タマが弱音?
〈タマが弱音?〉5月23日日曜日
【大学図書館職員】
「神代国語辞典ですね。今お取り寄せ致します」
【カズ】
「………」
【大学図書館職員】
「あの、どうかされました?」
【カズ】
「国語……」
【大学図書館職員】
「はい?」
【カズ】
「実は嫌いなんです。でもそれは、好きの裏返しでもあって……」
【大学図書館職員】
「はぁ……」
【カズ】
「そうそう、心情問題はいつも空欄で出してたっけ。それでも二番になれなかったけど」
【大学図書館職員】
「……大丈夫ですか?」
【カズ】
「だって解る訳ねぇもん。自分じゃあるめぇし、著者でもない。ましてや知りたくもない」
【カズ】
「曖昧だから曖昧さを磨く下準備みたいなもんはしたくねぇ」
【大学図書館職員】
「キャンセルしますね」
【カズ】
「あ、いや、完全な無関係でしたか。いえいえ、お願いしまーす」
【カズ】
「……う~ん、読み間違いはやっぱ気まずい雰囲気になるよなぁ」
【カズ】
「レポートの方もレポート方で仮定の課題ばっかりだし、好みでもいつかは向き合いきれなくなる」
”対のそれぞれの性質を独自の見解で仮定し、その因果関係を論ぜよ”
【カズ】
「………」
【カズ】
「気分転換でもすっか。何か注文しよう」
【???】
「……確かに。ソラの言うとおりだった」
【タマ】
「……心の鍵が空きっぱだったからからかいにきてやったんだけど。悪い邪魔だったな」
【カズ】
「………」
【カズ】
「いいから座れや」
【タマ】
「………」
【タマ】
「……お邪魔する」
【カズ】
「仰々しいな、おい。お前に笑いはとれねぇよ」
【タマ】
「……明――今日は休みだからな。大学。それで泊まり込みでやってんだろ?」
【カズ】
「終日開放に感謝すべきか?」
【タマ】
「……待遇はまだまだだ」
【カズ】
「おまけにカフェ付きときた」
【タマ】
「……贅沢過ぎるよな」
【カズ】
「全く」
【タマ】
「……続けないんだ」
【カズ】
「お前とじゃぎこちねぇだろ」
【タマ】
「……ソラとならしっくりくるのか」
【カズ】
「………」
【カズ】
「……タマ。あのよぉ」
【カズ】
「言いたいことがあるならさっさと言えって。普段のように接してこいよ」
【タマ】
「……長居は更なる誤解を招くからか?もういいだろ、そんな心配」
【タマ】
「……例えばの話。例えばの話だよ。お前は本当は優等でさ、」
【タマ】
「……主席補佐官が真の正体だったら?」
【カズ】
「………」
【カズ】
「……イジメにでも遭ったか?自分がそんなつまらん職に就くはずねぇだろ」
【タマ】
「……プッ。そうだな」
【タマ】
「……あたしは、お前が思ってるほど、強くないのかもしれない」
【タマ】
「……それだけだ。またな」
【カズ】
「………」
【カズ】
「……何だったんだ一体。自分が主席補佐官?なわけねえだろうが。あいつだけ夢の中かよ」
【カズ】
「……ったく、嬉しいようで悲しいような複雑な駆け引きをしやがって」
【カズ】
「レポートだ。レポート。今日中に何とか追い付かないと」
【カズ】
「………」




