見しらぬ世界にて(3)
キッチンでお土産の肉を渡し、改めて、お金のことや職業について訊いてみた。
お金はラルで、七種類。日本円にして約十円ほどの、鉱石でできた丸くて白い石貨。百円ほどになるのが、胴でできた丸い胴貨。千円ほどになるのが、水晶でできた丸くて中央に穴の開いた晶貨。一万円ほどになるのは、銀でできた丸い銀貨で、中央には石がはめ込まれている。十万円になるのは丸い金貨で、こちらも中央には石がはめ込まれている。百万円ほどになるのが大金貨という四角い金属板で、中央に金がはめ込まれている。一千万円になるのが刻貨というもので、四角い金属板で、中央に一千万と刻印されている。
紙幣はなく、全て石や水晶、金属だ。
猟師という職業はあるにはあるが、このハルタではいないらしい。
というのも、凶獣が棲むという山が近くにあるので普通の動物はほぼおらず、凶獣を相手にするなら冒険者の仕事となるそうだ。
ちなみに、この大きなニワトリもどきも凶獣の一種だった。
「凶獣だったのねえ」
「冒険者ギルドっていうのを見かけたけど、その組合だったのね」
「狩猟もグループでしたりするからね」
すると、説明してくれているミヤン家の使用人は、説明を付け足した。
「ああ、ギルドを見ましたか。冒険者はギルドに加入して身分保証書をもらわないといけない決まりなんですよ。それで初めて冒険者となります。それで、ギルドに集まってくる依頼を受けることができるし、とってきたものを売ることもできるんです。あと、身分証明書にもなります。冒険者ギルド、商人ギルド、薬師ギルド、職人ギルド、農業ギルド。戸籍の届け出義務のある貴族でない限り、成人ならギルドか教会に属さないことには身元を証明することができないので、他領へも他国へも行けないし、家を買ったり借りたりするのもできません」
そういうことを教えてもらった。
私たちは丁寧に教えてくれたことに礼を言って、キッチンから出た。そして、話し合う。
「どうする?」
「冒険者ねえ。入りに行くう?」
「もしかしたら無免許とかで狩りができないかもしれないしな」
早速すぐにでも行こう、と話はまとまった。
その夜、夕食に凶獣のトリ肉が出て、それが私たちが狩ってきたものだと執事から説明があると、タルは目を飛び出さんばかりにして驚いた。
そして、感極まったように言う。
「やはり、深山衆……!」
私たちはそのついでに、冒険者ギルドに加入してこようと思うと話した。
「何もしないのはやっぱりね」
「半年間、こっちで楽しみたいと思うのよねえ」
「小さい家で自活しようかとも思うんだよ」
ミヤンはここにいればいいのにと言ったが、大きすぎる家で、人にいろいろとしてもらう生活は、旅先の数日ならともかく、半年間は長すぎる。長くあれこれとしてもらうのは、将来施設に入ったときだけで結構だ。
年寄りも、自立できるうちはしないとね。
タルは少し考えて言った。
「では、教会はどうでしょう。名目上だけは教会は一応は中立なので、身の安全を保証できると思います。冒険者では、依頼を口実におびき出されて消されたりする危険があります。他国に深山衆召喚を知られたくはないでしょうから」
タルもわかってくれたが、とりあえず明日クインシー公爵とゲイリーに相談してみると言った。そして何かあったら遠慮なく頼ってくれと言い、最初に家や身の回りのものをとりあえずそろえる資金は任せてほしいと言ったので、それはありがたく頼らせてもらうことにした。
「家は大事ですからね。盗賊団は旅の途中を狙いますが、町中でも、空き巣や人さらいや強盗なんてありますからね。それに、サギにも気をつけないといけません」
サギと聞いて、駐在さんからも「特殊詐欺に気をつけて」「最近は警察官を名乗るサギが流行ってきてるから」などと言われたばかりなのを思い出した。
その翌日、来た駐在さんにドア越しに訊いておちょくってやった。
「駐在さん? 本物? 本物だったらこれがわかるはずよ。第一問。駐在さんと奥さんの初めてのデートはどこでしたか。第二問。初めてのチューはいつですか」
駐在さんはいつものごとく、
「このおよねばばあ! いい加減にしろ!」
と怒り、一緒にいた奥さんはケラケラと笑っていたっけ。
思い出してほろりとしていると、タルが続けた。
「今日も訴えがありましたよ。大きな宝石を店に飾っていたんですが、盗まれたと。そのとき店にいたのはその客だけだったからその客に間違いないはずだと言うんですよ」
私たちは、どこでもそういう事件は起こるんだなあと思いながら、ああ、と相づちをうった。
「気の毒にねえ」
「その相手はどうしたんだい?」
「それが、旅行中の貴族でして。王妃の妹の息子なんですよ。話は軽く聞きましたが、強制的に部屋を調べるのは難しく……」
私たちはタルと一緒に嘆息した。
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