見しらぬ世界にて(2)
山に入れば、動物がいるだろう。そう考えて私たちはハルタの近くにある山に登った。
元々、趣味と実益を兼ねて神社の裏の山で猟をしている。だから猟をしに山に入るというのは自然な考えだ。
ただ今は、いつもと違って、銃もなければ罠もない。だが、ナイフはあるし、石ころも落ちているし、枝だってあるだろう。そう考え、無茶とは考えていなかった。
道は段々と上り坂になり、それに従って細くなっていく。そして周囲も、畑から草っ原になり、木々が増え、雑木林になっていく。それがすっかり森になった頃には道は消え、すっかり山中となっていた。
「さあ、どんなものがいるかね」
「鳥の声はするわね」
「そうねえ──あら。あれって松茸じゃないかしらあ?」
ねねが言う通り、松でもない木の根元に、松茸にしか見えないきのこが生えていた。それも、大量にだ。
私たちはいそいそと松茸(仮)に近寄った。
「匂いは松茸だけど」
「大丈夫かしら。きのこは見分けが難しいからねえ」
「見た目も香りも松茸なんだけど……」
私たちは、迷った。相当迷い、考えた。その末、決めた。
「よし、採ろう」
わたしは、松茸をむんずと掴んだ。
「まあ、最初だけ時間をおいて様子を見つつ食べるか、誰かに訊けばいいよ」
よりこもにこにことしながら採取を始める。
「そうねえ。何とかなるわよねえ」
ねねも笑って、松茸を採る。
そうして、三人でたくさんの松茸を採った。日本で買えば、どのくらいになるだろうか。
「網焼き、奉書焼き、お吸い物」
「炊き込みご飯は譲れないね」
「天ぷらに茶碗蒸しも食べたいわねえ」
うきうきと、想像しながらその松茸を大事に袋に入れて背中に背負う。
ここに米があればいいけど、と考えたとき、視線を感じた。
「ん?」
そちらへ目をやると、いた。木の間からこちらをじっと見ている。
「ニワトリかしら」
「まあ、フォルムは似てるけど、大きさが変じゃないか?」
よりこの言う通り、そのトリは頭の高さが二メートルはあった。
「もしかして、これが凶獣なのかしらあ」
ねねが言ったとき、そのニワトリもどきは突然こちらへ走ってきた。それはもの凄い速さで、足に付いている爪はやたらと鋭くて長く、くちばしの内側には歯が生え、トサカではなく角が数本縦に並んで生えていた。
絶対にニワトリではない。
私たちは素早く袖口からいつも携帯している護身用の尖った棒を取り出し、投げた。棒は狙い通りに、ニワトリもどきの両目と片足に突き刺さり、ニワトリもどきは鋭く鳴いてどうと倒れた。
それに素早く近寄り、ナイフで喉をかききる。
「ふう。大きいけど、トリはトリね」
「でかいだけでおんなじだったね」
「よかったわあ。さあ、今日は鶏肉料理ねえ」
私たちはウキウキとしながら、そのトリをさばき、切り分けた。
「調味料がないのが残念ねえ」
「持ち帰れば何とかなるけど、まずはここで、炭火焼きとりといきたいね」
「ビールが欲しいわねえ」
わいわいと言いながら、武器としても使えるように携帯している竹串を取り出して肉を刺し、おこした火に炙る。
脂が滴って火が躍り、何とも香ばしいいい匂いが漂う。
「これこれ」
私たちは次々と焼いてはかじり、またかじっては焼いた。しかしトリが大きかったので、肉はまだまだ余っている。
「持ち帰ってお土産にしようか」
「それにしても、半年の間、どうしよう? 本当にただ世話になってぐうたらするわけにもねえ」
軽く嘆息すると、ねねとよりこもううむと考えた。
「やっぱり、何か仕事でもして自活したいね」
「そうねえ。こういうふうに猟をするのはできるんじゃないかしらねえ」
なるほど。それなら、日本にいたときと変わらない。
「じゃあ、帰ったら物を売る先を調べよう」
「ああ、楽しそうだな」
「うふふ。日記もつけておくと楽しいかもねえ」
私たちは笑いながら後片付けをし、とりあえずハルタの町のミヤン邸へと戻ることにした。
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