巡検士試験受験(3)
残る一匹を探して歩いていた。
「あら、発見よお」
ねねがはしゃぐ。
「おお! 立派な自然薯じゃないの!」
「これはぜひとも持ち帰りたいね」
私たちは自然薯を発見し、ちょっと興奮気味になった。こちらに自然薯があるとは嬉しいが、これは人生で見た自然薯で一番立派なサイズだ。
「折れないように、掘って掘ってそれで抜かないとね」
「ああ、スコップもシャベルもないのが残念だわ」
「木の枝ならあったわよお」
それで私たちは代わる代わる木の枝で自然薯の周囲を掘り進め、かなり時間をかけて自然薯の根の先まで見えそうなところまできた。
そこに、大柄な何者かが近づいてきて、背後で何事か唸った。文句だろうか。
「ちょっと邪魔しないでくれないかねえ。大事なところなんだよ」
三人で力を合わせて細心の注意を払って引っ張りながらも、よりこが文句を言う。
しかし背後の大男は引きつったような声を上げた。
「ああ、もう、うるさいのよ」
私はいらっとして、背後の大男に向かってキッと睨みつけた。ブタのような顔をした男が、さび付いた太い剣を振り上げる。候補として探していたブタ人間だと思ったが、今の優先事項は自然薯だ。
「今忙しいの、わからないかしら!?」
言いながら片手で石ころをピッと指で飛ばした。指弾という、これも忍びの技のひとつだ。
その石ころは願い違わずブタ人間の片目に当たり、ブタ人間は情けない悲鳴を上げて数歩後ずさった。
同時に自然薯がズッと動いて抜けてくる。
「抜けたわあ!」
「おお、お手本のようにきれいに抜けたよ!」
「立派ねえ」
惚れ惚れとするような自然薯に、私たちはうっとりとした目を向ける。
「プギイイイイ!」
「あ、忘れてたわ」
私は思い出して、再び剣を振り下ろそうとして向かってくるブタ人間に棒手裏剣を投げた。それはブタ人間の眉間に突き立ち、ブタ人間は一瞬硬直してから大きな音を立てて倒れた。
「あら。ブタ人間だわあ」
「これで三種類討伐完了だけど、意外とすぐで感想らしい感想もなかったわね」
「まあ、持ち帰って、自然薯を食べるかね」
私たちは重いブタ人間を持ち、町へと歩き出した。
その日のうちに三種類の討伐をこなした最高齢の受験生の噂は瞬く間に教会中に広まったが、私たちは我関せずと、自然薯をどう食べるかと話し合うのに忙しかったのだった。
すり下ろすか焼くのが普通だが、こちらにはしょうゆがないらしい。それは至極残念だ。
「もう、天ぷらにして塩で食べるくらいかしらね」
「麦飯にかけたりそばにかけたりしたのがあたしは好きなんだけどなあ」
「どこかにしょうゆはないのかしらねえ」
一次試験はダントツの好成績で通過、次の試験は明日だと知らされたが、その喜びはしょうゆがないことの残念さには勝てない。
私たちは足取りも重く、タル邸に戻った。




