新人巡検士(2)
採用された新人巡検士たちは、後日、教会へ集められた。
もちろん私たちもである。
講堂を見回すと、真新しい制服に身を包んだ同期生たちが興奮した面持ちでいた。白くて長い学ラン風な服の下にズボンというのは教会の者皆のスタイルだが、巡検士はその上に、白いフード付きのポンチョのようなものを着ることになっている。そしてその下に、各自で必要に応じて防具や武器を帯びるらしい。
私たちは、サバイバルゲームで愛用している胸当てを着け、ゴーグルを首からぶら下げていた。
そうして、仕事の手順を教えられ、先輩の巡検士に連れられて、早速出発していくことになっている。巡検士は二人から三人で組んで仕事をするが、しばらくは先輩と一緒のグループ活動をなる。
順番に先輩巡検士と連れだって部屋を出てくのを見ていると、とうとう最後に私たちだけが残った。
しかし、残った先輩巡検士は、課長のオルツと部長のゲイリーだけだ。
「あなた方は、このミヤン領での勤務です」
旅行に行きたかった、と三人ともの顔に書いてあった。
町外れの空き家をタルの伝手で借りた。元々冒険者をしていた人が住んでいたらしいが、年のせいで引退し、遠くに住んでいる息子一家の家で同居することに決まったらしい。それで、いらない生活用品を置いていったので、鍋や釜、食器が揃っていたのがありがたかった。
解体をするのに便利な鈎がぶら下がった広い土間もあるので、いろいろと便利に暮らせそうだ。
「何か、古いけど手入れもされているし、居心地がいいわね」
「そうねえ。どこか深山の家に似てる気がするわねえ」
ねねもしみじみと言いながら家の中を見て回る。
「でも、いかに現代技術に慣れきっていたかって自覚させられるな。冷蔵庫や湯沸かし器、ガスコンロ、オーブンレンジ。それになんと言っても水道がないんだからなあ」
私たちはそうしみじみと言って、頷いた。
「まあ、これはこれで、昔の生活を体験するようなものね」
「じゃあ早速、昼ご飯だけど」
「どうする? 食べに行くか、何か山で調達してくるか」
シロはすかさず、口を挟む。
「自炊だ、自炊。自炊がいいぞ」
まあ、それも悪くない。
私たちは妖森の山へと出かけることにした。
天気もよく、ピクニック気分になってしまいそうだ。
「改造された車ができたら、どこかへ出かけてみない?」
そう提案すると、よりこもねねも賛成した。
「せっかくの異世界だもんね。半年間、楽しまないと損だよ」
「そうねえ。いろんなところに行ってみたいわねえ」
シロもゆるく尻尾を振って言う。
「必要な魔力がそのくらいで集まるとか言ってたな」
そこで、気になっていたことを訊いてみた。
「シロが私たちを連れて行けないのに、精霊王の死体を使えば私たちが向こうへ戻れるのはどうしてなの?」
するとシロは、少し悔しそうに答える。
「……まあ、オレはまだ足りないと言うか……その練習もしていなかったからかな」
そこでシロは、私たちを見渡して慌てたように付け加える。
「誤解するなよ? 単に、教わっていなかったからであって、オレが親父たちに劣っているわけじゃないからな」
必死である。
「まあ、キチンと親から教わる前に家出したってことなのよねえ」
「教わってから家出すればよかったのに」
「まあ、シロだけでも行き来できて、物を運べるだけよかったけどね」
シロは冷や汗を拭うようなしぐさをして、視線をそらせた。
「まあ、あれね。半年間は未知の世界で普通はできない体験ができるんだから、ラッキーよ」
「孫に言ったらうらやましがるかもねえ」
「信じるかね?」
私たちは笑いながら、シロと連れだって妖森へ向かって歩き出した。
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