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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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勇者VS魔王

〈勇者VS魔王〉5月7日金曜日

【ソラ】

「こ、こほんッ!えー、積もる話もあると思いますが、今日は打ち合わせから入らせて頂きます。進行は私とタマにお任せを」

【タマ】

「……後期になったら、あたしは学長の薦めでいなくなる」

【ソラ】

「私と巫女ちゃんは1年後タマを追うことになってる」

【カズ】

「……あのな、お前ら。何回も言うようで悪いが、自分に解らせたかったら現象とその理由は必ずセットにしろよな」

【タマ】

「……大学というのは、磨けば光る可能性を持った原石の宝庫。社会の第一線に立つあたしにとってこの上ない絶好の機会というわけだ」

【カズ】

「いやいや、いつでも立てる状態にあるような――どうせ留学の類か何かだろ。はい次」

【ソラ】

「頑張ろうッ!」

【カズ】

「自分はやり切るんだとさ。避けられないって……信じちゃいないけどな」

【タマ】

「……きっかけはこうだ。学長がお前を煽てて、あたしの元に送り込む」

【カズ】

「これまたシンプルに攻めてくるなぁ学長も。青空はどうなんだ?」

【ソラ】

「それまでに知らしめるしかないっしょ。私の場合は実力を。魅せ付けて認めさせなきゃ」

【カズ】

「………」

【カズ】

「ここにきてお前もようやく動くか」

【カズ】

「待ちくたびれた。待ちくたびれたぜ青空。表舞台はお前を心待ちにしていたのにここまで引っ張るなんてよ。ったく」

【ソラ】

「合流したら約2年掛けて、全神代を旅する。私の目的はもちろん魔王になる為の布石を打ちに。就職活動は全く考慮してない。当然だけど」

【カズ】

「どうして限定するんだ?それでいて、」

【カズ】

「どうしてお前がこの場にいられる?」

【タマ】

「……とりあえず整理しようか。まず、限定じゃない。神代は広いが2年前後で事足りる。永遠に続いているわけじゃないし、仕掛けを施すには十分過ぎる時間ってことだ」

【タマ】

「……次に、納得なんかしてない。あたしが求めるのは明けの明星。ただ一つ」

【タマ】

「……こう決定付ければいい。今のあたしはお前らに力を貸すと」

【カズ】

「本気で言ってんのか?」

【タマ】

「……同レベルだから魅せられる。その駆け引きが部外者を虜にさせる。そこに優劣は無い」

【タマ】

「……有るのは誰かの為にあたしがわざわざ創ってやるという現実。お前が嫌う虫のいい作品」

【カズ】

「………」

【タマ】

「……なぁカズ。頼むよ。あたしにソラの動向を間近で見届けさせてくれよ。一緒に来てくれよ」

【カズ】

「勇者VS魔王か……くっくっく、いい響きだぜ。いい響きだ。心の底からわくわくしてくるッ!くぅ~ッ!」

【タマ】

「………」

【ソラ】

「………」

【カズ】

「……ん?どうしたんだ急に。そんな深刻に思い詰めて」

【カズ】

「求めるのは必然だもんな♪自分抜きでは先に進めやしない。相当我慢してるとみたッ!」

【カズ】

「図星だろッ!?そうに決まってる。だから何も言い返せ――」

【タマ】

「……自分を嫉妬させ続ける必要がある。あたしがあたしでいる為に」

【ソラ】

「私が私でいる為にも……ね」

【カズ】

「………」

【タマ】

「……脱線を直そう。大学卒業後すぐ、あたしは神代政府の正式な職員になってる。つまり陽動だ」

【カズ】

「おい……タマ。お、お前ッ!?」

【ソラ】

「私達は監視の目から少なからず逃れられる。付け入るとしたらそのタイミングしかない」

【ソラ】

「とうとう動き出した。あの時目の当たりにした現実が否応にも思い出させる。とくれば、快く思わない猛者達が挙って対タマ過剰意識を持って何が何でも食い止めようとする」

【カズ】

「あの時?」

【ソラ】

