
【タマ】
「……だから?」
【カズ】
「………」
【カズ】
「自分だってブレちゃいねぇ」
【タマ】
「……それでいい。何が起きてもあたしを信じろ。どんな目で見られようと、自分を貫き通すんだ」
【タマ】
「……堂々としていればいいんだ。そう構えないで」
【カズ】
「くどいな。ネクタイはいつも曲がってるっての」
【タマ】
「……そうそう、今日からお前もちゃんとサークルに参加しろよ」
【カズ】
「………」
【カズ】
「おい……今何つった?」
【タマ】
「……大学生活を楽しもうって」
【カズ】
「そうじゃない」
【タマ】
「……サボった分はきっちり取り戻せよ、部員」




