いつもと同じ日のはずだったのに(3)
咄嗟に武器に手を伸ばそうとしてしまうのをこらえたのは判断ミスではないと思いたい。
そこには、私たちを待ち構えるようにして、五十人を超える人間が勢揃いしていたのだ。
「何かしらあ。あれって、洋画に出てくる騎士かしらあ?」
ねねがのんびりとも思えるように言う通り、彼らの大半は、西洋の鎧を着込んだ兵士と思われる人たちだった。
「テーマパークかね?」
よりこが言う。
「それより、正面のアレって、国王とか貴族とかでしょ。コスプレかもしれないけど」
私は、中央の人間を見ながら言った。
重そうなマントと高そうな金ぴかの装飾品を着けた王冠を被った男を中心に、似たような服装の者たちがいる。
こそこそと言い合っていると、その偉そうな王のような男が私たちをじろじろと眺めながら隣の年配の男に不満そうに言う。
「これが一騎当千の援軍か? 忍者か? 年寄りが三人じゃないか」
男も不満そうだが、聞いている私たちもむっとした。初対面で失礼なやつだ。
するとどこか焦ったように、年配の男が言う。
「儀式に間違いはなく、確かに深山衆の忍びを呼び出したはずでございます、王様」
私たちは素早く顔を見合わせた。
〈深山衆の忍びって言ったわよ〉
ほとんど唇を動かさないままに仲間にだけ声を送る忍びの術である。
忍びの術を受け継ぐ最後の世代として、いくらかは使える術も覚えている。
〈じゃあ、封鎖されていた通路を開通させたのはこいつらってことか?〉
〈でも、儀式とも言ってたわよねえ〉
「とりあえず、あちらで話を聞きましょう。こちらへ」
年配の男に促され、また、鎧の兵に武器で促され、私たちは彼らに導かれるまま部屋の隅に誘導された。
そこはどこかの建物の中らしく、天井も壁も床も石造りだった。何も置かれていないホールという感じだ。振り返ると、私たちが歩いてきた通路は、石壁の中にぽっかりと開いた穴となっている。
そして誘導された部屋の隅には、一段高くなったところがあり、板張りになっていた。そしてその板張りの部分の真ん中近くには小さい正方形の炉があり、茶釜のようなものが置いてある。
茶室のつもりだろうか。
王たちはその手前で立ち止まり、私たちは促されるまま先に靴を脱いで板の間に上がり、靴をそろえると、炉に向かって正座した。
板の間はまるでできの悪いスタジオのセットのようだが、それは、板の間を見るように高そうな服の者たちと鎧の兵士たちがずらりと並び、見学しているかのように見えるからかもしれない。
王と年配の男は私たちを見て、不満そうにため息をついた。
王は唇を引き結んだままで、年配の男が急いでこちらへ問いかけた。
「お前たちは深山衆の忍びで間違いないか?」
私たちは顔を見合わせ、目で頷き合ってから答えた。
「深山の村には住んでいますけど、忍びなんてとうの昔に前にいなくなりましたよ」
「それよりもそちらはどなたさんですかね」
「ここはどこかしらあ? ああ、腰が痛いわあ」
王も年配の男も高そうな服の皆も、揃って肩を落とした。
そして、王が癇癪を起こしたように叫んだ。
「こんなババアなんているか! 放り出せ! もう忍びがいないなら、儀式は不要だ! こんな穴、塞いでしまえ!」
そうして、足音も高く部屋を出て行った。
自分で言うのはいいが、他人にババアと言われると腹が立つ。わたしはじっと去って行く王を見ながらそんなことを考えていた。
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