「何であれ、まずすべきことは本当の自分の存在意義を蘇らせると同時に弱腰に決してならないこと。まぁ神代ここだから躊躇無く投じれる策でもあるんだけどね」

【タマ】

「……本調子には程遠いがこれがソラの覇気か。以前とは俄然違う」

【カズ】

「……はは、同感だな。思わず身の毛がよだっちまう」

【ソラ】

「白黒?優劣?上等上等。徹頭徹尾完全実力勝負で大いに結構。優等なら何でも成せるわけだし」

【カズ】

「………」

【タマ】

「……カズ。黙ってみてないで、いい加減止めさせたらどうだ。お前みたいになってるぞ」

【カズ】

「似た者同士は気が合うんだなぁ」

【タマ】

「……あたしのせっかくの振りは無駄骨なのか」

【カズ】

「ったく、わかったよ」

【カズ】

「タマは爆弾ベストを纏ったテロリストじゃねぇ。そう容易く一網打尽にはできないぞ、青空」

【ソラ】

「うん」

【ソラ】

「確かに否定できないね。でも履き違えないで欲しい。私達の真の目的は主人公かませいぬに非ずってことを」

【カズ】

「そこまでして、確かめる必要性があるのかよ。無関係の主人公を巻き込むなんて――」

【タマ】

「……明けの明星は常に洗練されていて、それでいて中立的な立場でい続ける必要があって、でも天使と悪魔の両方の感情を併せ持った神でなくてはならない」

【カズ】

「………」

【カズ】

「……裏切り者め」

【ソラ】

「各々の認識にもよるけど、必ずしも良い神とは断言できないよね」

【タマ】

「……そもそもあたしらだって神でも何でもないんだ。現代の存在があるから。神代を司れるネタがあるから主張できるだけであって」

【ソラ】

「私とタマは、ただ単に、『明け』の明星はどちらが相応しいかどうか確かめたいだけ。確認の為だけなんだよ。巫女ちゃん」

【タマ】

「………」

【カズ】

「どんなに自分を正当化しても自分以外は肯定しない」

【カズ】

「今はそれしか言えない。で、出てこない……」

【タマ】

「……道理だ。こっちが困る」

【ソラ】

「それで満足。贅沢過ぎるよ……」

【カズ】

「……はは、だろうな」

【カズ】

「ところでタマ。お前は有権者の支持を集められるんだろうな」

神代のお手玉もまた、有権者が優等に依存するところから始まる。

【タマ】

「……誰に言ってる。いつでも選ばれる自信はあった」

【ソラ】

「いちおー、私も持ってるよー」

【カズ】

「甘い。何より好感度が肝要だろ。見縊ってると痛い目に遭うぞ」

【タマ】

「……はぁ。どっちが」

【タマ】

「……そうそう、言い忘れた。お前がどんな努力をしようと間に合わない。実力では突破できない」

【ソラ】

「あらら、ゲロしちゃった。ま、いっか」

【カズ】

「………」

【カズ】

「くっくっくっ」

解っちゃいたが、笑わずにはいられなかった。

今の自分はすこぶる機嫌がいい。

何もわからないのに。

いや、わからなくていい。

わからないから自然と前へ進むし、生きる意味を証明できる。

青空も、

タマも、

自分の全てを捧げて、危険な賭けをしようとしている。

でもそれは今に始まったことじゃない。

ふと、思った。

そして、一つの答えが生まれた。

時代の経過は、主人公達の本気度を損なう要因になってる。

成長過程において、ネタの塗り替えはすなわち崩壊を知らせる警鐘。

【カズ】

「幅を広げるということはそれだけ分散せざるおえなくなる。選り取り見取りが必ずしも理想の現実とは言い難い」

【カズ】

「優等も優等で情けない。目の前のネタで選ぶしかないからって間違った方向に進みやがる。それではダメだ」

【タマ】

「……何が、ダメなんだ?カズ」

【カズ】

「こっちの話だ」

【タマ】

「……だったら忘れる前に書き終えてしまえ」

【タマ】

「……後はお前だけだ。アンカー」

【ソラ】

「提出は最低限のルールだからね」

【カズ】

「………」

【カズ】

「お前らに感謝しなきゃな。この扱いで退屈凌ぎになる。ありがとうよ」

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