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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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もういない誰か

〈もういない誰か〉5月12日水曜日

これは夢ではない。

夢で振り返った過去の現実を自分は信じない。

意識の中で、今一度GW合宿に浸りたい。

放置されると、ほっとけないタチなんだ。


【タマ】

「……自己生成を終えた時点で自分の物語は完成されている。昨日言ったな」

【タマ】

「……かといって、自己生成に早いも遅いも無い。時間を掛けたからって優等は生まれやしない」

【タマ】

「……全ての主人公が大器晩成型なら話はだいぶ変わってくるが、それでも生きようとするお前らをあたしは未だに解せない」

【タマ】

「……劣等が、そんなにいいのかよ」

【ソラ】

「持ってないモノを欲しがる。その典型だね」

【カズ】

「優等であればあるほど、一度魅せたら周囲がなかなか劣等にならせてくれないからな」

【タマ】

「………」

【タマ】

「……そうなんだ。全く。困ったもんだ」

【タマ】

「……なぁ、どうしたらいい?」

【カズ】

「本気か?」

【タマ】

「……どうだろうな。あたしにも解らん」

【ソラ】

「………」

【タマ】

「……主人公は唯一、創る側が創造出来ないネタだ。だから本音を漏らせば、生かされる側に置きたくない。現代に行かせたくはない。神代にもいてはいけない」

【タマ】

「……前述を差し置いても枠内に収まって欲しくない。主人公は、どんなイデオロギーがあろうとも背伸びするぐらいの生き方が一番しっくりくる」

【タマ】

「……本当にしたいことをやらせてあげたい」

【カズ】

「矛盾……青空。お前また余計な茶々入れて――」

【ソラ】

「何様?とは安易に突っ込めない。私達はどこまで求めても、創る側で、生かされる側だもん」

【タマ】

「……それが、創る側の心情だと、あたしは思ってる。少なくとも」

【タマ】

「……あたし達が成そうとしていることは全て、何の手助けにもならない。劣等でしかない。頂門の一針なんだよ、ソラ」

【カズ】

「………」

【ソラ】

「私は創ってやったからって、タマみたいに偉そうにはしないんだけどな。でもその気持ちは最後まで重んじる。約束する」

【タマ】

「……フッ。まぁ、どのイデオロギーを信じるかは各々の自由なんだけどさ」


【カズ】

「………」

【カズ】

「ふぅ~」

あのGW合宿は無意味な時間だったのに、タマとの思い出が現実として存在しているのも事実で。

全く逢えない日が一昨日、今日と続いては、やはり動き出す前触れに思えてならなかった。

自分は恐いのだろうか。

何をやらかしてくれるのか、ドキドキしながら待っているというのに。

自分の、どこかで、まだそんな甘さが居座ってると思うと何だか情けない。

いや、事実だ。

なら責任転嫁できる。

【カズ】

「……何かこう、論破するタマを見つめるより、単純に自分が納得するような優等ぶりを魅せ付けて欲しかったよなぁ」

【カズ】

「……青空も青空で、戯どけ役を完全に拭い去ってから動いて欲しかったよなぁ」

【カズ】

「………」

【カズ】

「おてんばで風来坊な義理の妹か……」

【カズ】

「その肩書きを返上してから始めろや」

【カズ】

「って、愚痴を言っても自分を惨めにするだけだな」

【カズ】

「今日も、明日になるのをじっと待とう」

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