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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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タマとは

〈タマとは〉4月23日金曜日

【ソラ】

「昨日に引き続き、地味な活動の、始まり~、始まり~。なんちって♪紙芝居でもやる気かよ。にゃは♪」

【カズ】

「………」

【ソラ】

「拍子木は明日までに揃えるということで。資料は全部読んだね。家に仕事を持ち込むなんて巫女ちゃんくらいなんだから」

【カズ】

「んで、今日は一体何をしようってんだ?焦らしてないで、とっとと押し付けたらどうなんだ。早く次の仕事回せよ」

【ソラ】

「落ち着かないもんね。何かしてないと。でもそれはタマも同じ心理状態」

【カズ】

「このもやもやは今すぐにでも拭い去りたい。けど、そうでもない。全く持って、危険な賭けだよ。自分で言うのも何だが」

【ソラ】

「タマも私と同じ、”女”寄りの考え方してるから、何となく解るんだよね~」

【カズ】

「つまり、求める側だと?それは解せない。お前らはどちらかと言えば、求められる側だろ」

【ソラ】

「どちらかと言えば。で決めるならね。というか、ぶっちゃけた話、どちらでも対応できるんだけど。私とタマの場合」

【カズ】

「……孤高発言ご馳走様。どの代でも活躍できそうで羨ましい限りです」

【ソラ】

「皮肉はいい。それより大至急この仕事に当たって」

一枚のプリントが渡される。

印字されていたのは、でかでかと”タマとは(巫女ちゃんの場合)”というタイトルのみだった。

【ソラ】

「タマに対する想いでもイメージでも構わない。書いて、くれるね?」

【ソラ】

「追い――見せ場を用意してやったんだ。タマに対する気持ち、書いていいと言ってる。思いっきりぶつけていいと」

【カズ】

「………」

【ソラ】

「支離滅裂でも、文章なら全て本音でしょ?悔いは残らないはずだよ」

【カズ】

「青空お前……」

【ソラ】

「巫女ちゃんが望むなら私はできることをする。でもそれはお互い様で。誰だって支え合ってるから成り立ってる」

【カズ】

「………」

【ソラ】

「巫女ちゃん?」

【カズ】

「……どこに行ってもさ、主人公の生死なんて気にも留めない。義務だの常識だの一方的に理由付けられてよ、舞台の維持が最優先される」

【カズ】

「……自分達は支え合って生きていかなければ、な。青空」


-あとがき-

タマとはクラシックのような存在だ。

タマという主人公は自分の気持ちをクラシックのように相手に伝え、成す時はクラシックのように曲だけを考える。

『クラシックのように』とは、いささか抽象的で、理解し難い表現なのかもしれない。

それでも、それこそ相応しい。

仮に無数のクラシックの中から、一度も聴いたことのない。タイトルさえ聞かされていない曲を聴いたとしよう。

何を思い、何を感じ、何を抱き、何を考えるかはそれぞれである。

歌詞付きの曲とは違い、答えが定まっていない。それはまるで、国語の文章問題みたいに。

他の気持ちなど知り得ないのだから、そもそもそれを答えさせる事自体誤りである。

答えさせるのは、主人公だけで十二分という結論で留めて置きたい。

つまり、答えが決まっていてはつまらないということ。

本来のあるべき姿は、自分が出した答えこそが本当の答えなのだから。

タマとはそういう類で、そういう信念を貫き通せる自信がある。

答えがある程度予想でき、ある程度解る故、その頂までの過程の努力に喜びを感じるのは現代の主人公と神代に居座る生かされる側だけである。

まだ訊いてはいないが、『クラシックは好きか?』と尋ねたら、望んだ答えが返ってくるだろう。

イメージはこの辺で終わりにして、いよいよここで、自分の想いをぶつけようと思う。

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