求めた代償
〈求めた代償〉4月27日火曜日
【ソラ】
「タマお疲れ~。始まって2週間経つけど大学には慣れた?」
【ソラ】
「……私は全然。期末試験が心配だよぉ~、タマちん」
【タマ】
「……ソラ。あたしは……」
【タマ】
「………待ち兼ねた。待ち焦がれていた。この瞬間を今か今と待っていた」
【タマ】
「……特定に、居所に、言わせるのに何年費やしたと思う?このあたしが以てしてもこれだけ掛かった」
【タマ】
「……さあ言え。言ってくれ。言えばどちらかが楽になれる。正々堂々白黒つけよう」
【ソラ】
「………」
【ソラ】
「最低限以上の干渉を嫌うのは、実はいつも感情的だからじゃない?隠す為の。単調な性格。下手の極端好き。せっかく婉曲な言い回しにしたのにこれじゃ台無しだよ」
【タマ】
「………」
【ソラ】
「あ、ごめん。タマにツッコミは過度の要求だったね。こっちは全然乗り気じゃないんだけど、早々と本題に入った方が雰囲気的にいいみたい」
【タマ】
「……どうでもいい。お前らのサークル活動なんて。その下りはとっくに見抜いてる」
【ソラ】
「じゃあこれも見抜いていたよね?私が巫女ちゃんとのデートを了承するってことも」
【タマ】
「……腸が煮えくり返る思いだったろうによく自分を説得できたな。傷つけても欺いてでもアイツの願いを叶えようとする。あたしには到底解せないよ」
【ソラ】
「タマのその忠告は最もな意見だよ♪」
【タマ】
「……その、満面の笑みをあたしに贈ってすぐ、交換条件を持ち掛ける計画だった」
【ソラ】
「でもよくよく考えてみたら、タマが求めてるのにどうして私が鏑矢を放たなきゃいけないのかな~って。巫女ちゃんが覇気を使われたから反射的に言うんだろうな~って」
【ソラ】
「考えがあめぇよ」
【タマ】
「……甘くは無い。常に予備対策は万全にしておく」
【ソラ】
「結果は同じなのに?どういう対策を練ったの、タマ?」
【タマ】
「明後日、あたしの家に来い。あの馬鹿も連れてな」
【ソラ】
「まるで、”サムライ”だね」
【タマ】
「……誰だそれ?」
【ソラ】
「喜ぶ前に気絶しちゃうんだろうな~♪」
【タマ】
「……あたしには、成っての裏切りを受け入れられるほどカズは成熟してないと踏んでる。それでもいいのか?ソラ」
【ソラ】
「さすがだね。ズバリ当たってる……けど、もっと自分の心配をした方がいいと思うよ」
【ソラ】
「だって、巫女ちゃんもタマのことは全然知らないけど、タマも巫女ちゃんのことは全然知らないわけだから」
【ソラ】
「タマもきっと憑かれるよ。巫女ちゃんという存在の在り方に。私が憑かれたようにね」
【カズ】
「ど、どうなった?」
【ソラ】
「タマの家に行くことになったから明後日空けといて」
【カズ】
「……込み入って長話でも無さそうだったけど、何があって、何でそうなったんだ?」
【ソラ】
「私も巫女ちゃんもタマのことを何にも知らない。だから教えてくれるんだと」
【ソラ】
「……本当のあたしをな」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「タマだよ。一筋縄ではいかない。主導権を堅守しつつ、じわじわ追い込んでいくのが無難で確実ってこと。それと、取材という立場で伺うんだから公私の別も弁える」
【ソラ】
「わかったかな?巫女ちゃ――み、巫女ちゃんッ!?」
【カズ】
「……何だよ。ノーリアクションがそんなに気に入らなかったのか?」
【カズ】
「絶句。してるだろ……これ以上の表現がどこにある。勘弁してくれ」
【ソラ】
「嫉妬。してるんだね……遣る瀬無さも一丁前に含ませちゃってさ」
【カズ】
「せめてタマだけは……今更ながらそう思えてきた。後悔してるんかな久しぶりに……」
【ソラ】
「どうしょうもないよ。それが巫女ちゃんだもん。実力が伴ってないのに、プライドだけはタマ以上なんだし」
【カズ】
「……旨くバランスを維持しようにもなかなか難しくてだな。いつまで経っても負んぶに抱っこですまない」
【ソラ】
「謝る巫女ちゃんなんて見たくないなぁ」
【ソラ】
「ナルシスト、リクエストしていい?嘘、冗談でしょ。そ、そんなテンションじゃタマも扱いに困るでしょうがッ!」
【カズ】
「………」
【ソラ】
「果報は寝て待て。ってな訳で、明日まで活動はお休み。明後日また再開しよう。これといってやらせることもないしね」
【カズ】
「自主的なら構わないよな?」
【ソラ】
「ん?そりゃ自由だよ。そこまで私達のサークルは規律に厳しくない。ただ――」
【カズ】
「……いちいち言わんでいい。これ以上自分を惨めにさせないでくれ。頼むから」
【ソラ】
「にしても、はじめての校外活動かぁ。なら――」
【カズ】
「じ、自分は言うぞッ!おやつは300円までッ!限度額を超えたら即刻帰宅を言い渡すッ!はぁはぁ……」
【ソラ】
「巫女ちゃんは期待を裏切らないよね。いつだって」




