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『明け』の明星(神代篇)  作者: どうしてリンコは赤いの?
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神代の休日

〈神代の休日〉4月18日日曜日

昨日はいろんな出来事が積み重なった有意義な一日だった。

散歩での会話は特に。

今日は一週間で唯一の休日。

大学も休みだ。

神代にも昨日今日明日がある。

朝昼晩もちゃんとある。

従って、1年1か月1日1時1分1秒と表すことも可能だろう。

ただし、現代と同じように、便宜的に定めているだけで、実際には無い。

実際は、節目など存在しない。

だから優等は、こう考えるはず。

自分は節目を創らず、立ち止まることも無い。

流れを変えたくない。

今までの自分を維持する為、同じことを、同じ状態で続けてきたことは、一瞬たりとも欠かさないと。

この感覚、この気持ちを忘れない為である。

それは、どの業界にも共通して言えること。

プロ意識である。

神代ならそれができる。可能性を秘めている。

なぜなら、睡眠をとらなくてもいいからだ。

神代に、精神的以外の疲労は無い。

有るのは情緒の疲労だけで、病気もその類のみ。

総称『心の病』

情緒不安定が引き起こす病気は様々であるが、それはある意味、何かをする上で強みでもある。

健康でいられるかは、全て自己管理。マインドコントロールにかかってるからだ。

疲労を蓄積させない為、負担をかけさせない為にも、日頃の気分転換は非常に肝要なのである。

こんなに明るく話せるのは、健康管理法がごく単純だから。

要は、自分のしたいことをする。それを続けられてる間は安心だ。

だからいろんなことをする。

睡眠をとったり、飲食したり、遊んだり……。

それはどの代でも同じである。

そうやって、神代の主人公達は自分の心を整えてる。

ここまでは、向き合い方。ここからは、無常にも罹ってしまった前提で話そう。

それが、肉体的な病気よりタチが悪いのは言うまでもないが、それ以上に厄介なのは、完治予測をつけられないこと。

同時に、治療法が個々によって全く異なる点。

原因は、何かによって伴った結果の代償である。

その言い方に語弊は無い。

神代を、本気で生きてる主人公はそういった偏見を持ってる。

それだけは伝えておく。

話を戻すが、ここでの医者はあまり当てにならない。

医者というより、むしろ”カウンセラー”に近い。

過去の合計患者数が経験を与えてくれるものの、後は読みで診察しなければならないからだ。

そのアドバイスが的外れということもよくある。

なってしまっては、もう遅い。

ループにハマって、どこにも逃げ道が無くなる。

有ったとしたら、そこは現代。

これは最悪のケースの話。

要は、自分のことだ。

自分のことは、自分で治療法を見つけた方が手っ取り早い。

その道程が長いのか、短いのかはわからない。

でもそこに何かしらの答えはあって。

だから誰だって、確かめたい。希望があるなら、前に進んでみても、と思う。

そう思えれば、瞬く間に完治する。

【???】

「全ては気持ちのもちようなのです」

【???】

「なんてな。はは、カウンセラーになろうかな」

という冗談はさておき、自分も久しぶりに睡眠をとった。

大学が休みということもあり、まったりと起きて、こうして朝のコーヒーで心を落ち着かせている。

入学試験を終えるにあたって、条件付きで、お土産を一つだけ持ち帰ることが許された。

大学側は受験賞と表現しているが、自分にしてみたら悩みに悩んだ戦利品だ。

自分が納得した最高級のコーヒーは、いつ飲んでも格別だった。

【???】

「………」

【???】

「……しっかし」

【???】

「……自分芝居というか、ひとり言というか、治らないなぁ」

【???】

「思い切って街にでも出てみようか」

そういえば、こっちに引っ越してからどこにも行ってなかった。

というより、あえて行かなかった。興味がないから。

でも今後、何らかのきっかけで行くこともあるだろう。

それまで気長に待てばいい。

神代ならどこも同じ。商品なら、全て無料で手に入る。

有れば、いくらでも作り出せるから。

さらにいえば、工程さえ知っていれば誰だって作り出せる。

それが神代の市場形態である。

現代の主人公達は、こう思うはず。

努力と成果の不調和や開発意欲の低下は必至だと。

でもそれでいい。

それは政府というより、神代そのものが、経済を活性化させる意識をほとんど持っていないからだ。

………。

神代は創る側。常に物語を創り続けなければならない。

そこに見返りを求めてはいけない。

ましてや、そこが神代のからくりであり、政府もその弱みを逆手にとって利用する。

神代の主人公は、いずれその壁に直面することになる。

あえて劣等になって、その物語を感じるために現代選択するべきか……。

それとも、このまま神代に留まるべきか……。

いずれにしても、成長を求めるなら、現代に行くべきだと思う。

【???】

「………?」

部屋にずっとこぼれてた情報伝達物の音が、今になって鮮明に聴こえてきた。

【???】

「………」

マスメディアのどの報道も、これといって大々的に取り上げることはしない。

大々的に取り上げるとしたら、ほとんどが『明け』の明星関連。

一つに、神代が、現代の主人公のように死を迎えることが無いから。

有るとしたら、神代が崩壊した場合のみ。

制御不能となれば、駆け込み需要と化した主人公達の、現代へと雪崩れ込む様を、ただただ、眺めることしかできない。

【???】

「……想像力が逞しいよ。貯金とはいえ、すぐ引き出せるなんて、少しは優等になったんじゃないか」

【???】

「………」

【???】

「……嬉しいってか。そうかそうか」

【???】

「次は自分の始まりについて、今一度考えてみようかな」

我思う、故に我有り。

有りということは、無でもあるということだ。

掘り下げれば、始まりは何も無い状態(無)からで、生きたいという気持ちが有へと変わる起因になったと。

でもどのような経緯で遂げたかは、自分でも覚えてない。

自己生成に励む中で、自分という存在を、どこで決定付けたのかを。

【???】

「どうしてまかり通る?」

都合がいい。

それに、そんな簡単に誰もが生きたいと思うものだろうか。

無のままを、好む主人公だっているはずである。

【???】

「そうか……」

そう思えてる間は、まだそれでいい。

誰だろうと、いつかは妥協するのだから。

【???】

「……やっぱりいるんかねぇ」

その答えを知ることができたら、神代の始まりなんて無価値に等しい。

その言葉が物語ってるように、今は前に進むしかない。

自分が納得できる答えを見つけるまでは立ち止まれない。

この訝りは必ず、今後の講義でも取り上げられるはずだ。

専門家が、その役割をしっかり果たしてくれることを期待して……。

【???】

「……こ、こほんッ!さ、さて、そろそろ」

【???】

「じ、時間割を本気になって考えないとなッ!」

必修はともかく、選択なら青空と駆け引きを楽しめる。

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