第26話 札幌記念(GⅠ)
第62回札幌記念(GⅠ)札幌芝2000M(良)
1 ジャパーン K.レーン
2 コークスクリュー 高宮阿月
3 ラストゴールライン V.マッツャマー
4 サクララウンディ 西園寺結城
5 ファーストキス 祭田極方
6 ネムイ 武勇
7 セカンドインパクト H.マスケ
8 グロリアドーロ 近藤流星
9 サトノネイチャ 馳青州
10 ハリボテソング 山本幹太
11 キルテッドスキル 合田かのん
12 デンセツノマクアケ Y.タリル
13 ハリボテノスタルジ 外崎慶太
14 アールエービー S.アツキ
15 ドラゴンチェリー 桜木健二
《夏の札幌芝2000Mで行われます札幌記念、今年からGⅠに昇格し夏競馬唯一のGⅠとなりました。》
夏とは思えないほど涼しい風が吹く札幌競馬場、この中からGⅠ馬になる馬たちが大勢いるのだ。
グロリアは馬場入りの時いつもより落ち着いて入っていった、首を三回振らずに素直に馬場に入っていく。
「今日は行けるかもな、頼んだぞグロリア」と河田は独り言をつぶやいた。
やがて返し馬が終わりファンファーレが鳴る、札幌で鳴り響く初のGⅠファンファーレということもあって観客たちは皆スマホを構えている。
鮮やかな音色、それでいて体の奥底に眠る闘志を奮い立たせるような素晴らしいファンファーレが聞こえてくる、そして各馬が続々とゲートに入っていく。
《各馬ゆっくりと入っていきます、フランスからの参戦ジャパーンもゆっくりと入っていきました、そして最後に15番の大外ドラゴンチェリー収まって........ゲートが開いてスタート!》
夏の札幌とは思えないほどの大歓声が鳴り響く、その大歓声を横目に15頭がスタンド前でハナの争いをしている。
《さぁ先頭行くのは11番のキルテッドスキルか?はたまたハリボテノスタルジか誰が行く、外から上がってくるのは3番のラストゴールラインだ!ラストゴールラインが14頭を従えてスタンド前を通過していきます。更にその後ろにサクララウンディとネムイ、更にはGⅠ馬ジャパーンと外にサトノネイチャです!》
ラストゴールラインが後続の14頭を引き連れて最初のコーナーをカーブして向正面へと入ってゆく。
河田は胃をキリキリさせながらレースを見ている、グロリアはいつもどおりの中団より少し後方に待機してレースを進めている。
《先頭は依然としてラストゴールラインとキルテッドスキル外から位置を上げてきたのはジャパーンだ!ジャパーンが先頭にゆっくりと並びかけてゆく、向正面でジャパーンが先頭だ!そしてその後ろ、ジャパーンの後ろにはセカンドインパクトとハリボテソング、その後ろは三頭固まってサクララウンディ外ネムイ真ん中にサトノネイチャという展開です。半馬身あいて中団に入ります。中団を率いるのはデンセツノマクアケとドラゴンチェリー、その後に続いておっつけるアールエービーと外にグロリアドーロ更にはハリボテノスタルジという展開です》
グロリアは後方から3.4頭目を追走中、まるで読売マイラーズの時のようにゆったりと気持ちよさそうに走っている。
馬群は徐々に3コーナーの方へと向かっていきそれに合わせて戦闘のスピードもゆっくりと加速していく。
《外から位置を上げるキルテッドスキル、そして内で粘るジャパーンK.レーンどこで仕掛ける、どこでムチを入れる!先頭ジャパーンにキルテッドが並びそうだ!後続がぐんぐん押し寄せてくる!短い短い260Mの直線が近づいてくるぞ!ここで後続勢が一気に押し上げてくるぞ!外に切り出してグロリアドーロGⅠ制覇に向けて飛んできた!グロリアドーロが一気に5番手!4番手!!3番手で4コーナー!!先頭のジャパーンはまだまだ粘る!まだ粘っているぞ!そしてキルテッドスキルは後退!キルテッドスキルは下がってしまった!》
騎手のムチの音がヒュンヒュン鳴り響く。グロリアドーロは三コーナーの途中で一気に外に切り出し位置をぐんぐん挙げて先頭に並びかけようとしている、しかし内で粘る外国馬のジャパーンが一向に競り落とせない。
《4コーナーカーブ!各馬ムチが入る!馬群が広がって直線コース!先頭はジャパーンそしてそして外から金色の馬体が追い込んできた!グロリアドーロだ!GⅠめがけて追い込んできた!グロリアドーロだ!!》
その瞬間近藤が更に一発ムチを入れた、すると次の瞬間グロリアの回転数が若干変わった、最初は気の所為だと感じたがすぐに直感でエンジンが掛かったと河田は感じた。
《先頭にグロリアが並びかける!グロリア先頭!グロリア先頭!ジャパーンは2番手!先頭はグロリアドーロだ!!》
ゴールまで後7、80M程を切ってグロリアが先頭に立つ、しかし一番嫌なタイミングでグロリアのクセが出てしまった。先程に比べて回転数が少し下がり力を抜いているように見えるのだ。それに気づいたのか近藤は必死にムチを振るいグロリアに前進気勢をもたせようとしているが走りはあまり変わらない。
そうこうしているうちに外から芦毛の馬体がとんでもないスピードで追い込んできた。
《なんとなんと外からキルテッドスキルだ!キルテッドスキル!2歳王者が飛んできた!》
気を緩めたグロリアの隙を見逃さずキルテッドスキルが一気に追い込んできているではないか、河田は必死に。
「走れぇぇ!!!!!グロリアァァァァァァ!!!!!!」
と叫ぶがそれも虚しく先頭にキルテッドスキルが並んだ。
《先頭はキルテッドスキルだ!キルテッドスキルが並んだ!》
しかも内からもう1頭追い込んでくる、ジャパーンだ。この状況を表すならまさに「泣きっ面に蜂」が適切だろう。
《三頭並んだ!接戦だ!接戦!大接戦のゴーーーーーール!!!!!!!!!!》
三頭が並んでゴール板を駆け抜けていく。
《内ジャパーンか、外キルテッドスキルか、それとも真ん中グロリアドーロか!。》》
《G1馬のプライドか!2歳王者の根性か!挑戦者チャレンジャーの意地か!全くわかりません!!三頭並んでゴール板を通過しました!!お手持ちの馬券は確定まで大切にお持ちください!!!!!》
河田は胃が張り詰めながらモニターを見つめる。先に4着5着が確定し画面に映し出される。
1 □
□
2 □
□
3 □
2
4 9
クビ
5 7
しかし一向に待っても1.2.3着の着順は確定しない。
どうやら騎手にはクビ差の大接戦でも着順が分かるようだ。例にある年のチャンピオンズカップ、ラストランの1着馬と2着馬が大接戦だったが、一着の馬はすぐにガッツポーズをし馬のことを褒めた。逆に2着馬の騎手はゴール板を通過するやいなや「おめでとう」と祝福の言葉を送った。
しかし今三人の騎手たちは沈黙を貫いている、それは我々馬主、調教師、調教助手、厩務員全員同じだった。
数分後、ついにモニターに写し出されたのか大歓声が上がる、河田は恐る恐る顔を上げてモニターを見つめる、まだ確定はしていないようで黄色い文字が点滅を続けている。




