四人目(4)
一旦戻って来たシロに、今度は手紙を持って行ってもらうことにしたが、ふとねねが言った。
「電話は通じないのかしらあ?」
それは試していなかった。
「かけてみようよ」
よりこが言い、嬉々としてスマホを手に取った。
「誰がいいかね?」
「カトマンは? 改造大好きだし、いろいろとやってくれそうじゃない?」
加藤万作、子供の頃からあだ名はカトマン。加藤モータースを営み、車だけでなく家電も水道も何でも修理できる男だ。深山衆の血を引くうちの一人で、私たちとは同級生でもある。
昔から、「現代に合わせた忍びの技術革新を」と言い、いろいろと改造を手がけてきた。ほとんどは使えないものばかりだが、壁に張り付いて登っていくための肘と膝に付ける吸盤サポーターやゴーグルなど、私たちが実用できるとして取り入れているものもある。
ドキドキしながら、通話ボタンを押して待つ。
「……ダメだ。うんともすんとも言わないよ」
「シロが向こうに行けばどう? 何というか、通路がつながるっていうか」
そう言うと、シロは、
「精霊使いが荒いな」
などとブツブツ言いながらも深山に飛んだ。
そうしてかけ直してみる。
「あ、呼び出してる!」
「おお!」
「まあ!」
私たちが喜んでいると、すぐにカトマンが電話に出た。
『はい、加藤です』
「あ、カトマン」
そこでビデオ通話に変える。ありがたいことに、これも使えることがわかった。
『およねか。どうしたんだよ』
そこで私たちは、今加藤が家で一人なのを確認し、あったことを説明した。
もちろん、カトマンはすんなりと信じてくれるわけもない。
そこで、少しだけ窓を開けて町の様子を見せた。どう見ても日本でもない風景とファッションだ。
「この通りだよ」
「凶獣の死体もあるわよ、ほら。見たことない生き物でしょ」
室内に置いておいたそれも見せる。
『え……まじかよ……』
カトマンは目をまん丸にしている。どうやら、信じてもらえたらしい。
そこでシロに頼んでカトマンの前へ出てもらい、シロの空間収納庫からこちらで採取した松茸をたんまりと出してもらい、言う。
「そこで、カトマンに頼みがあるんだけどね」
「少なくとも半年は戻れないってことだから、その間こっちで暮らすことになるんだけど、不便でねえ」
『ああ、おもしろそうだな。異世界じゃ、新式忍び道具のテストもできそうじゃねえか』
ワクワクとしているように、目を輝かせている。
「とりあえず私の車を改造してくれないかしらあ。太陽光発電で走るようにしてえ、発電機もつけてもらいたいのよお」
カトマンは真剣な目つきになった。
『車を太陽光で走らせるったって、普通じゃ、長い距離は走れねえぞ』
「カトマンは普通じゃないだろ?」
よりこが言うと、カトマンはニヤリと笑う。
『わかってるじゃねえか。任せときな』
「それと、駐在さんとかほかの皆にはどうしよう?」
私が言うと、カトマンは不意を突かれたようなキョトンとした顔になってから、ううんと考えた。
『まあ、行方不明ってことになれば大事になりそうだしなあ。まずは深山衆の皆に相談してみるか。俺から明日にでも言っとくよ』
「お願いね」
「頼りにしてるよ」
それで通話は終わり、シロも戻って来た。
「楽しみになってきたわねえ。半年間、何をする?」
「その前に、すき焼きしよう」
「高級肉よお」
私たちはいそいそとすき焼きの準備にとりかかった。
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