表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
25/89

新しい同志に

〈新しい同志に〉4月26日月曜日

【コウ】

「………」

【サヤ】

「………」

【カズ】

「……あ、あの、何故にこんな修羅場な雰囲気?青空の家で宅飲みじゃなかったろうて」

【ソラ】

「………」

【カズ】

「おい青空。一体全体どうなってる。どういうことか説明しろ」

【サヤ】

「説明するのはカズの方だと思うよ」

【カズ】

「何だって?自分?……ってことは、お前らの仲裁役ではなさそうだな」

【カズ】

「誰でもいい。話せ。話が全く見えてこない」

【サヤ】

「今日の昼休み。カズはタマと一緒にいた。偶然にも私とコウちゃんも目撃してて、既に確信してる」

【サヤ】

「あれは、”神童巫太郎”だった」

【カズ】

「………」

【カズ】

「……い、いや、だから何?何なの。自分が何をしてようとお前らには関係の無い事だろ。何も知らないくせに、何様のつもりだ?」

【ソラ】

「それは私の台詞だよ。巫女ちゃんこそ、何様のつもり?」

【カズ】

「………」

【ソラ】

「私は距離を置くように進言した。対して巫女ちゃんも納得してたじゃない」

【ソラ】

「それなのに、向こうが近付いてきたら、のこのこ付いて行っちゃうなんて。どうして拒否してくれないのッ!?」

【カズ】

「ち、ちょっと待てってッ!こいつらは何の事情も知らない。そんな誤解を招くような言い方――」

【ソラ】

「どうして私の気持ちを踏み躙るような真似ばかりするのッ!?そんなに、タマが良いのッ!?」

【ソラ】

「わかんないよ。巫女ちゃんの本当の気持ちが……もう」

【カズ】

「……コウ、サヤ。ここからは青空とだけ話す。悪いが帰ってくれ」

【コウ】

「ソラはな、ずっと我慢を溜め込んできたんだ。いずれ最後は決壊する。十分わかってたはずだろッ!?」

【カズ】

「帰ってくれ」

【コウ】

「………」

【コウ】

「あ、そうそう。こういう時は決まって間に何か入れた方がスムーズに――」

【コウ】

「……わかったよ。サヤ、帰るぞ。宅飲みはこれで終わりだ」

【カズ】

「すまない……本当に……すまない……」


【ソラ】

「ひっく……ひっく……ひっく……」

【カズ】

「………」

【カズ】

「……この代償は高く付くぞ。何せ誤解という土産を持ち帰らせてしまったんだからな。面倒になるのは必至だ」

【ソラ】

「ひっく……頑張って……ひっく……」

【カズ】

「知らないと悪いから親切心で教えておく。現代でバレたら、一目散に殺されるぞ自分ら」

【ソラ】

「『明け』の明星になれるなら魔王にでもなれる。なんてたって、わたしゃ咬ませ犬♪にゃは♪」

【カズ】

「ふ、ふざけるなッ!ったく、ナメた茶番考えやがって。演技に磨きをかけてどうすんだよ」

【ソラ】

「タマと何を話していたのか教えてくれたらこうはならなかった」

【カズ】

「……はいはい。それ故に宅飲みイベントが急遽邪魔だったわけね」

【ソラ】

「……カズ。どうしてあたしをほったらかしにする?」

【カズ】

「何だって?」

【ソラ】

「に対しての巫女ちゃんの返答が気になって気になって。我慢できんかった♪ちなみに学習センターにはいなかったよ」

【カズ】

「………」


【カズ】

「ほうっておく?それはお前の思い違いだ。自分はお前のことをずっと見てた。一瞬たりとも意識を外した覚えは無い」

【タマ】

「……ならもう止めてくれ。あたしはお前が嫌いなんだ」

【カズ】

「うん。知ってる」

【タマ】

「……お前を見てると虫唾が走る」

【カズ】

「大歓迎。もっともっと虫唾を走らせてやる」

【タマ】

「……あたしにとって、お前はどうでもいい存在なんだ」

【カズ】

「……だったら訊くなよ。話しかけてくるなよ。自惚れ、させんなよ。付け上がっちまうじゃねぇか」

【タマ】

「……それはお前の勝手。ただ、ソラの入れ知恵であたしに接するな。どうせ纏わり付くんだったらマシな方を選びたい」

【カズ】

「お前さ、つまらない意地張ってないでさっさと認めたらどうなんだ?」

【タマ】

「……認めるも何も、誰かを求めるなんて気持ちは更々無い。そもそも自分のテリトリーを離れてわざわざ敵地に乗り込む馬鹿がどこにいる」

