巡検士試験受験(1)
私たちはタルと一緒に、翌日、教会へ行った。そこで、クインシー公爵とゲイリーと相談するためだ。
「そうですね。建前だけでも教会は中立ですからね。出家すると一番安全ではありますね」
クインシー公爵が賛成した。
ゲイリーもそれに賛成しながら、続ける。
「でも、中でうろうろとしていると四大貴族派とつながりのある者に見つかり、何かされる危険もあります。だから、巡検士ということであれば、巡検中と言っておけるので教会にいなくてもいいのでより安全かと思いますよ」
それに、タルもクインシー公爵も「問題解決」という感じで納得した。
私たちは、耳慣れない言葉に首を傾げたが、すぐにゲイリーが説明してくれた。
それによると、世界各地を回って、困っている人を助け、悪い行いを戒め、冒険者の手が足りていないところでは凶獣退治もするというものらしい。同じ世界各地を回る人でも、教義を説いて回るのはまた別の係らしい。
「面白そうね」
想像して、ワクワクしてしまった。
「もちろん、巡検士ならどこの国、領への立ち入りもできますし、貴族や国相手でも、相応の理由なしには荷物を検めたり身柄を拘束したり行動を制限したりすることはできません」
なるほど、外交官特権のようなものらしい。
「それはいいね」
「ええ。でも、悪用でもされたら大変な職業ねえ」
それにゲイリーは頷いた。
「はい。ですので、武力のほかにも厳しい面接などのテストを経て任命されるんです」
言ってから、付け足した。
「ちょうど新人募集をしていますので──ああ、名簿上の所属でいいですよ」
それに、私たちはニヤリとして答えた。
「せっかくだから、受験してみようじゃないか」
「チャレンジしてみてもいいかしらねえ?」
「何も知らないのじゃあ、ボロがでるでしょう?」
そうして和やかな雰囲気のまま、私たちの受験が決まった。
タル、クインシー公爵、ゲイリーは、あくまで記念受験のつもりでいただろうと思うが、当然私たちは、真剣にのぞむつもりだった。
応募の締め切りはすぐで、試験日もすぐだった。
それまで、私たちはこちらのことを知るための本を読み、市場などへ出かけた。
そして迎えた試験日。教会の中庭に受験生は集められた。
年齢は十五歳以上という決まりはあるらしいが、上限はない。しかし、十五歳らしい子供はたくさんいるが、三十を超えたらしい人は見当たらない。
まあ、控えめに言っても、私たちは目立っている。
「三日以内に、凶獣を三種類狩って、ここへ持ってくること。まずはそれが第一関門です。三人から四人でグループを組んで、メンバーを書いていってください。では、始め!」
そう、ゲイリーも着ていたような白くて長い服を着た人が言うと、ためらいがちに受験生たちは数人ずつかたまり、修道士のところへ行ってメンバーの名前を書くとすぐに飛び出していった。
「おお、元気がいいわねえ」
「山道は彼らで大渋滞じゃないかしらねえ」
「まあ、あたしたちも行くことにしようかね」
私たちはのんびりと言って、歩いて教会を出て行った。その後ろ姿を、教会の人たちが心配そうに見ているが、私たちはにこにことしながら軽く頭を下げ、手を振っておいた。
凶獣に慣れるために山を歩き回ったおかげで、どこにどんな凶獣がいるのか、大体の縄張りも把握している。
「さあ、どれがいいかしらね」
「ここは凄いやつを持ち帰って度肝を抜くべきだろう」
「大きいのは持ち帰るのが大変よお」
私たちは、トラックとかがないのは不便だと言いながら、山へ向かった。




