新しい門出
〈新しい門出〉5月6日木曜日
【教授】
「物語を創るにあたって、自分の価値観を取り入れるべきか、取り入れないべきか。という問いに対し」
【教授】
「仮に中立的な立場でも、結局は何らかの環境下でのことであり、価値観は無条件に含まれるといえる」
【教授】
「従って、自分の価値観は取り入れるべきという結論に至る」
【カズ】
「青空め。嫌な予感がした時はいつだってそうだ」
【タマ】
「……お疲れ。やらされてない努力の方は順調か?」
【カズ】
「らしくねぇんじゃねぇか。青空が学長に呼び出しをくらった途端に様子を窺うなんてよぉ」
【タマ】
「……否定はできないな。認めてやるから先に進んだらどうだ」
【カズ】
「………」
【カズ】
「お前なら自分も機嫌が悪いのは察しがつくよな?力になってくれえい」
【タマ】
「……くっくっくっ、どうして?笑わせるなよ。お前のツケを払うのはソラだろ。あたしじゃない」
【カズ】
「その強気。ますます状況は悪くなると思うが」
【タマ】
「……機嫌が良い時に切り出した方が事は旨く運ぶとでも?」
【タマ】
「……0点か100点でいい。中途半端が一番性に合わない」
【カズ】
「むしろ好都合というわけかい」
【タマ】
「……部員は一番乗りして部室を開けとけよ」
【ソラ】
「……とまぁ、何だ。朝の冊子配りはご苦労。おかげさまで、部員の頑張りが増版を招いた」
【カズ】
「……はぁ~、嬉しい知らせを素直に喜べないこのもどかしさ。誰か何とかしてくれ」
【ソラ】
「成し遂げては最初で最後の活動とはいかないと。最低でも年度が変わるまで放棄は認めないとも言われた」
【タマ】
「……その方がはっきりしていていい」
【カズ】
「い、いや、その前にだな……」
【カズ】
「思い返してみろって。そもそも的を外すネタじゃなかった。お前なら容易に計算できたはずだろ」
【ソラ】
「従来の目的を果たした今、サークルなんてぶっちゃけもう用済み。解散したいと……」
【ソラ】
「私が本気で思ってるとでも?巫女ちゃん」
【カズ】
「……お前の態度はどう言い訳しても辞めたい側の理屈だったろ」
【ソラ】
「勝手に決め付けただけでしょ。私がイライラしていたのは学長に命令されると解っていたから」
【カズ】
「……ってことは必然か。って覚悟の上だろそれもッ!」
【ソラ】
「だったらさ。ね♪再利用しようよ。捨てられないのなら、とことん有効活用してやろうよ」
【ソラ】
「巫女ちゃんにタマッ!」
【ソラ】
「青空報道同好会の新しい門出を祝ってくれないかな♪にゃは♪」
【カズ】
「………」
【タマ】
「………」
【タマ】
「……お前はどう見る?」
【カズ】
「大きな機械の歯車というか、単なる駒に過ぎないと思う」
【タマ】
「……悪くない読みだな」
【カズ】
「偉そうに。青空とは長い付き合いなんだよ」
【タマ】
「……関係ないって言ったろ」
【カズ】
「見解の対立は避けたいところだな」
【タマ】
「……優等にとって妥協は屈辱的。常に主導権を持ち続けたい」
【カズ】
「よくできました」
【カズ】
「ところでタマ。有名になるタイミングってさ、やっぱ――な、何だ青空ッ!」
【ソラ】
「タマもこっち寄って。今度こそ写真撮っちゃうんだから。にゃは♪」
【タマ】
「………」
【カズ】
「……?やけに素直だな。てっきり拒むとばかり」
パシャッ!
【カズ】
「これで満足か?さっさと今後の活動方針を説明してくれや」
【タマ】
「……話がある。済んだらソラはあたしの家に来るんだ」
【ソラ】
「………」
【カズ】
「ったく、この期に及んでもまだ偉そうにしてよ~」
【カズ】
「……で、行くのか?」
【ソラ】
「なんだ、嫉妬か?」
【カズ】
「そうだ」
【ソラ】
「タマの存在がひょっとしたら、私と巫女ちゃんが本気で向き合えるきっかけになるかもね」
【カズ】
「お前も自分なんか始めから眼中にないくせして」
【ソラ】
「眼中に無かったら布石は打たない」
【カズ】
「先に何を描いてる?」
【ソラ】
「これまた機嫌を損ねさせる質問だね。タマの言い付けを忘れたの」
【カズ】
「いいから答えろ。お前だって並大抵の神じゃないことは自分でも察しがついてる」
【カズ】
「有言実行といこうや。なぁ青空。終盤へと飛び越えちまおう」
【ソラ】
「私は本気で魔王になるつもり」
【カズ】
「自分に何ができる?」
【ソラ】
「その質問は辛過ぎるよ」
【カズ】
「自分だけ蚊帳の外は、いくら何でもずりぃだろ」
【ソラ】
「死ぬよ」
【カズ】
「本気の代償なら本望」
【ソラ】
「ダテにつるんでないね」
【カズ】
「よせって。はぐらかすなよ」
【ソラ】
「明日のサークルまでは待ってくれなきゃ」
【カズ】
「刮目してこい」
【ソラ】
「留まらせた訳を聴かなくちゃいけないもんね」
【カズ】
「ダメだ。全然理由になってない」
【カズ】
「あ、青空ッ!」
【ソラ】
「お疲れ~♪」