【タマ】

「……あたしはホームでお前らを待っててやるから、そっちが来ればいい。求める代償はきちんと払え」

【カズ】

「どっちでもいいさ。ホームでもアウェイでも。青空とタマさえいてくれればそれで。どこにでも行ってやるよ」

【タマ】

「……決まりだな。それまであたしに絡むきっかけは探しても見つからない。これで無駄な時間を省ける。礼を言うよ」

【カズ】

「いいのかな?額面通り礼なんて受け取っちゃって。あんまし青空を見縊ると痛い目に遭うのに」

【タマ】

「……言いたい放題だな。それもそうか。お前の黒幕だもんなソラは。ソラがいるからお前も自由奔放にやりたいことが出来る」

【カズ】

「何が言いたい?」

【タマ】

「……現代送りにしてやるか。その方がお前の為、ソラの為、何より自分の為になる」

【カズ】

「………」

【タマ】

「……現状に鑑みても、あたしのことを何も知らないお前がソラを見捨てるはずは無い。あたしを諦めてでもソラを護る。自明の理だ」

【カズ】

「まだを入れ忘れんな。それにな、どの道青空を見捨てることは許されない。言うなれば……破棄無き契約。本当の自分であるが為の揺るがない信念に基づいている」

【タマ】

「……」

【タマ】

「……言っている意味がよく解らないなぁ。念の為に訊く。あたしはまだその契約内容に含まれていないよな?双方合意が絶対条件何だろ当然」

【カズ】

「う~ん。どう切り出せばお前の気持ちを和らげることができるか……ご期待に添えなくて悪いが、自分は知ってしまったんだ。諦めろ」

【タマ】

「……あたしかソラ。どちらかを見捨てなきゃならないとしたならば、お前はどっちを選ぶ気でいるんだ?」

【カズ】

「選ばない――というより選べない。選べるわけがない。仮に今の自分だったら、何もしないで、結果をひたすら待つだけだと思う」

【タマ】

「……そうか」

【タマ】

「……お前は気に入る答えを伝え損ねた」

【カズ】

「え?」

【タマ】

「……あと一歩だったのに、あと一歩のところであたしは信じる気持ちになれたかもしれないのに、最後の最後でしくじりやがった。ホント、おめでたいヤツだよお前は」

【カズ】

「お、おいちょっと待てッ!まだ話は終わってねぇッ!最後って、そんな解釈しないでくれッ!今の自分って言ったろッ!?先の事は答えられない。そうだろ?」

【カズ】

「お前に嘘をつきたくなかったんだ……」

【タマ】

「……自分が、情けない。情けないよ。どうしてお前ごときに覇気を使ったんだって。唯一の超越も誇れない法螺吹きなんかにさ」

【カズ】

「………」

【タマ】

「……じゃあなカズ。お前はお前なりに頑張ったと思う。あたしが掛けた最初で最後の労いの言葉を心に刻んで現代へ旅立ってくれ」


【カズ】

「……これが、今日あった事の真相だ」

【ソラ】

「タマが巫女ちゃんに覇気を使った……本当に使ったんだ……」

【カズ】

「……主導権はあっさり奪取されたけど、この程度で諦める自分じゃないし、神代にいる限り永久に継続できる」

【カズ】

「この失態は必ず挽回してみせる。タマの要望通り、お前の施しは受けない」

【カズ】

「明日にでも行動に移す。今のこの気持ちを一刻も早くすっきりさせたいんでな」

【ソラ】

「その必要は無い。巫女ちゃんはおとなしく傍観してくれればそれで、いい」

【カズ】

「………」

【カズ】

「……何を……するつもりだ?」

【ソラ】

「私はタマを許さない。嘘をついたツケは裁きで報いてもらう。もう決めた。巫女ちゃんの願いでも止められない」

【カズ】

「なぁ青空。もしさ、もし……この展開を自分が誰よりも望んでいたとしたら、ちっとは子煩悩じゃなくなるか?」

【ソラ】

「私にとっても、巫女ちゃんとタマは、かけがえのない存在だよ」

【ソラ】

「そう信じてる……いつかはそうなるって」

【カズ】

「だったら、結果出せよな。お前の為にここまでのお膳立てをしてやったんだから」

【ソラ】

「ナイスアシスト♪」

【カズ】

「フッ、宴を再開しようぜ……お前の成功を祈って」

【カズ&ソラ】

「新しい同志に」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