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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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GW合宿最終日(一部)

〈GW合宿最終日(一部)〉5月5日水曜日

これは遺書である。

本来は出逢った瞬間に、書いておかなければならなかった。

これが最後の遺書とは限らない。随時、更新されることを祈ってる。

【カズ】

「……ふぅ」

【タマ】

「……どうした?」

【カズ】

「どうも。幸せなだけだよ」

【カズ】

「(お前らのおかげで、生きている気がする。自分でいられている。楽し過ぎるぜ。楽し過ぎるッ!)」

遺書とは何か。

その答えを出さない限り、先には進めそうになさそうだ。

・自分のこれまでの神生の集大成を文字に込める。

・遺書を残す時点で、未練があるということになる。

それらに自分は何の不満も抱いておらず、答えは既に出ていた。

気になるのは、タマが遺書を書かせる事情だ。

【タマ】

「……余計なことは考えるな。お前は、単純でいいんだ」

【カズ】

「………」

本当のことを言うと、

自分も創る側でいたい気持ちと生かされたい気持ちがあって、常に葛藤している。

それだけで大満足。言い残したいことは何も無い。けれど……

他に対するイデオロギー的な発言が多少許されるとしたら、こう訴えかけたい。

何の為に生きるのかを考えるのではなく、何の為に生まれてきたのかを考えるべき。

と主張すると、必ずこういう批判を浴びる。

どの主人公も、弱みが活力になってるから”本当のらしさ”なんて魅せられない。我慢の中で”らしさ”を魅せるのみだと。

嫌だね。自分はこれからも、思いっきり背伸びして生きていきたい。

そして三竦だけは、何があろうと、自分が永遠に護り通す。

【カズ】

「………」

【カズ】

「……書き終わった」

【タマ】

「……常時携帯しておくんだ。いつでも現代に旅立てるように。今後も予備対策は万全にしておけよ」

【カズ】

「怠るもんか。更新は生きてる証拠だぞ」

【タマ】

「……一時的な出来事や感情は大きく自分を前進させる可能性を秘めてるが、立ち止まったら大きく後退する」

【タマ】

「……自分の存在意義を見失わない為にも、定期的に遺書の更新をすることを強く勧める」

【カズ】

「何回も言うなよ」

【タマ】

「……何回言い聞かせても実行に移さないのはどこの馬鹿だっけ」

【カズ】

「で、一体どうすんだ?青空が納得するとっておきの言い訳は思い付いたのか」

【タマ】

「……いや、全く。どうしようか……カズ」

【カズ】

「余裕綽々だなぁ。どうみても焦ってる気配は感じられない。いちいち訊くなよな」

【タマ】

「……皆ガキだと思え。嫌でも嫌いな物を食わせる……言葉は悪いが、響きはいい。今のあたしにピッタリの戒めだ」

【カズ】

「気持ちの高ぶりがより一層本気度を増幅させてるようだな。それでいいと思う」

【タマ】

「……今、何て言った?」

【カズ】

「本気かどうか。勝手に省略したけど、これでいいはずだろ?」

【タマ】

「……本気の代償は単純明快。次が無いということ」

【タマ】

「……白ならいつ死んでもいい……が、」

【タマ】

「……黒ならすぐ死ぬべきだ。くっくっくっ」

【カズ】

「自分はお前らに付いて行くだけ。とことん。どこまでもな」

自分はその時、知る由も無かった。というより、想定が追い付かなかった。

それはまもなく訪れようとしていた。

これほどまでに、目まぐるしい生活を送るなんてことは――。

………。

……。

…。

ただ一つだけ、一つだけ確信できたことがあった。

自分と青空。そこにタマが組み合わさった瞬間から、三竦の、三竦による、三竦の為の物語は明けたんだと。

ついに、明けられたんだと。

たとえこの先、どんなに傷付いたとしても、どんな壊れ方をしたとしても、

未練は全く無い。

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