流行病(1)
凶獣を狩り、家でさばいて、シロの希望もあってどんぶりにした。
「いいぞ、これこれ。牛丼というものを食べてみたかったんだよ」
シロが感激しているようだ。
もちろん牛ではないので牛丼ではないが、味付けなどは牛丼風なので、まあ似たようなものか。
「やっぱりしょうゆとかを持ってきて正解だったわね」
「そうだね。塩ばかりじゃつまらん」
町の近くには塩湖があり、塩はふんだんに手に入るが、だからといって味付けが塩ばっかりだと飽きてしまう。
「さあて、昼ご飯は終わったし、昼から何をしようかしらね」
図書館もないし、テレビもないし、ユーチューブも見られない。
「甘いものでも探しに行くのはどうだろう」
「そう言えば、町中であんまりお菓子って見てないわね」
「ミヤン邸ではあったけど、貴族しか食べられないものだったりするのかしらあ」
それで私たちは、ブラブラとハルタの町を歩くことにした。
小麦粉を使った素朴そうなおやつや焼き菓子はあった。ただ、あまり甘いものではないようだ。自然の甘さを利用したようなものだ。
「これはこれで美味しいね」
「そうね。最近の都会のこどもはすぐに飽きそうだけど」
「何か、懐かしいわあ」
「オレは団子が食いたい」
ああ、団子ね。こっちには米粉もないし、団子粉もないようだ。深山から持ち込んだ材料で作るほかはない。
「団子はやっぱり、みたらしがいね」
よりこが言うと、シロはナヌッという顔をした。
「三色のやつがいいだろうが」
「私はずんだも好きよお」
「私はやっぱりあんこかしらね。粒あん」
見事にバラバラだ。
話をしながら楽しく歩いていると、何か深刻そうな顔つきの人たちが固まっているのを見つけた。
「どうしたのかしら」
「ゴシップってわけでもなさそうだね」
「いい話じゃなさそうねえ」
「近づいてみるか」
私たちは彼らの近くに近寄った。
その集団は十数人ほどいたが、中心にいたのは、旅装束の男二人だった。大きな荷物を背負っている。
「流行病か。薬は効くんだろう?」
取り巻いた町の人たちの問いに、彼らは首を曖昧に振る。
「効くみたいだけど、なあ」
「ああ。その薬が出回らなくて、バタバタと人が死んでたよ」
周囲の人たちは、ザワザワと声をあげた。
私たちもその話の内容に、緊張する。
「とにかく、今はあの町には近寄らない方が安全だ」
そう言って旅の二人は締めくくり、町の人たちも深刻そうな顔で散っていった。
「こういうときに教会ってところは何かするんじゃないの? こう、赤十字的な」
「そうだね、おりは。行ってみようか」
「何の病気かしらねえ」
私たちは急いで教会へと戻った。
戻ると、流行病のことを聞いていたらしく、教会中がバタバタしている。
「どうしたのかね」
その辺の修道士に訊いてみると、隣の領の端の町で発生した流行病の治療に、この教会からその町にある教会へ人を応援に出すのだという。
そうしてすぐに、薬などを持って修道士たちが教会を出発していった。
「大変だねえ」
「薬の原材料って何かしらね」
「わたしたちでも何か手伝えるといいんだけどお」
そう言いながら見送った。
「薬が足りないとか言ってたわよね」
そう言うと、よりこもねねも頷いた。
「そうだね。薬集めでもしようかね」
「原料って何かしら。化学合成じゃないだろうし、漢方とか生薬みたいなものかしらあ?」
そこで私たちは首を傾げてシロを見ると、シロも首を傾げながらも言った。
「草だろう? よく薬草を集めているのを見たぞ」
草と言われてもよくわからない。昔ならばともかく、出先で急に薬が必要になったら薬局で薬を買うだろう。ましてや異世界なのだから、さっぱりわからない。
「オルツ係長に訊こう」
皆が知っているということなら、その辺の人に訊くと怪しまれる可能性もあるため、こういうときは事情を知る人に訊くのが間違いない。
私たちは上司である巡検士をまとめる係長の役目をしているオルツに訊きに行った。
そこでその草の名前と特徴を記したイラストを見せてもらい、生えているであろう場所を訊いて、早速出発した。
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